モビリティ:時代と共に進む
自動車が数千年に及ぶ馬力の歴史に終止符を打って以来、私たちの生活とモビリティとの関係は最大の変革の時を迎えようとしています。
化石燃料を動力源とする内燃機関を搭載した自動車は、一世紀以上にわたって人の移動手段の「王道」であり、大量生産によって勢いを増し、贅沢なステータスシンボルから必需品へと変貌を遂げました。これは驚くほどのことではありません。4、50年前は道路には車を走らせる余裕があり、路肩には駐車スペースがありました。ガソリンが安かったこともあり(1978年には1ガロン65セント、その40年後には2.50米ドル前後[1])、いわゆる「ベビーブーマー」が飛びつきました。
しかし、パンデミック前にはすでに、自動車への依存度は低下していました。迫りくる気候危機と慢性的な交通渋滞(現在、[2]世界の道路には10億台以上の自動車が走っています)とが相まって、従来の意味での自家用車は、ますます複雑化する世界の交通網と相互につながっている生態系の中で、その存在意義が失われ始めていました。
私たちが住む社会では、世界各地で多くの人や物をより速く、よりクリーンに、またより効率的に移送する方法が求められることから、この変化のペースは、今後数年にわたりさらに加速すると思われます。
こうした変化は、自家用自動車の終わりを告げるものなのでしょうか? そう言い切ることのできる人は少ないでしょう。しかし、自動車が減ることは間違いありません。A地点からB地点に移動するための未来の新たな交通手段が登場するでしょう。
世界的なコンサルタント会社のDeloitteは、「政府とモビリティの将来」報告で[3]「新しいモビリティエコシステムの構築と維持には、従来のビジネスのやり方の再考が必要になる」と述べています。
MaaSによって変わる移動の方法
複数の移動手段を使って目的の場所へ。そんなときに活躍するのが、MaaS(Mobility-as-a-Service)です。
MaaSという言葉になじみがない方は、モビリティの選択肢を1つの便利なインターフェースに凝縮したエコシステムを想像してみてください。例えばスマートフォンのアプリです。これは、いわゆる「モノのインターネット」(IoT)の究極の形です。
アプリを使えば、バス、列車、シェアカー、電気スクーター、さらには空中タクシーまで、複数の乗り物を使った移動プランを完成させることができます。複数の乗り物を組み合わせた行程がワンステップで計算され、1回の取引で事前に決済されます。スマホのボタンをいくつか押すだけで、A地点からB地点への移動プランが完成するのです。
MaaSは成功を収めるでしょう。というのも、ユーザー、プロバイダー、当局、そして何よりも環境、これらすべてにメリットがあるからです。では、メリットを挙げてみましょう。
- 不要な移動の削減
- 汚染の削減
- 渋滞の解消
- 費用の節約
2024年までに世界のMaaS市場は約3,500億米ドル規模になると言われています。[4]
「MaaSシステムは、すべての関係者に対して真の相互利益をお約束します。個人向けに迅速で便利な輸送ソリューションを提供します。混雑を減らし、緑が多く環境に優しい都市コミュニティを実現し、より効率的な経済に貢献できます。また、道路上の車の総数を減らし、その結果として汚染を減らすことで、ネットゼロへの道のりにおいて重要な役割を果たすことができます」と、アブドゥル・ラティフ・ジャミールの副社長兼副会長ファディ・ジャミール氏は述べています。
電化こそが未来!
今後10年間で世界の道路に新たに登場する電気自動車(EV)は1億台を超える見込みであり、個人用自動車が電気自動車になることは確実だと思われます。
この転換は、次の大きなチャンスに目を向けるメーカーだけでなく、政策立案者も後押ししています。現在の計画立案者は、従来型の自動車を奨励するのではなく、都市での使用を禁止する傾向にあります。例えば、パリ、マドリッド、メキシコシティ、アテネの市長は、最も汚染の深刻なディーゼル車を2025年までに都市の中心部からなくすことを誓っています。[5]
それでもEVの予測が非現実的だと思うなら、その経済性を考えてみましょう。2022年は、EVの維持や走行にかかるコストが下がり、内燃機関型の自動車と並ぶ「転機」の年になるとみられています。[6]この流れはすでに起こっています。2019年上半期だけでも100万台以上のバッテリー駆動およびプラグインハイブリッド車が販売されました。[7]
この電気革命を中国が牽引していることは必然と言えるでしょう。何百社ものEVメーカーが活動し、ミニEVの最低価格は6,250ドルという安さです。[8]
バッテリーのコストが急激に下がっていることから、EV価格の落ち込みに拍車がかかっています。車両全体に対するバッテリーのコストは、EVが主流になるための重要な課題の1つと長い間考えられていました。しかし、このハードルが急速に下がっているのです。
総コストに占めるEVのバッテリー部品の割合は、つい数年前の2015年には57%でしたが、2025年までには20%以下になると予想されています。
効率の良いモーターやインバーターの登場と合わせて考えると、2030年までにEV全体の価格は25~30%下がると予想されます。[9]グリーン証明書を重視する多くの家庭にとって、非常に魅力的です。
バッテリーのコストについてはここまでとして、バッテリーの技術についても見てみましょう 新世代のバッテリーでは、コンパクトなスペースに大量のエネルギーを蓄えられることが期待されています。
ニッケルやコバルトなどの重金属を完全に排除して、代わりに普通の海水からすべての材料を調達し、環境への影響を低減することができるバッテリーを進化させるための研究が進行中です。将来は不燃性電解液を利用した「固体」バッテリーが主流になると考える人もいます。
充電あたりのマイル数にはまだ変動があるため、充電設備が重要なインフラになりつつあります。将来を見据え、どの政府もプラグインポイント網の拡充に多大な投資をしています。例えば、カリフォルニア州は10億米ドル、英国では5,000万米ドルを投資しています。[10]
充電時間も改善点です。標準的な家庭用充電ポイントを使用すると、通常のEVは充電に8時間ほどかかります。[11]しかし、技術革新は確実に進んでいます。ある技術系の新興企業は、将来は数分で充電が済むようになると見ています。[12]
EVは2024年までに全自動車販売台数の10%を占めると見られ、2020年に400万台だった販売台数は、2030年までには年間2,100万台に激増すると予想されています。[13]
EVは唯一の選択肢ではありません。水素自動車にも大きな進展がありました。国際エネルギー機関(IEA)の専務理事であり、世界経済フォーラムのエネルギー諮問パネルの議長を務めるファティフ・ビロル氏は、水素は「新たな勢いを得ており、政府や自動車産業以外の企業も関心を示すようになっている」と述べています。[14]
メルセデス・ベンツ、BMW、韓国の大手ヒュンダイ、米国の水素自動車のパイオニアであるニコラ、そしてアブドゥル・ラティフ・ジャミールの長年のパートナーであるトヨタ自動車株式会社は、いずれも水素自動車を開発しています。トヨタは長年にわたり、水素燃料電池技術が幅広い種類の車両で持続可能なゼロエミッションソリューションを提供できると主張しており、2021年以降、燃料電池電気自動車の世界的な販売が大幅に増加すると見ています。こうした期待に応えて、トヨタは2021年からは年間3万台を超える燃料電池電気自動車を生産する計画です。特に水素自動車「Mirai」は革新的です。[15]
スマートでハンズフリー
スマートな交通の未来を想像してください。道路センサーや公共交通機関のネットワークが中央のデータハブとつながり、そこから人々の携帯電話や車にライブ情報を伝えるような都市です。
デジタル標識やモバイルアプリを利用して、交通の遅滞や故障から、最適なルート選びや駐車場の空き状況まで、あらゆる情報を発信できます。こうした膨大な情報の流れによって、移動の時間や手段を効率的に決定できるようになります。
例えば、スマート交通網を利用することで、通勤時間を15%~20%短縮することができるという研究結果があります。これは、発展途上の都市では30分以上の短縮に相当します。[16]
データに基づいて意思決定を下す役目は、あなたから車へと徐々に移っていくでしょう。あなたはシートにもたれていればいいのです。規制当局の承認から10年以内に、無人自動車を扱う企業が米国の車両在庫の半分以上を占めるようになり、米国の道路を走る乗用車の数は現在の2億4,700万台から2030年には4,400万台にまで激減すると推定されています[17]。
私たちも共に旅をしています
モビリティ分野のパイオニアとして、アブドゥル・ラティフ・ジャミールは常に前方に目を配っています。
創業者アブドゥル・ラティフ・ジャミールがジェッダに最初の自動車販売店を開いたのは、今から75年前のことでした。
その後、国際的なパートナーシップを築いていく中、ジャミールはクリーンでグリーンな未来、無人車両の未来に向かう道のりを単に見守るだけでなく、業界の舵取りに貢献する立場にもあります。
1955年、ジャミールはサウジアラビアにトヨタの販売代理店を設立しました。
トヨタとの関係は今や、北アフリカ、アジア、ヨーロッパにまたがり、トヨタ・プリウスを世界で最も売れているハイブリッド車にするために貢献してきました。
また、1989年にはサウジアラビアでレクサスブランドの立ち上げを担い、その1年後には自動車用アクセサリーのコンバージョン事業を立ち上げて、業界での地位を確固たるものにしました。
順調に成功を収める中、乗用車と商用車の両方でパートナーシップを結ぶ企業が年を追うごとに増えていきました。ダイハツ、スバル、Foton、日野、エジプトでは米国の自動車大手フォードとも提携しました。
現在では、中古車や車両の修理、パーソナライズ、テレマティクスに至るまで、車の所有に関するあらゆる経験を積んでいます。アフターセールスのケアは、DJ AutoとDJ Partsを経由します。この2社は日本の部品製造大手デンソーとの合弁事業として始まり、現在はマレーシアのFBK Manufacturingの傘下に入っています。これらのコラボレーションのおかげで、現在は国際的な流通網チェーンを通じて、専門的なスペアパーツを供給しています。
UAEに本社を置き、インドとアメリカ西海岸に拠点を持つNSVを2016年に買収したことで、ジャミールはコンプレッサや車載エンターテイメントシステムからレーザーシェードやボディキットに至るまで、一体型のハイテクアクセサリーや自動車OEM向けの改造品の開発における主要プレイヤーとしての地位を得ました。
この先の未来に、私たちは期待しています。
ジャミールは、米国の自動車メーカーRIVIANの初期段階の投資家でした。同社の先駆的なデザイナー、エンジニア、技術者が現在、半自律型の電気SUVやピックアップトラックを製造しています。同社は先日、2030年までに10万台の電気配送車を納品するという契約をアマゾンと締結しました。これは、同年までに再生可能エネルギー100%を目指すアマゾンの計画の一環です。[18]
ジャミールは空中にも目を向けており、カリフォルニア州に拠点を置くJoby Aviationの画期的な電動空中タクシーにも投資しています。このタクシーは時速320km、1回の充電で240kmを走行できます。
世界が急速に相互接続を進め、オンデマンド、共有、サブスクリプション、そして持続可能なモビリティへと向かう中、アブドゥル・ラティフ・ジャミールはこの75年間、この転換の時代の中で主要なグローバルプレイヤーであり続けてきました。自動車メーカーに対して、また新しいデジタル経済におけるモビリティの意味を再定義する革新的なモビリティ企業には信頼できる投資パートナーとして、流通と小売のソリューションを提供してきました。
私たちは高い理想を掲げ、モビリティの未来に賭けて投資をしています。未来はどうなるのでしょう。現在からはモビリティの未来はまだ予見できません。考えられるあらゆる形でクリーンで高速、かつスマートなモビリティの未来へと、さあ出発しましょう。
[1] https://www.usinflationcalculator.com/gasoline-prices-adjusted-for-inflation/
[2] https://www.weforum.org/agenda/2016/04/the-number-of-cars-worldwide-is-set-to-double-by-2040
[3] https://www2.deloitte.com/insights/us/en/focus/future-of-mobility/government-and-the-future-of-mobility.html
[4] https://www.psmarketresearch.com/market-analysis/maas-market
[5] Gearing up for change: transport sector feels the heat over emissions
[6]https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/uk/Documents/manufacturing/deloitte-uk-battery-electric-vehicles.pdf
[7]http://www.ev-volumes.com/news/81958/
[8]https://www.jpmorgan.com/global/research/electric-vehicles
[9]https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2019-04-12/electric-vehicle-battery-shrinks-and-so-does-the-total-cost
[10]https://www.bbc.co.uk/news/business-48913028
[11]https://pod-point.com/guides/driver/how-long-to-charge-an-electric-car
[12]https://echiontech.com/news.php
[13]https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/uk/Documents/manufacturing/deloitte-uk-battery-electric-vehicles.pdf
[14] How hydrogen can offer a clean energy future, World Economic Forum, 5 June 2019
[15]https://www.toyota.co.uk/world-of-toyota/environment/fuel-cell-vehicle
[16]https://www.mckinsey.com/industries/capital-projects-and-infrastructure/our-insights/smart-cities-digital-solutions-for-a-more-livable-future
[17] https://www.rethinkx.com/press-release/2017/5/3/new-report-due-to-major-transportation-disruption-95-of-us-car-miles-will-be-traveled-in-self-driving-electric-shared-vehicles-by-2030
[18] https://www.cnbc.com/2019/09/19/amazon-is-purchasing-100000-rivian-electric-vans.html