よりよい再建へ: パンデミック後の復興に向けたビジネス再構築
この1年で、世界のビジネスはそれまでの想像を絶する方向へと一変しました。しかしパンデミック宣言から12か月が経った今、企業やその社員たちが状況に順応し、新たな方法で前に進もうとするポジティブな動きが生まれています。
まるで超現実的な話です。2019年12月31日、中国の武漢市衛生健康委員会は、「ウイルス性肺炎」の症例発生に関する報道発表をホームページに掲載しました。[1]2020年1月9日には、これが新型コロナウイルスによるものと特定されました。コロナウイルス科は、呼吸器および腸疾患の原因となるウイルスの一群で、SARSやMERSもその一種です。SARSコロナウイルス2型(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)と名づけられたこのウイルスは、いまや知らぬ者はない[2]新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こしました。
2020年1月11日、中国はこの感染症による初の死者を報告し、そのわずか数日後、すでに国際的に感染が広がりつつあった1月30日に、世界保健機関(WHO)は国際公衆衛生上の緊急事態を宣言しました。3月11日には、この感染症は世界的な大流行(パンデミック)であると認定されました。わずか2か月余りの間に、私たちがそれまで知っていた世界は変容してしまいました。
「一時解雇」や「ソーシャルディスタンス」など、これまでほとんど使われることのなかった言葉が、当たり前のように使われるようになりました。接客や観光、レジャー産業、程度の差こそあれ小売業など、人の社会的な交流に関わる産業が、この1年の大半を操業停止の状態で過ごしています。スポーツイベントは、開催されたとしても、無観客という形態やソーシャルディスタンスの取られたスタジアムで行われています。
新型コロナウイルスが引き起こした人々の悲劇には、計り知れないものがあります。米国だけでも、第二次世界大戦の米軍死者数より多い、何万人もの人々が犠牲になっています。[3]世界的に見ると、数字は日々変化していますが、2021年2月末時点で250万人という衝撃的な死者数です。世界の主要な経済圏では、2019年から2020年の失業率が前代未聞の上昇率を記録しています。特に米国では、2020年の経済成長率は−3.5%となり、1946年以来最悪のマイナス成長となりました。[4]国際労働機関(ILO)は、2020年第4四半期の労働時間がコロナ禍前と比較して4.6%減少したと報告しています。これは、1億3,000万人の正規雇用者の労働時間に匹敵します。世界中で一時解雇状態にある会社員は厳密には失業者としてカウントされないため、ひとたび一時解雇がなくなり完全な失業状態になれば、これらの数字はさらに悪化することが予想されます。
国際的な観光業界や接客業界など、事業モデルが一晩にして時代遅れとなった業界もあります。例えば、パンデミックの初期段階では、航空機の利用が96%も減少しました。[5]国連世界観光機関(UNWTO)の世界観光指標によると、2020年の国際観光客到着数(宿泊客)は前年比74%減となりました。ウイルス封じ込めの遅れや、旅行に対する懸念、さらに今も厳重な渡航制限が続いています。[6]海外旅行産業の崩壊により、輸出収益の損失は推定1兆3,000億米ドルとされています。これは2009年の経済危機と比較しても11倍を超える数字です。
新型コロナウイルスは、商業施設の不動産業界にも多大な影響を与えています。後に詳述するリモートワークは、今後の事業活動の進め方を根底から変え、物理的な空間の必要性を減らしていくことになるかもしれません。米国では、オフィスの空室率はすでに2019年末の16.8%に比べ、2022年末には20.2%へ上昇すると見込まれています。[7]
市場そのものが不透明なため、不動産部門の損失の全容を評価するのは困難ですが、不動産投資信託(REIT)の動向は参考になります。国際決済銀行は、米国、英国、欧州大陸および日本において、パンデミックによりREITの過去5年間の累積評価益が消滅したと算出しています。それに比べ、深刻な危機の真っただ中にあった3月上旬の株式市場の指標は、2019年の収益分の損失にとどまりました。また、REITはその後の株式市場の回復に関しても遅れをとっています[8]。
デジタル化か破産か
世界が復調への道のりを模索するにつれて、次第に明らかになってきたことがあります。それは、このパンデミックが、ビジネスに新たな変化を多くもたらしたというより、様々な意味ですでにビジネスの様相を変えつつあった既存の流れを加速させているにすぎないということです。その流れは、この12か月の生存戦略として必須であっただけでなく、より長期的な事業運営の基盤となりうる方向性でもあるのです。
その中でも特に、デジタル化への移行が戦略上の重要な要素となっています。人々は家に閉じこもり、目抜き通りは無人化し、レジャー施設や接客施設が閉鎖された状況下で、私たちの生活の大部分がデジタル空間へと移行しました。1つの例が娯楽産業です。美術館や劇場、映画館はほぼ1年近く閉鎖され、この業界で生活する役者やクリエイター、技術者、プロモーターやマネージャーなどの生計を困難なものにしました。[9]その一方で、人々が家にこもる中で、オンライン動画配信プラットフォームは大きく成長しました。例えば、Netflix(ネットフリックス)は、コロナ危機の最初の3か月で1,600万件の新規登録者を獲得しました。[10]
経営幹部を対象にしたMcKinsey(マッキンゼー)の国際調査によると[11]、企業は顧客およびサプライチェーンとのやり取りや社内業務のデジタル化を3〜4年前倒しで進めています。また、彼らのポートフォリオに占めるデジタル製品およびデジタル対応製品の割合は、この7年間で拡大し続けています。ほぼすべての回答者が、自社において多くの新たな需要に応えるためにデジタル技術を採用しており、それはコロナ禍以前に想定していたよりずっと早く実現が可能となったと答えています。
さらに、これらの変化は、多くが長期的に続くことが予想されます。組織は、自身の生き残りを賭けた投資をすでに行っています。実際、McKinseyの調査では、コロナ禍が施策内容に与えた影響は何かという質問に対し、もっとも大きな影響を受けたのは、コストの増加でもなく、技術職の人材数や顧客数でもなく、デジタル構想への増資だったとの結果が出ています。
小売業の現実
デジタルの力は、おそらく目抜き通りにおいてもっとも顕著に現れているでしょう。実店舗の他に強固なオンライン販売基盤を持たない店は、この10年以上、徐々に強まるプレッシャーにさらされていました。「生活必需品以外の販売店」という表現を生んだ新型コロナウイルスの出現は、そういった店にとっては決定打となりました。英国の代表的なファッション小売チェーン、Arcadia Group(アルカディアグループ)を例に取りましょう。従来の一般大衆向け店舗の経営モデルに依存していたArcadiaは、コロナによる一時休業で追い詰められ、2021年のはじめに破産申請を行いました。同時期に、1778年の創業以来人々に愛されてきた、1万2,000人の従業員を抱える英国の大手百貨店Debenhams(デベナムズ)も経営破綻に追い込まれました。[12]また米国では、大衆向けファッションの老舗であるBrooks Brothers(ブルックス・ブラザーズ)やNeiman Marcus(ニーマン・マーカス)が倒産しました。
それとは対象的に、このパンデミックで世界のeコマース売上額は2020年に27.6%増、金額にして4兆2,800億米ドルと飛躍的に拡大しています。[13]改めて、これはすでに始まっていた潮流であり、ロックダウンによってそれが加速されただけのことです。英国のオンラインアパレル小売業者のBoohoo(ブーフー)は、その後Debenhamsを、またArcadiaのプレミアムブランドの一部を買収しました。[14]どちらのケースも、買収内容はオンラインブランドに関わる資産についてのみです。両者の巨大な実店舗ネットワークは買収対象とならず、ここでもまた、従来の実店舗型事業がとどめを刺される形となりました。
健康を支えるテクノロジー
医療業界では、パンデミックが起こる以前から、技術主導の変革が始まろうとしていました。新型コロナウイルスにより医療システムには多大な負担が生じ、その変革への機運は飛躍的に高まっています。特にパンデミックとその後のロックダウンにより多くの人々が心身の健康にさらなる関心を寄せるようになったため、この傾向は顕著化しています。
Abdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)のパースペクティブシリーズに掲載された医療技術に関する記事で取り上げられているように、AIと機械学習を駆使した医療革新により、これまでにない速度で、患者の膨大な健康データを治療、予防、さらには疾病予測のための高度な知見に変換できるようになっています。得られた結果を通して臨床医は再発パターンを理解し、特定の患者の属性に基づいて治療モデルを開発することができます。
軽度の疾病や慢性疾患を対象としたバーチャル診察、つまり「遠隔医療」は、12か月前にはニッチなサービスでしたが、今では多くの人が医療関係者に初めて相談する機会になっています。米国では、パンデミック前には約10%しかなかった遠隔医療を、現在では全体のほぼ半数の患者が何らかの形で利用しています。さらに、83%の患者がパンデミック後も遠隔医療の利用を続けると答えており、結果として米国の2,500億米ドルの医療費がバーチャル医療に移行する可能性があります。[15]成長が見込まれるもう一つの分野が自己診断で、体温や血圧、心拍数、呼吸数などをウェアラブル装置で測定し、そのデータを医師に送信してバーチャル診察を受けることが、ますます一般的になってきています。
医療技術は、患者が自宅を離れる必要のない臨床試験にも応用されています。例えば、Apple Heart(アップル・ハート)とスタンフォード大学が40万人を対象に行った心房細動を検出するためのウェアラブルの使用に関する研究[16]や、15万人が参加したApple(アップル)とJohnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)のパートナーシップによる脳卒中予防のための研究「Heartline」などが挙げられます。[17]新型コロナウイルスは、インフルエンザのように、将来的には予見可能な、慎重に管理される生活の一部となるだろうというのが科学者たちの広い認識です。もしそうであれば、遠隔医療のコンセプトはますます発展し、拡大していくでしょう。
Abdul Latif Jameelは、25年以上にわたり、医療へのアクセス改善に独自の貢献をしてきました。
遡ること1995年、私たちはサウジアラビア初の非営利のリハビリテーション病院、Abdul Latif Jameel Hospital(アブドゥル・ラティフ・ジャミール病院)を設立しました。最近では、Cyberdyne(サイバーダイン)、Cellspect(セルスペクト)およびJOMMDといった医療機器イノベーターやイノベーション推進企業とのパートナーシップを確立しています。
医療分野でのイノベーション支援に関する最近の取り組みは、2020年のAbdul Latif Jameel Health(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・ヘルス)の創設です。これは、新興国である開発途上国の地域社会に、医療の進歩による恩恵を確実に提供することを目的としています。Abdul Latif Jameel Healthは、ジャミール一族の国際投資部門であるJIMCO(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・インベストメント・マネジメント・カンパニー)およびJIMCO Life Sciences Fund(JIMCOライフサイエンスファンド)と連携し、Evelo Biosciences(エベロ・バイオサイエンシズ)やCellarity(セラリティ)、AVNeoをはじめとする企業への一連の投資活動を行いながら、最新医療へのアクセスを拡大しています。
エネルギーの新たな展望
新型コロナウイルスは、環境やエネルギーの消費方法にも、否応なく関心を向けさせています。2020年はじめに世界がロックダウンへ突入したとき、車は駐車場に、飛行機は駐機場に待機する状態になったため、世界の炭素排出量は低下しました。パンデミックと環境との関係については、ファディ・ジャミールのスポットライトシリーズの記事で詳しく紹介されています。
中国では炭素排出量が25%、石炭使用量が40%減少し、ニューヨークでは汚染レベルが半減しました。[18]変動性の高さで知られる石油とガス業界では、ロックダウンが広がり燃料需要が急落したパンデミックの初期段階に、原油価格が1バレル20米ドルまで下落しました。[19]
この事態が、エネルギー業界における再生可能エネルギー技術への投資とイノベーションの推進を後押しし、「グリーンな復興」の必要性について、ファディ・ジャミールのスポットライトシリーズの記事でも紹介されているように、各国政府は国境を超えてなされるべき議論を活発化させています。
その一端を担うAbdul Latif Jameelは、特に再生可能エネルギーと水開発業界での投資を進めています。Abdul Latif Jameel Energy and Environmental Services(Abdul Latif Jameelのエネルギー・環境関連サービス部門)に属するFotowatio Renewable Ventures(FRV)は、大規模な太陽光発電プロジェクトおよび風力発電ソリューションを世界各地で展開しています。また、英国の再生可能エネルギー開発会社、Harmony Energy(ハーモニー・エナジー)とパートナーシップを組み、年中無休で再生可能エネルギーを提供する実用規模の蓄電池の開発を先駆的に進めています。初のプラントは英国のドーセット州ホールズベイで建設が進んでおり、またウエスト・サセックス州コンテゴでも2件目のプロジェクトが進行中です。
一方で、Abdul Latif Jameel EnergyのAlmar Water Solutions(アルマー・ウォーター・ソリューションズ)は、世界でもっとも水資源の少ない地域で水と環境マネジメントの課題に取り組んでいます。サウジアラビアで第2の規模となる海水淡水化工場、Shuqiq3(シューカイック3)はその一例です。
欧州連合は、コロナ禍からの復興基金8,800億米ドルの30%を気候変動分野に充てるとしています。中国は2026年までに自国の炭素排出量をゼロにすると表明し、米国大統領のジョー・バイデン氏はクリーンテクノロジー分野に2兆米ドルを投資することを約束しました。日本や韓国、カナダ、ナイジェリアやコロンビアをはじめとするその他の国でも、各国が意欲的な目標値を定めています。[20]
世界的な動向として、低・中所得の国々がパンデミック後の復興に立ち遅れないよう、適切な政策策定や自国能力の開発、イノベーション促進を支援するという動きが始まっています。
そのようなプログラムの1つが、2020年12月、83億米ドルの気候投資基金(CIF)によって発足した、COVID-19 Technical Assistance Response Initiative for Green and Climate Resilient Recovery(新型コロナからの環境・気候のレジリエントな回復のための技術援助対策イニシアチブ)です。
このイニシアチブは、英国、オランダ、スイスの各政府から2,500万米ドルを超える資金援助を受けることになっています。その目的は、低・中所得国が環境に優しく、低炭素で、気候変動に対応できる政策を策定するための技術支援と能力開発、そして彼らの復興計画への投資を目的としています。
気候投資基金のCEO、マファルダ・デュアルテ氏はこう述べています。「2008年の金融危機以降、多くの国が化石燃料へ多大な投資を行うことで気候危機を悪化させてきました。私たちの新たなプログラムの目的は、新型コロナ禍からの復興のための大規模な刺激策を、環境に優しく気候変動に対応できる回復に向けたものとすることです。世界は、よりクリーンで環境に優しい、よりよい世界を再建するためのこの一世一代のチャンスを、決して無駄にしてはいけません」
混乱への適応とその先の成長
先行き不透明な状況下で、パンデミックの最大のプラス面の1つは、個々の企業の変革力と適応力であり、これは今後も大きな糧になるでしょう。
リモートワーク(または在宅勤務)を考えてみましょう。多くの組織が、数日の猶予もなくその実施の開始を余儀なくされました。リモートワークはコロナ禍以前から生まれていた概念ではありましたが、なかなか浸透しませんでした。この危機の一撃が、それまでリモートワークの普及を妨げていた文化的、技術的な障壁を消し去り、仕事をする場所と時間の構造的な変化が起こりはじめたのです。
欧州生活労働条件改善財団(Eurofound)[21]の推計では、パンデミックの影響により、現在欧州域内で働いている人の40%近くがフルタイムでリモートワークを始めたとされています。これまで在宅勤務を経験したことのある人は、欧州域内で雇用されている人のわずか15%だったことを考えると、多くの雇用者と会社員が働き方の急激な変化に直面していることになります。実際、世界経済フォーラムが欧州15か国を対象に行った調査によると、危機以前には15%しかなかった裁量労働ポリシーを、現在は76%が導入しているとの結果が出ています。[22]
McKinseyは、労働人口の20%以上はオフィスで働くのと同じ効率で週に3日から5日の在宅勤務が可能であると推定しています。[23]もしリモートワークがそのレベルで定着すれば、これはパンデミック以前に比べて3〜4倍の人が在宅勤務を行うようになることを意味し、都市経済や交通機関、消費者支出をはじめさまざまな点で多大な影響を与えることになります。
ただし、リモートワークは全ての業種や全ての職種に適用できるものではありません。リモートワークが非常にうまくいくケースもあれば、「オフィス」で人々と交流する環境に比べて画面の前に座り続ける生活にうまく適応できないこともあるでしょう。多くの仕事では、顔を合わせての共同作業や特殊な機材が必要です。建設業やある種の医療業務など、その場で行わなければならない仕事もあります。また、運送業や園芸業などは、屋外でしか遂行できない仕事です。
リモートワークの形態に移行できる職種であっても、従来の仕事環境に慣れている社員には、新しい働き方の中で機能的にも精神的にももっとも効率よく働くためのサポートとガイダンスが必要になるでしょう。新入社員に対しては、入社時の研修にリモートワークのトレーニングを組み込む必要があります。そのため、業界の専門家によると、今後はリモートワークと時間を短縮したオフィスワークを組み合わせた、ハイブリットな形態が働き方の主流となる可能性が高いとされています。[24]交通システムへの負担が減り、混雑や大気汚染の問題が緩和され、社員にはよりよいワークライフバランスを提供できるなど、表面的には、ポジティブな変化のように思えます。しかしこれは、何万人もの通勤者と会社員の日常的なニーズを想定して構築された都市部に重大な課題を突きつけるものでもあります。
ポジティブな学び
そして何よりも、新型コロナウイルスは、多くの企業が思っていた以上に順応性があり、新たな挑戦ができ、困難からの回復力があることを企業自身に気づかせることになりました。今回のパンデミックは、記憶にある限りもっとも深刻な課題をビジネスに投げかけました。しかし同時に示されているのは、企業は不測の事態への備えや、それに対応する機敏性を発揮して、さらに強くなれるということです。
多くの場面で、企業はすばやく適応し、改革ができることを自ら証明しており、これは自信を高めるよいきっかけとなったでしょう。ある調査によると、企業はパンデミック前に想像していたより40倍の速さでリモートワークへ移行しました。それまで少なくとも1年はかかると考えられていたことが、実際には平均11日で効果的なソリューションが導入されたのです。[25]コンサルティング会社Korn Ferry(コーン・フェリー)のシニアパートナーであるクレイグ・ローリー氏は、18か月間かけて建物外商品引き渡しプログラムを導入する計画をしていた、あるクライアントのエピソードを紹介しています。パンデミックが発生し、彼らはスケジュールを前倒しさせ、わずか18日でそれを実現させました。
専門家サービスや金融サービス、医療、製薬などのセクターでは、コロナ危機前に考えられていたより20〜25倍の速さで、製造、研究開発(R&D)、事務管理などの社内業務のデジタル化を実現させています。[26]これは人事や管理、経理などの主要な事務部門の生産性の最大化にとどまらず、経営陣が年次総会で社内外のステークホルダーに向けてバーチャルな形で情報を発信したり、[27]データの整合性や安全性を確保するための適切な方策を導入するなど、企業統治の部分にまで及びます。
また、パンデミックは、企業が自社サプライチェーンの管理方法を検討する機会にもなっています。コロナ危機の初期段階には、eコマース注文の増大による負荷がかかり、人やモノが越境を阻まれた状況で、サプライチェーンはビジネスの脆弱さの最初の兆候が現れた分野の1つでした。
少なくとも短期的には、企業は地元での原料調達の方針やサプライチェーンを簡素化する方法の検討を始め、起こりうる混乱に備え、単一のソースに依存することからの脱却を模索しています。[28]その代表的な例は、推定80%の医薬成分を輸入に依存している欧州の製薬業界です。[29]IBM Institute for Business Value(IBV)の調査によれば、40%の経営幹部が自社のサプライチェーンにもっと余力を持たせる必要性があると指摘しています。[30]
より強靭な未来
ここ数週間で非常に心強いワクチンの提供が始まり、ビジネスや地域社会は、このトンネルを抜けた先にある光を見出すことができました。しかし、制御可能な日常生活がいつ戻ってくるのかについては、まだ先が見えない状況です。
新型コロナウイルスの苦難を経て、多くの未来志向の企業は「もとの事業活動に戻る」のではなく、「これまでとは違う、よりよい事業活動」に目を向けています。この危機は、現在の状況への対応策というよりむしろ、未来を形づくる機会を生み出しました。最大の逆境に直面する中で、すべての人々の安全性を確保し、ビジネスと社会の両方の回復力を強化するチャンスです。世界的に見ても、企業にとっては心強いことに、2021年の予測の多くが急速な回復を示しています。その予測を現実のものにすることが課題です。
[1] https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/interactive-timeline#!
[2] https://coronavirusexplained.ukri.org/en/article/cad0003/
[3]https://www.mckinsey.com/industries/public-and-social-sector/our-insights/america-2021-rebuilding-lives-and-livelihoods-after-covid-19?cid=other-eml-alt-mip-mck&hdpid=1490c636-7d83-4dee-a154-cb3eafa05961&hctky=11595533&hlkid=60be643b18ed49678ace0eb50546b7d3
[4]https://www.theguardian.com/business/2021/jan/28/us-economy-shrank-2020-worst-year-since-second-world-war
[5]https://www.insider.com/new-rules-changes-flying-coronavirus-air-travel-2020-12
[6] UNWTO World Tourism Barometer | Global Tourism Statistics
[7]https://www.mckinsey.com/~/media/McKinsey/Featured%20Insights/Leadership/The%20next%20normal%20arrives%20Trends%20that%20will%20define%202021%20and%20beyond/The-next-normal-arrives-Trends-that-will-define-2021-and-beyond-Final.pdf?shouldIndex=false
[8] https://www.ft.com/content/aaf192ac-dc94-4509-8f24-5831a32e7aa2
[9]https://www.europeanbusinessreview.com/how-covid-19-has-affected-business/
[10]https://www.europeanbusinessreview.com/how-covid-19-has-affected-business/
[11] COVID-19 digital transformation & technology | McKinsey
[12] https://www.bbc.co.uk/news/business-55793411
[13]https://www.emarketer.com/content/global-ecommerce-update-2021
[14]https://www.businessoffashion.com/news/retail/boohoo-buys-remaining-apparel-brands-from-failed-arcadia-group
[15] One Year Later: The Harsh Business Lessons (kornferry.com)
[16] Apple Heart Study | Stanford Medicine
[17] Introducing the Heartline Study by Johnson & Johnson and Apple
[18]https://www.bbc.com/future/article/20200326-covid-19-the-impact-of-coronavirus-on-the-environment
[19]https://www.europeanbusinessreview.com/how-covid-19-has-affected-business/
[20]https://www.mckinsey.com/~/media/McKinsey/Featured%20Insights/Leadership/The%20next%20normal%20arrives%20Trends%20that%20will%20define%202021%20and%20beyond/The-next-normal-arrives-Trends-that-will-define-2021-and-beyond-Final.pdf?shouldIndex=false
[21] Living, working and COVID-19 | Eurofound (europa.eu)
[22]https://www.weforum.org/agenda/2020/11/pandemic-productivity-innovation-remote-working/
[23] Whats_next_for_remote_work_F.pdf (mckinsey.com)
[24]https://www.mckinsey.com/~/media/McKinsey/Industries/Public%20and%20Social%20Sector/Our%20Insights/Future%20of%20Organizations/Whats%20next%20for%20remote%20work%20An%20analysis%20of%202000%20tasks%20800%20jobs%20and%20nine%20countries/Whats_next_for_remote_work_F.pdf?shouldIndex=false
[25]https://www.mckinsey.com/business-functions/strategy-and-corporate-finance/our-insights/how-covid-19-has-pushed-companies-over-the-technology-tipping-point-and-transformed-business-forever
[26]https://www.mckinsey.com/business-functions/strategy-and-corporate-finance/our-insights/how-covid-19-has-pushed-companies-over-the-technology-tipping-point-and-transformed-business-forever
[28]https://www.imd.org/research-knowledge/articles/A-post-COVID-19-outlook-The-future-of-the-supply-chain/
[29]https://www.imd.org/research-knowledge/articles/A-post-COVID-19-outlook-The-future-of-the-supply-chain/
[30]https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-09-30/most-executives-think-covid-19-changed-their-companies-forever