健康と福祉を確保するという共通の国連目標を、ジャミール・ファミリーが支援する方法

UN SDG 3すべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する。この国連の持続可能な開発目標(SDG)3への取り組みが、2020年から2021年と、今まさに進行する新型コロナウイルスのパンデミック時代において、かつて以上に必要とされています。世界は現在、この100年余りにおいて最悪の、地球規模の医療危機に直面しているからです。

ジャミール・ファミリーにとっても、世界中の患者、特にヨーロッパや極東、北米以外の新興市場という、世界の多数派である人々の医療へのアクセスを改善するというミッションの一環として、これは現在の最優先課題となっています。

健康的な生活の確保と福祉の推進は、社会の繁栄を築くためになくてはならないものです。

WHOが述べるように、健康の増進は「経済発展への重要な貢献となります。なぜなら健康な人々は長生きし、生産性を高め、貯蓄を増やすからです」。[1]

このパンデミックの影響は、今後数10年経たないと完全に理解することはできないかもしれませんが、その影響にもかかわらず、これまでの20~30年の間、医療の進歩と福祉の向上は着実にその歩みを進めてきました。

UN SDG 3

私たちの社会は、いくつかの主な死因や疾病の原因究明に大きな進歩を遂げてきました。

平均余命は格段に延び、幼児や産婦死亡率は減少しました。HIVに対する状況は一変し、マラリアによる死亡は半減しました。[2]

しかし、これらのすばらしい成果の陰で、人類全体の進歩は平等なものとは言えず、国によって、また国の中でも不平等が起きています。平均寿命が最も長い国と最も短い国では、31年の開きがあります。

また、目覚ましい成果を挙げている国はあるものの、国としての平均値には、国内の大きな医療アクセス格差が隠れていることがあります。この地球上のあらゆる場所において、出生地、インフラへのアクセス、財源不足によって、良質な医療へのアクセスが阻まれているコミュニティが今でも存在します。

主要データを一瞥すると[3]、私たちが直面する深刻な課題の概要が見えてきます。

  • 4億人もの人々が、基本的な医療にアクセスできていない
  • 16億人の人々が脆弱な環境で暮らしており、世界的かつ深刻な健康問題を生んでいる
  • 30歳から70歳の人々が2秒に1人、非伝染性疾病のため寿命より早く亡くなっている
  • 1,900万人以上の子供が、生まれて1年以内に必須ワクチンを受けられていない

サハラ以南のアフリカでは、最も近い病院に通うのに2時間以上かかるという人が2億8,700万人を超えています。サハラ以南の国々の3分の2で、国民の80%が2時間以内に通院できるようにするという世界的な目標が満たされておらず、南スーダンでは、この基準を満たしている人々はわずか23%です。[4]低中所得国において、人々が救急医療を受けられていれば、死亡の約半数(および身体障害の3分の1)は回避できていたことを考えると、この数字はさらに憂慮すべきものとなります。[5]

主要な医療問題に対する長期的な解決策を見出していくのは、容易なことではありません。伝染病の蔓延や新薬の必要性、疾病の早期発見、病気や怪我のより効率的な治療法、そして先進国と新興国の医療アクセス格差の是正といった課題があります。そのためには、全く新たなレベルでの国際的な協力とパートナーシップが必要です。とはいえ、これはまさに国連が推進を掲げて設立した協働体制であり、またジャミール・ファミリーが強力に支持していることでもあります。

新たな研究の支援

良質で効果の高い、最先端医療への公平なアクセスは、Abdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)とジャミール・ファミリーが投資家として長年携わっている「生活のインフラストラクチャー」の中核となるテーマです。医療の課題の大きさは、それに立ち向かう私たちの決意の大きさでもあります。なぜなら私たちは、最も脆弱な立場にある人々に特に目を向けて、世界的に医療を変革し、健康の成果を向上させるための新たなテクノロジーの活用を模索しているからです。

事実、今日の多角的な事業とグローバルなファミリーの慈善事業を興した今は亡き創始者は、サウジアラビアと地域全体の医療分野における数々のイニシアチブの先導役でした。その1つが、医療リハビリテーション専門のAbdul Latif Jameel Hospital(アブドゥル・ラティフ・ジャミール病院)です。


The Abdul Latif Jameel Hospital for Medical Rehabilitation, Jeddah, Saudi Arabia

1997年に設立されたこの病院は、サウジアラビア初の非営利リハビリ病院として、成人と子供に包括的なケアを提供しています。

2018年には、この医療セクターへの早くからの取り組みをさらに進展させ、Abdul Latif Jameel Clinic for Machine Learning in Health(Jameel Clinic/ジャミール・クリニック)が、Community Jameel(コミュニティ・ジャミール)により共同設立されました。マサチューセッツ工科大学(MIT)に拠点を置き、MITの人工知能および生命科学の先駆的な実績を礎にしています。

Jameel Clinic
ハッサン・ジャミール(左)、L. ラファエル・ライフ MIT学長(中央)、ファディ・ジャミール(右)。2018年、MITでのJameel Clinic創設セレモニーにて。

Jameel Clinicは、早期診断や創薬から治療のパーソナライゼーションと管理まで、医療の状況を一変させる技術に注目し、データやAIと医療とをつなぎ合わせています。

生物学的な臨床データをモデリングする革新的なアルゴリズムを開発し、機械学習、生物学、化学、臨床科学の分野で発見を行っています。

Jameel Clinicはすでに、数々の画期的な発明に貢献しています。例えば、新型コロナウイルスのパンデミック関連では、研究者たちはAIとビッグデータを活用して、人々の移動パターンや行動にもとづいて感染率の進行を予測しています。[6]また、ウェアラブルセンサーやスマートウォッチで収集したデータをもとに、人が疲れすぎたり、体調が優れなかったり、ストレスにさらされると、その結果として病気になる可能性が高まることを「予測」する研究も主導しました。[7]今後は、新型コロナウイルス感染症を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などのウイルス感染を調べるための研究を実施する予定です。[8]

Halicin
有名になったMITの画像。ハリシン(上)は大腸菌の抗生物質耐性を防ぎ、シプロフロキサシン(下)は防がなかったことを示している。
写真提供:©Collins Lab, MIT

クリニックのさらなる成功例は、2020年2月にAIを駆使して発見された、強力な新抗生物質であるハリシンです。

特定された分子は、AIを使用し、わずか数日で1億以上の化合物のスクリーニングが行われました。以前は到底不可能だった作業です。

異なる機械学習モデルを使用して、研究者らはこの分子の毒性がヒト細胞に対しては低いことも示しました。

Jameel Clinicの目覚ましい実績は、Community Jameelが設立した別の研究所、インペリアル・カレッジ・ロンドンに拠点を置くAbdul Latif Jameel Institute for Disease and Emergency Analytics(Jameel Institute/ジャミール・インスティテュート)により補完されています。

2019年に設立されたJameel Instituteは、AIによるデータ分析を活用し、予防可能な感染症リスクと世界の公衆衛生の特定、マッピング、優先付けを行います。[9]最も感染症にかかりやすい立場に置かれている世界中の人々の生活の向上を、ミッションの一つに掲げています。

Jameel Instituteは、新型コロナウイルス感染症の対応においても最前線に立っており、政府や国際組織と連携して、この感染症が公衆衛生や経済、施策に与える影響の理解を進めています。2020年5月、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中の医療システムにかつて経験したことのない圧力がかかり始めた時期に、Jameel Instituteは病院や公衆衛生サービスが人員や能力をより効果的に管理し、増大する需要に対応できるようデジタルツールを立ち上げました。

副所長のカタリーナ・ハウク博士率いる研究者チームが開発したJameel Institute Pandemic Hospital Planner(ジャミール・インスティテュート・パンデミック・病院プランナー)を使うと、待機手術のキャンセルや手術室の救命救急診療室への転換など、一連の医療施設への介入を行った際の病床数やスタッフ、人工呼吸器数が算出できます。またこのプランナーを使用すると、病院の経営陣は、追加病床をフル稼働させるために必要な追加スタッフの人数も計算できます。

Community Jameelが支援するもう1つの研究所であるMITのJameel Poverty Action Lab(貧困アクション・ラボ)、通称J-PALにもまた、医療に特化したプログラムがあります。J-PALの医療部門は、医療サービスや製品の拡大や品質向上、普及に効果の高い政策やプログラムの特定を行っています。最近のプロジェクトには、インドでの麻疹の予防接種拡大のイニシアチブや、低所得国での予防衛生品の無料配布の効果に関する調査などがあります。

サウジアラビアでは、Community Jameelは2005年、サウジアラビアの労働・社会発展省とパートナーシップを組み、孤児のためのTanweerプログラムを設立しました。学業に優れた14歳から17歳の孤児たちの人生に有意義な変化を起こし、彼らの健全な生活の向上を目指しています。また、年に1度の楽しみである国外旅行は、彼らの文化的視野を広げ、学業の進歩に向けた努力を継続するモチベーションとなっています。

キング・アブドゥルアズィーズ大学と連携し、Community Jameel Saudiは、新型コロナウイルス感染症と関連疾患、また感染性ウイルスにより引き起こされる疾病と闘うためのJameel Fund for Infectious Disease Research and Innovation(感染性疾患の研究およびイノベーションのためのジャミール基金)を立ち上げました。基金では数多くの研究プロジェクトを支援し、これらの疾病の特定、予防、診断、治療の専門的能力の向上に寄与しています。さらにジャミール基金では、医療分野で実績のある専門家や研究者が実施、査読を行う専門研究の認定論文を出版しています。出版物は、キング・アブドゥルアズィーズ大学とインペリアル・カレッジ・ロンドンの代表者も参加する合同委員会により監督されています。

未来に向けて

Jameel ClinicやJameel Instituteなどの研究所を通じた最先端のイノベーションやテクノロジーへの資金的支援は、ジャミール・ファミリーの世界的な医療問題への取り組みに対する長期的かつ深い関わりを示すものです。

しかし、研究開発のみでは、SDG3の達成に向けた道筋の部分的な関与にしかなりません。持続的かつ具現的な医療の進歩を促すには、研究室での研究を、それが切実に必要とされている分野の患者さんまで届ける必要があります。そのため、Abdul Latif Jameelは医療のアクセシビリティの強化を目的に、世界各地の大手ヘルステック企業ともパートナーを組んでいます。

Cyberdyne building2017年には、ロボット型外骨格を使用した脊髄損傷リハビリテーション技術を専門とする日本のヘルステック企業、Cyberdyne(サイバーダイン)とパートナーシップを締結しました。このパートナーシップにより、画期的なテクノロジーが初めてサウジアラビアに導入されました。Cyberdyneとのパートナーシップは2019年に延長され、ハイブリッド・アシスティブ・リム(HAL®)技術を湾岸地域[10]に展開し、地域の技術研修センターとしてアブドゥル・ラティフ・ジャミール病院を設立することを目的に事業を進めています。

Abdul Latif Jameelは、2019年、やはり日本のヘルステック企業であるCellspect(セルスペクト)とも同様のパートナーシップを締結しました。Cellspectが開発した画期的なポイントオブケアテスト装置は、糖代謝、脂質、肝機能をわずか5分間で検査することができます。この提携は、中東、アフリカ、東南アジア、インドなどの新興国において、迅速で低価格の血液検査を提供することを目的としています。

また、最先端の技術の実用化と普及を後押しするため、Abdul Latif Jameelは日本医療機器開発機構(JOMODD)と契約を交わし、科学者、エンジニア、臨床医、起業家による新たな医療機器や技術の開発支援を行っています。その1件目として、先駆的な外科技術であるAV NeoTMがすでに導入されています。患者自身の細胞を使用した人工大動脈弁置換の代替技術であり、術後の10年生存率は、他の術式が80%以下であるのに対し、AV Neoでは85.9%となっています。

行動を起こすための強力なプラットフォーム

Akram Bouchenaki
– アクラム・ブシェンキ
Abdul Latif Jameel Health CEO

2020年、世界が新型コロナウイルスのパンデミックの抑制に苦戦するなか、Abdul Latif JameelはAbdul Latif Jameel Health(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・ヘルス)を設立し、世界的な医療へのアクセス向上に対する取り組みを大幅に拡大しました。

Abdul Latif Jameel Healthは、ジャミール・ファミリーが長年継続してきた、より良い未来のためのイノベーションの取り組みを反映するものです。

ヘルスケア大手のGilead Sciences(ギリアド・サイエンシズ)の元シニアディレクターであるアクラム・ブシェンキに率いられ、新興国のより広域により良い医療をもたらすため、最も必要とする人々が医療を受けられるようになることを支援するプロジェクトやパートナー、製品に対する投資を行っています。

Abdul Latif Jameel Healthは、ジャミール・ファミリーの国際投資部門であるJIMCO(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・インベストメント・マネジメント・カンパニー)およびJIMCO Life Sciences Fund(JIMCOライフサイエンスファンド)と連携し、一連の投資活動を通じて最新医療へのアクセスを拡大しています。

2021年1月、臨床試験の段階にある経口送達薬物の新しいモダリティーを開発中のバイオテクノロジー会社で、米国に拠点を置くEvelo Biosciences(エベロ・バイオサイエンス)との、商業的パートナーシップとなる最初の契約が交わされました。この契約のもと、両社はEveloの主力抗炎症薬候補であるEDP1815を共同開発し、中東、トルコ、アフリカでの商品化に取り組んでいきます。

Fady Jameel
Abdul Latif Jameel Health
ファディ・ジャミール

そのわずか1か月後に、最先端のライフサイエンス企業であるCellarity(セラリティ)との投資取引が成立しました。Flagship Pioneering(フラッグシップ・パイオニアリング)により設立されたCellarityは、細胞の挙動の計算論モデリングにもとづいた創薬への新たなアプローチを開拓しています。このアプローチにより、システム生物学およびネットワーク生物学への包括的な理解が進み、さまざまな疾患の細胞挙動をターゲットにした医薬品の開発へとつながります。さらに複数のプロジェクトが、すでに進行中です。

Abdul Latif Jameelは75年にわたり、複数の業界にわたるあらゆるレベルでパートナーシップを構築し、さまざまな市場を理解し、また極めて重要なことに、それらの異なる市場が現地の期待に応えるために必要なものを提供しつづけてきました。

Abdul Latif Jameel Healthは、このモデルを医療業界にも適用し、特に南の新興国において既存のソリューションを普及させるための新市場を開拓し、また医療テックの未来へ投資することで、最先端の医療ケアへのアクセスを拡大させています」と、Abdul Latif Jameel International(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・インターナショナル)副社長兼副会長のファディ・ジャミールは述べています。

すべての人々の、より明るく健全な未来のために

社会が豊かになっているにもかかわらず、私たちの直面する地球規模の医療問題が未曾有の状況にあることは疑いようがありません。これらを解決し、国連のSDG3を達成するには、戦略的で結束した努力が必要です。それは、この地球上のあらゆる社会におけるより良い医療と福祉、そして明るい未来を守るために、私たちが力を尽くしていかなければならないことです。

医療へのアクセスは、人々が住む場所や経済手段に関係なく、水や住居と同じく、自明の基本的人権であるとみなされるべきものです。困難で多面的な問題ではあるものの、Abdul Latif JameelとCommunity Jameelは、公共や民間、サードパーティーのパートナーとともに連帯し、その解決のための一翼を担うことを決意しています。

ジャミール・ファミリーの活動における持続可能な開発目標への貢献の詳細は、こちらをご覧ください:https://jameel75.com/sdgで、動画の閲覧とサマリーレポートのダウンロードができます。

 

[1] https://www.who.int/hdp/en/

[2] Sustainable Development Goals | United Nations Development Programme (undp.org)

[3] Sustainable Development Goals | United Nations Development Programme (undp.org)

[4] https://www.thelancet.com/journals/langlo/article/PIIS2214-109X(17)30488-6/fulltext/

[5] https://elibrary.worldbank.org/doi/10.1596/978-1-4648-0527-1_ch13#

[6]https://www.jclinic.mit.edu/post/neural-network-aided-quarantine-control-model-estimation-of-covid-spread

[7]https://www.jclinic.mit.edu/post/ml-for-covid-19-can-ai-give-you-an-alert-indicating-a-viral-infection-before-you-feel-symptoms

[8]https://www.jclinic.mit.edu/post/ml-for-covid-19-can-ai-give-you-an-alert-indicating-a-viral-infection-before-you-feel-symptoms

[9]https://www.imperial.ac.uk/jameel-institute/research/strengthening-health-systems/

[10]https://www.alj.com/en/news/abdul-latif-jameel-and-cyberdyne-expand-collaboration-across-gcc-region/