太陽光エネルギー生産は、ここ数年、持続可能なリソースという面においてだけではなく、経済的利益という面においても勢いを増してきています。2013年から2017年の間に、太陽光発電所の建設費用は37%低下しました。2019年の前期では、太陽光利用設備の均等化原価(全運用期間における正味現在価値)がさらに18%低下し、リチウムイオン蓄電池においては35%低下しました。[1]

それでも、大規模な太陽光発電所の運営およびメンテナンス(O&M)に課題が残っています。設備の運営に必要な開放空間を得ることは、伝統的に農業に使用されてきた土地を占有することをしばしば意味します。長く伸びた芝生、雑草、その他の植物は、すべて不要な陰、または「パネルを覆う影」になり、太陽光発電設備が最大限、効果的に作動することを妨げます。

草刈りや不要な物を取り除く作業プロセスは、設置場所の下の立ち入り制限エリアに近づく場合、特に多くの人手を要します。草刈り機、および植物の成長を抑える除草剤の使用は、それ自体が環境に悪影響を与え、しばしば周辺の緑を維持することの失敗の要因になり得ます。

ソーラー・グレイジング – ウィン・ウィン、かつウィン・ウィンの解決案!

近年において、牽引力を得た一つの解決案は、「ソーラー・グレイジング」(放牧による太陽光発電)でした。これは、人間のメンテナンスによる介入よりも、より自然で、かつ効果的に生植物の成長を確保するために羊の存在を利用することを指します。

羊は、比較的小さなサイズで、低位置の太陽光設備の配列にリーチすることができるため、牛や馬などのより大きな放牧家畜よりも効果的です。[2]放牧家畜が習慣的に太陽光発電設備の最大の脅威である草や雑草を食べてくれることにより、設備のリスクが効果的に軽減されます。[3]

農家と事業主の両方にとって、ソーラー・グレイジングはウィン・ウィン・の解決案です。羊農家は、太陽光発電会社と契約することによって余分の収入源を得ながら、自分たちの土地の生産性を維持することで恩恵を受けることができます。太陽光発電企業は、クリーンエネルギーを生成するために自分たちが必要とする土地を確保し、加えて羊という自然で低コストのシステムも得ることができるのです。太陽光パネルが雨や風、暑い日には太陽の日差しからシェルターを提供してくれるので、羊たち自身も利益を得ることができます。[4]

また、ソーラー・グレイジングのコンセプトにおいては、「二重の土地利用」ができ、伝統的なモデルに見られる荒れた砂や泥のある土地、あるいはコンクリートの上ではなく、緑がある耕作可能な土地の上に太陽光発電所を設置することができるのです。これは地方における太陽光発電の視覚的な影響を改善しながら独自のマイクロエコロジーを創造し、芝生のない土地では実現し得ない方法で二酸化炭素(CO)を2) 排出を吸収してくれます。

伝統的な機械、または化学による植物管理の手順を回避することにより、太陽光発電は運用コストを削減し、環境への影響を減らすことができます。

Adaptive Managed Grazingオーストラリアでは、ソーラー・グレイジングの技術を採用することにより、太陽光パネルの下にあるバイオマス(エネルギー製造に使われる動植物由来の有機資源)が90%増加しています。[5]

また、ソーラー・グレイジングは、太陽光発電設備の電装部品に丈の高い植物が干渉して、発生し得る火災のリスクも低減させます。実際に興味深いことに、山羊や羊は、カリフォルニアにおいて山火事の発生リスクを低減させるため、植物の成長を食い止める方法として、最近使われるようになりました。[6]

もう1つの利点は、草の刈り取りや虫の大量発生に殺虫剤や除草剤を使う必要がないことです。つまり、雨水からの流水が到達する近くの水の流れ、川、または地下水の「帯水層」(水源)が有害化学薬品の影響を受けることを少なくすることができるのです。

ラ・ジャシンタ(La Jacinta)のソーラー・グレイジング

Fotowatio Renewal Ventures(FRV)は、世界有数の太陽光発電所(PV)の事業主の1つである アブドゥル・ラティフ・ジャミールエネルギーに含まれる太陽光発電所事業主です。4.8ギガワット(GW) に匹敵するそのプロジェクトパイプラインには、 中東、米国、オーストラリア、ヨーロッパ、アフリカ、中央南米の発電設備が含まれます。[7]これは、約200万戸の家庭に十分な電力を生成し、600万トンのCO2 排出を回避するものです。[8]

先立って、FRVはウルグアイにおいてのソーラー・グレイジングプロジェクトを開始しました。65メガワット(MW)という、ラテンアメリカにおける初の太陽光利用設備プロジェクトであり、34,000戸を超える家庭に電力を供給し、約72,000トンのCO2 排出を軽減します。[9]ラ・ジャシンタ、サルトに位置するプロジェクト は、140ヘクタール(346ヘクタール)の農場全体で、1000頭の羊が飼われています。

La Jacinta

The La Jacinta initiativeは、ウルグアイ国営電気会社であるAdministraciónNacional de Usinas y TransmisionesEléctricas(UTE)と交わした初の太陽光電力購入契約(PPA)であり、かつ初めて操業を実現したイニシアチブです。これは、太陽光発電のより広範な利用を促進する、ウルグアイ政府の野心的な政策の一環です。[10]

このプロジェクトは、7つの異なるエリアに分けられています。家畜の位置を制御し、操業およびメンテナンス車両の循環を可能にするため、それぞれが電気柵や家畜脱出防止格子によって保護されています。

FRVは、ラテンアメリカのPVプラントにおいて家畜である羊を利用してきた先駆者、そして推進者として、太陽光導入における放牧家畜の使用を奨励する羊農家の非営利教育プラットフォーム、米国太陽光発電協会からも認知を得ることができています」 と、 FRVの南米支社最高業務責任者のであるマヌエル・ペヴォンは述べます。

彼らのゴールは、羊農家と太陽光事業主間のコラボレーションのサポートです。それは農家の収益を多様化するだけでなく、土地での食料生産から離れることなく、新しい農業利益の取得を実現するものです。太陽光事業に関わりながらも、農家は引き続き、酪農製品、食肉類、羊毛を地元の農場市場に提供し続けることができます。同様に、太陽光事業主は、急成長している世界中の人口のエネルギー需要を満たすために必要な、新しい発電所の設置を効果的かつ持続的に管理することができます。

「La Jacintaプロジェクトは、当時、ラテンアメリカにおいては前例のない大規模なプロジェクトでした。私たちは、現在非常にポジティブな成果が出ている地域で、最大規模のPV太陽光発電所の1つを建設しました」 とぺヴォンは言います。

環境とコミュニティ

環境維持、そして温室効果ガスとの闘いは、FRVのアジェンダの最優先事項です。FRVは各プロジェクトの構造、コミッショニング、運営全てにおいて、環境への影響を考える実行可能性調査を実施しています。

考慮すべき重要な点は、太陽光発電所開発に最適な条件を提供する地域はまた、農業にとっても最適な地域であることです。これは、家畜の利用、特に羊を使うもう一つの重要な理由でもあ理、植物の管理における異なる選択肢を評価する際に、特に価値の高い焦点となってきています。同時に、それぞれの特定の状況に応じて、放牧家畜の数や種類を計算するため、各プロジェクトの特異点(背景、国の状況、土地の組織構造、植生のレベル)を考慮することが重要だと、ペヴォンは強調します。

FRVのソーラー・グレイジング戦略とPV開発における大きなゴールは、アブドゥル・ラティフ・ジャミールと連携し、より広範な環境および慈善活動の目標に向けてビジネスを拡大することです。貿易と自動車事業を行う企業として75年前に設立された、アブドゥル・ラティフ・ジャミールは、自動車セクターにおける豊富な経験をその専門性と操業インフラストラクチャーと組み合わせて適用し、世界中の「生活のインフラストラクチャー」である多角的な新しいセクターに貢献してきました。

「私たちは、人間や全植物、全動物の存在のあらゆる側面において持続可能性を考える必要があると実感しています。それは、地球の将来の発展と、現在直面している主な課題の解決に絶対的に不可欠なことです。」と、アブドゥル・ラティフ・ジャミールの副社長兼副会長である ファディ・ジャミールは述べます。「FRVは前述した持続可能性を実現する旅路に必要不可欠です。私たちは、現地、そして世界中の社会的、環境的、経済的ニーズを満たし、かつ手頃な価格、そしてクリーンで持続可能な方法で、再生可能エネルギーの生成に取り組んでいます。

「私たちはまず提案レベルにおいて、有害な環境への影響を最大限に抑えながら、ソリューションとイノベーションをデザインします。しかしこれはもちろん、O&M活動(オペレーション、そしてメンテナンス)においても例外ではありません。このこともあり、La JacintaでO&Mサービスを開始した際に、当社チームがヨーロッパにおける他のプロジェクトにすでに取り組んでいた、ソーラー・グレイジングのソリューションを早速導入することにしました。」

コミュニティレベルでは、FRVは建設活動の影響について慎重に適当な注意を払った後に、建設およびO&Mの両方での雇用創出を計画します。現地で必要となる雇用については、家畜の世話に農業技術エンジニア、獣医専門家、および周辺地域からの放牧農家が挙げられます。

Guzman Noya
ウルグアイ出身のグズマン・ノヤは、FRV奨学金を得てスペインのIE大学で学びました。

La Jacintaでは、米州開発銀行(IDB)とのパートナーシップにおいて、プログラムにより地元のウルグアイの学生がスペインのSegoviaのIE大学で学ぶことを可能にしました。FRVはまた、地域社会から該当プロジェクトにコミットすることのできる、有望な学生の獲得を目的とした「ヤング・タレント・リーダー」大学奨学金プログラムを設置しています。

奨学金は、4年間の授業料、宿泊費、学術教材、および食事サポートの全費用が対象です。[11]

将来におけるチャンス

前進し続けるFRVは、世界中の規模でソーラー・グレイジングの重要なチャンスを継続的に注視しています。また、自社および他の主要市場でのサードパーティの資産両方のために、より大きなモデルの活用を研究しています。これにはオーストラリアの市場が含まれています。同国ではFRVは、6つの太陽光発電プロジェクトを実施し、2012年から7億米ドルを超える投資を行っています。

「毎日、より多くの、そしてより規模の大きな太陽光発電所が世界中で開発されていることを考えると、この相乗効果を活かすことは最早私たちの倫理的責任と言えるでしょう。」 と、ファディ・ジャミールは述べます。 「ソーラー・グレイジングは、当社が事業を展開する地域において最大限の環境への考慮を可能にするだけでなく、土地利用を最適化し、コストを削減することもできます。」

「私たちは、ソーラー・グレイジングは、農地でのPVエネルギーの開発に向けての大きな前進の一歩であると確信しています。これは私たちにとっても非常にエキサイティングな機会であり、FRVは、志を同じくするリーダーたちとの協働により、最前線の領域に常に働きかけています。」

[1] https://www2.deloitte.com/us/en/pages/energy-and-resources/articles/renewable-energy-outlook.html

[2] https://solargrazing.org/what-is-solar-grazing/

[3] https://horseshoesrouter.invenergyllc.com/assets/pdfs/SolarGrazingBrochure.pdf

[4] https://horseshoesrouter.invenergyllc.com/assets/pdfs/SolarGrazingBrochure.pdf

[5] https://www.pv-magazine-australia.com/2019/10/14/90-increased-biomass-under-solar-panels-agrivoltaics-hold-productive-promise/

[6] https://www.cnbc.com/2016/07/19/goats-sheep-reducing-californias-fire-risk-one-bite-at-a-time.html

[7] https://www.alj.com/en/energy-and-environmental-services/solar-power-solutions/

[8] https://frv.com/en/frv-commences-operation-of-uruguays-first-utility-scale-solar-plant-la-jacinta/

[9] https://frv.com/en/projects/la-jacinta/

[10] https://www.alj.com/en/news/large-scale-solar-plant-uruguay/

[11] https://frv.com/en/fotowatio-renewable-ventures-frv-closes-82-million-solar-pv-financing-with-inter-american-development-bank/