今後30年間で世界のエネルギーの構成比はどのように変化するのでしょうか。また、増加するエネルギー需要を満たす上で最も大きな影響を与えると思われる新技術はどれでしょうか。

世界の人口が増え続け、都市化が進むにつれて私たちの生活や仕事のやり方は劇的に変化していますが、エネルギー分野はそれが直面する新しい圧力にどのように適応するでしょうか。

BPエネルギー予測2019[1]における「移行が進展する」シナリオによれば、 世界のエネルギー需要は2040年までに33%増加します。しかし、その需要を満たすためにエネルギーの構成比にも根本的な変化があり、再生可能エネルギーが一次エネルギーの増加分の半分を占め、発電に占める石炭のシェアは2017年の40%から2040年までにはわずか20%に低下するとされています。

この低炭素燃料への移行の兆候は以前より明確であり、再生可能エネルギーの増加は今や疑う余地はありません。例えば2019年だけでも太陽光発電(PV)市場は劇的な成長を経験するであろうことが目に見えています。12月末までには、前年比で25%増、中国以外では43%増となる見込みです。[2]これらの見込み通りであるとすれば、世界中で129GWの太陽光発電施設の設置がよりクリーンなエネルギーの未来を築くためのあらゆる場面で役立つでしょう。[3]

世界エネルギー会議トリレンマ・インデックスを公開しました。これは、エネルギーセキュリティ、エネルギーの公平性、環境持続可能性という3つの側面で各国のエネルギーパフォーマンスをランク付けし、世界および国内のデータをモデル化したものです。

その最新の成果によれば、このようなグローバルな変化過程において、首尾一貫したまとまりのある統合された政策アプローチが、十分に調整されたエネルギーシステムを提供するのに役立つ可能性があることが示唆されています。

分散的な脱炭素化するデジタルシステムへの迅速な移行を図りつつ、セキュリティ、公平性、および持続可能性のこのようなバランスを維持管理することは非常に困難です。またリスクは避けて通れません。2018年の報告書によると、多くの国がこの微妙なバランスをなんとかうまく管理していますが、最高のAAAバランス評価で、環境に敬意を払う長い歴史を持つ国はわずか8カ国です。デンマーク、スイス、スウェーデンが再びトップになったとしてもなんら驚きではありません。

2019年を通じて中国、米国(ワシントン州は最近、カリフォルニア州、ハワイ州、ネバダ州、そしてニューメキシコ州を追って、100%クリーンエネルギー目標を設定する5番目の州になりました)、そしてインドは、太陽光発電市場としてのトップ3の地位を維持するでしょう。

中国・山西省大同県248エーカーの「パンダ型」太陽光発電所

 

[4]しかし、2019年の太陽光発電施設設置見通しのほぼ3分の2はアジア太平洋地域(64%)になるでしょう。[5]特に日本は、特筆すべき変化を遂げている多くの国の1つです。同国では2050年までに温室効果ガスを80%削減し、2030年の電力の7%を太陽光で供給することを目指しています。[6]アフリカや中東は、太陽光発電所に適した気候条件を享受しているにもかかわらず、進歩はそれほど劇的ではなく、今年度の太陽光発電設置のわずか5%にすぎません。

Mohammed Bin Rashid Al Maktoum Solar Park(Mubadala Investment Companyの1部門、©Masdarのご厚意による提供画像)

 

とはいえ、このことは、急成長している再生可能エネルギー分野が中東の広大な地域には定着していない、ということを示唆するものではありません。2020年4月には、The Solar Show MENA 2020とThe Wind Show MENA 2020のイベントで、何千人もの参加者と共に何百人もの講演者とスポンサーが一堂に会します。[7]同イベントは、この地域の世界に名だたる一連の発展からくる既存の推進力の上に成り立っています。アラブ首長国連邦の画期的なMohammed Bin Rashid Al Maktoum Solar Parkもその一つです。同施設が完成すれば、136億米ドルの発電所が130万戸の住宅に電力を供給し、CO2の排出を年間650万トン削減することができるでしょう。[8]

Mubadala Investment Companyの1部門、©Masdarのご厚意による提供映像

サウジアラビアでも開発が加速しており、今後10年間で6GW以上の風力エネルギー発電能力が新たに設置される予定で、これは2028年までの中東の全風力発電プロジェクトのほぼ半分(46%)を占めることになるでしょう。[9][10]同時に、同国のSaudi Vision2030という大志に沿った経済とエネルギーの多様化のますますの進展と共にサウジアラビア政府は2030年までに40GWの太陽光エネルギーを導入することを目指しています。

もっとも、再生可能エネルギーの広範な採用が奨励されることになってはいるものの、いまだ進歩の余地は大いにあります。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、現在の気候上の目標を達成するためには二酸化炭素排出量を2050年までに70%減少する必要があると見積もっています[11]。再生可能エネルギーはこれらの削減量を達成する上で大きな役割を果たし、必要なCO2削減量の60%から90%の範囲を占めるとともに、同時に同じ期間において最大86%の電力需要を満たしていきます[12]。同機関の分析はまた、「健康、補助金、そして気候に関する節減は、30年間の累計で160兆米ドルに相当する価値がある」と明らかにしています。[13]

再生可能エネルギーが電力源の大部分を占めるようにするために必要なインフラストラクチャを開発することは、今後20年間の大きな課題となるでしょう。Fotowatio Renewable Ventures(FRV)を通じて Abdul Latif Jameel Energyはこのエキサイティングな分野ですでに重要な役割を果たしています。FRVは2019年に投資を大幅に拡大しており、その範囲は、東はオーストラリアから、西はメキシコチリに至るまで拡大しています。2024年までには、同社は設置された発電容量を8倍にすることを目指しています。そして、そのエネルギー資産の開発を続けるにあたり、同社は運営するあらゆる市場で世界クラスの基準と専門知識を提供することに情熱を注ぎ続けています。

オーストラリアでは、FRVは6つの太陽光発電プロジェクトに積極的に関与しており、2012年以降、再生可能エネルギーへの移行を加速するために多大な投資を行ってきました。2018年11月に、同社は、ニューサウスウェールズ州のGoonumbla Solar Farmプロジェクトに関して67.8MWの出力規模の電力購入契約をSnowy Hydroと締結しました。2020年6月に操業が始まれば、この施設は45,000以上の世帯に十分なエネルギーを供給することになります。

最近では、FRVの出力規模100MWのLilyvaleプラント(クイーンズランド州で2番目の同社の大規模太陽光発電施設)が、2019年3月に生産を開始しました。Abdul Latif Jameelの会長代行兼副社長、フェイディ・ジャミール氏(Fady Jameel)は次のように述べます。「私たちはオーストラリアのクリーンエネルギー推進に貢献していることを誇りに思います

FRVが12年前に再生可能エネルギー分野への最初の移行を開始したスペインでは、同社は出力規模50MWのLa Solanilla Solar Farm(トルヒーリョ)の決算を完了しました。これは、エストレマドゥーラ、アンダルシア、アルメリア、そしてバリャドリッドにまたがる一連のプロジェクトの最新の成果です。

他の場所では、FRVの太陽光の専門知識も活かされています。インドではAndhra Pradeshプラントが35,000戸の住宅に電力を供給し、近々運用開始のメキシコのサン・ルイス・ポトシにある出力規模342MWのPotosí Solar Plant では、76,000以上の世帯にクリーンエネルギーが供給されることになります。その大志の大きさをさらに示唆するように、同社の活動は現在アルメニアチリヨルダンウルグアイ そしてブラジルにまで広がっています。

しかし、エネルギー分野を変えている要因は再生可能エネルギーの台頭だけではありません。エネルギー貯蔵技術もまた、再生可能エネルギー源の可能性を変革しています。たとえ太陽が輝いていなくても、あるいは風が吹いていなくても、安定した信頼できるエネルギーの供給を可能にするからです。

IHS Markitのリサーチコンサルタントによると、世界のエネルギー貯蔵プロジェクトのパイプラインはすでに63GWを超えています(バッテリー式、機械式および蓄熱式貯蔵を含む)。[14]一方、KPMGの報告書は、太陽光発電(PV)および風力エネルギー発電所の広範かつ迅速な導入が「世界中の電力システムを近代化する取り組みを促進する」[15]と述べています。この近代化プログラムの主な部分は、バッテリー貯蔵システムの開発、導入、発展です。

チリにおけるFRVの先駆的な開発は、バッテリー貯蔵が一貫した「常時稼動」の再生可能エネルギー発電を実現すると予測される段階的変化の典型です。FRVは、統合型バッテリー貯蔵機能を備えた540GW/hの革新的なハイブリッド型太陽光・風力エネルギー発電プロジェクトを開発しています。FRVにとってラテンアメリカで3つ目となるこのプロジェクトは、同社初のハイブリット型風力・太陽光発電プロジェクトであり、初めてバッテリー貯蔵を利用して、24時間365日の再生可能エネルギーの供給を可能にするものです。

2050年までに全電力構成の15%を構成するほど増加すると予測されている搭載型の柔軟な容量は、バッテリーがその約44%を占めます。[16]

「太陽光発電や風力発電に適さない条件の時は、バッテリーが自動的に介入し、貯蔵されている再生可能エネルギーを放出し、ネットワークに対する再生可能エネルギーの中断なしの供給を維持します」と、FRVのCEOであるDaniel Sagi-Vela氏は説明しています。

2018年、FRVはバッテリーベースのストレージイノベーションに特化した新しいビジネスユニットを設立しました。 それは、グリッド管理サービスを提供し、再生可能資産の利用を改善し、そしてこの急速に進化する分野において革新的な新しいビジネスモデルを創造するのを助けることを目的としています。

同様のイノベーションは、世界中で再生可能エネルギープロジェクトの持続可能性に変化をもたらしています。日本では、東急不動産株式会社、三菱UFJリース株式会社、日本グリーン電力開発株式会社の3社が、北海道釧路町において25MW/hのリチウムイオンバッテリーを搭載した出力規模92MWの太陽光発電所を建設しています[17]

エネルギー分野全体にわたって新しい技術と専門知識が、人類とエネルギーとの関係を変革するであろう現実世界の変化を推進しています。すでに低迷していた従来からの炭化水素エネルギー源については、エネルギー構成における同エネルギー源の比率が劇的に低下することとなるでしょう。Abdul Latif Jameel Energyは、これらの変化において重要な役割を果たし、再生可能エネルギーの可能性を推進し、すべての人によりクリーンで環境に優しい未来を提供することをお約束します。

[1] BP Energy Outlook 2019, BP, accessed May 2019

[2] Global Solar PV Market Returns to Double-Digit Growth in 2019, IHS Markit Says, IHS Markit, 4 April 2019

[3] Global Solar PV Market Returns to Double-Digit Growth in 2019, IHS Markit Says, IHS Markit, 4 April 2019

[4] Washington becomes fifth state in the US to aim for 100 percent clean energy, Renewable Energy World, 8 May 2019

[5] Global Solar PV Market Returns to Double-Digit Growth in 2019, IHS Markit Says, IHS Markit, 4 April 2019

[6] Message from the Chairman, Japan Photovoltaic Energy Association, accessed May 2019

[7] The Solar Show MENA 2020, accessed May 2019

[8] $13.6B record-breaking solar park rises from Dubai desert, CNN, 25 April 2019

[9] The plan to turn Saudi Arabia into a renewable energy leader, Oxford Business Group, 26 April 2019

[10] The plan to turn Saudi Arabia into a renewable energy leader, Oxford Business Group, 26 April 2019

[11] Global energy transformation: A roadmap to 2050 (2019 edition), International Renewable Energy Agency, April 2019

[12] Global energy transformation: A roadmap to 2050 (2019 edition), International Renewable Energy Agency, April 2019

[13] Global energy transformation: A roadmap to 2050 (2019 edition), International Renewable Energy Agency, April 2019

[14] Energy Storage Infographic, IHS Markit, accessed May 2019

[15] Electricity Storage Insight, KPMG, 2016

[16] Source: New Energy Outlook, BNEF 2018

[17] Japan’s Largest-scale Battery-equipped Solar Plant to Be Built in Hokkaido, Solar Power Plant Business, 6 September 2017