インターナショナル株式会社とAbdul Latif Jameel HealthのCEOによる、周産期医療についてのパートナーシップに関する質疑応答

2021年11月、Abdul Latif Jameel Health (アブドゥル・ラティフ・ジャミール・ヘルス)は、ジャミール商事株式会社を通じて、メロディ・インターナショナル株式会社(以下、メロディ社)と新しい事業提携を発表しました。本提携により、クラウドでの胎児モニタリングプラットフォームである、メロディ社の画期的なiCTG遠隔モバイル胎児モニターの販売・マーケティング活動を進めていきます。

本提携により、医療施設や産科医不足により一部の途上国では適切な健診や処置を施せない問題や、人口過疎地や遠隔地では医療施設に通院することが困難であるという問題に取り組んでいきます。アジア・中東・アフリカ地域を中心に進めていく予定です。

尾形優子氏(メロディ社CEO)とアクラム・ブシェナキ氏(Abdul Latif Jameel HealthのCEO)に、画期的な技術の活用に向けた事業提携、そして共に見据える展望、そして共に探求する機会について伺いました。

メロディ社、またメロディ社のミッションについて、教えていただけますか。

画期的なiCTG遠隔モバイル胎児モニターとメロディ社のCEO 尾形 優子氏

尾形氏:私は、2015年にメロディ・インターナショナル株式会社を設立しました。本社は香川県高松市にあります。私にとって2度目に創業した会社となります。最初の事業では、産科医と婦人科医向けの日本初の電子カルテシステムの商品化に成功し、Japan Venture Awards 2009 中小企業庁長官表彰を受賞しました。

以来、一貫して産婦人科医療に携わってきました。産婦人科医療は、特に妊娠と出産に関して非常にやりがいのある分野です。産婦人科医は緊急対応で常に多忙です。医師は不足し、訴訟のリスクも高くなっています。同時に、リスクのある妊娠数も増加しています。

デジタルネットワークと医療ICTの経験を活かし、世界中の妊婦さんが安心・安全に出産できるよう、周産期遠隔医療プラットフォームの構築とビジネス化を目指してきました。

当社製品は、1970年代半ばに原量宏教授竹内康人教授が開発した日本の技術に基づいています。両教授は、「リアルタイム自己相関法」を使用して、ドップラーによる胎児モニタリングに驚くべき躍進をもたらしました。それ以来、この方法は世界の標準となり、実際にすべての臨床胎児モニタリングに使用されています。当社のiCTG遠隔モバイル胎児モニター(承認済みの最小遠隔胎児モニター)は、これと同じ原理を用いています。また、現在、両教授は当社の顧問を務めています。

iCTGモバイル胎児モニターについて簡単に説明していただけますか? なぜ画期的なのですか?

尾形氏:iCTGモバイル胎児モニターは2つの小さなデバイスで構成されています。1つは胎児心拍数を測定し、もう1つは子宮収縮率を測定します。これらは、原量宏教授と竹内康人教授が世界で初めて開発した技術に基づいて、作られています。

胎児は、エベレストの頂上のように、常に酸素不足の状態です。

事実として、妊娠と出産は大きな危険を伴います。

この技術と当社が開発したプラットフォームにより、妊婦さんと医療関係者の両方が、いつでもどこでも胎児の状態を把握できるようになりました。iCTG遠隔モバイル胎児モニターを使用することで、病院に行く必要のないオンライン医療サービスを提供することができます。インターネット接続だけで利用可能です。

これは、病院で診察を簡単に受けられない環境にいる母親にとって、非常に大きなメリットとなります。また、頻繁に診察が必要な危険を伴う妊娠の場合は、なおさら効果的です。

タブレットを見ている2人 説明は自動的に作成されます COVID-19のパンデミックの状況では、混雑した病院への通院を減らすことで、感染リスクを減らすことにも役立ちます。さらに、緊急時の移動が必要な時にも、救急車や避難所から胎児のモニタリングを行うことができます。

iCTG遠隔モバイル胎児モニターの主要なイノベーションの1つは、小さいながらも、通常のサイズが大きく高価な胎児モニタリング装置と同じ機能を備えていることです。これまで、このようなデバイスは病院内で利用可能であり、研修を受けたスタッフのみが使用できましたが、iCTG遠隔モバイル胎児モニターの携行性によってどこでも使用でき、医療関係者以外でも簡単に使用できるようになりました。

このシステムは、低価格・ポータブル・利便性・ペーパーレスという利点に加え、タブレットのディスプレイやスマートフォンにデータを送信することもできます。iCTG遠隔モバイル胎児モニターの重量はスマートフォンと同じくらいで、1時間の充電で最大6時間の使用が可能です。

iCTG遠隔モバイル胎児モニターは患者への使用が承認されていますか?

尾形氏:はい、iCTG遠隔モバイル胎児モニターはすでに日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって承認され、ISO13485の認証を受けています。その他、タイ、ミャンマー、ブータンでも承認されており、現在、米国FDAへの申請の準備を進めています。このような国際的な承認を取得することで、遠隔モバイル胎児モニタリングサービスを最も必要とする世界の地域やB2C市場に提供できるようになります。

タイでメロディ社のiCTG遠隔モバイル胎児モニターを使うトレーニングリーダー(写真提供者 © Melody International)

Abdul Latif Jameel Healthとの協業で魅力的と思われる点は何ですか?

尾形氏:当社は、ジャミール・ファミリーが、 Abdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)とCommunity Jameel(コミュニティ・ジャミール)を通じて、何十年にも渡って人々の生活インフラの向上に貢献してきたことに共感しています。今年は、Abdul Latif Jameelの75周年記念の年です。Abdul Latif Jameelは、自動車という創業時の分野から、エネルギー、水、金融、不動産、そして現在はヘルスケアの分野で、グローバルに事業を多角化し拡大してきました。

Abdul Latif Jameel Healthは、特に新興国における医療アクセスの格差是正のために設立されました。これは、米国のMITにあるJameel Clinic(ジャミール・クリニック)、またロンドンのImperial College(インペリアル・カレッジ)のJameel Institute(ジャミール研究所)と共に歩んできたジャミール・ファミリーの信条が基盤となっています。

これらの戦略とパートナーシップによって例示されるように、Abdul Latif Jameel Healthのミッションは、当社のミッションと一致しています。今回の提携を通じて、高度な技術をより多くの人々に提供し、世界中でリスクを軽減し、人々の命を救うことができます。

メロディ社は、Abdul Latif Jameel Healthのミッションやビジョンにどの点で一致しますか?

Akram Bouchenaki
– アクラム・ブシェンキ
Abdul Latif Jameel Health CEO

アクラム氏:この革新的なモニタリングシステムは、産科医療・妊婦検診へのアクセス性を高め、何百万人もの妊婦の妊婦検診や必要な医療環境を改善する上で大きな価値があると確信しています。

特に、私たちのパートナーシップと、メロディ社とAbdul Latif Jameel Healthの共通したビジョンの取り組みには、3つの側面があります。

  1. Abdul Latif Jameel Healthのミッションは、ヘルスケアのイノベーションへのアクセスを加速するための架け橋となることです。また、特に新興国で効果的であることです。メロディ社とのコラボレーションは、当社のビジョンに一致しています。
  2. 当社のビジョンは、今までにない医療ニーズに対応することです。iCTG遠隔モバイル胎児モニターは、何百万人もの女性の妊娠の安全性を高めるという、今までにないニーズに対応するものだと思います。Abdul Latif Jameel Healthが注目する市場には、世界で最も高い出生率をもつ国がいくつかあります。たとえば、ナイジェリアの年間出生数は、ヨーロッパ全体の合計年間出生数よりも高いです。したがって、今までにないニーズに対しては、早急に対応する必要に迫られており、このニーズを満たすことで大きな良いインパクトを与えることができます。
  3. また、画期的な技術を活用し、当社が事業を展開している国において、医療システムの機能を向上させることも使命の一つです。iCTG遠隔モバイル胎児モニターを使用することにより、リソースを妊婦と医師が相互に共有し、遠隔地でも質の高い診察を受けることができるようになります。

だからこそ、私たちはこのパートナーシップが、当社のミッションとビジョンに一致し、エキサイティングなものだと考えているのです。

コラボレーションの本質について詳しく教えていただけますか。

尾形氏:私たちのコラボレーションは、中東、アフリカそしてアジア全体で、iCTG遠隔モバイル胎児モニターの流通を拡大することを目指しています。

特に中東とアフリカは、日本から遠く離れており、当社では、独自にネットワークを確立できていません。Abdul Latif Jameelは、グローバルな社会問題に立ち向かうという企業理念を持ち、75年以上に渡って、この地域でビジネスを展開してきました。当社も同じ企業理念を掲げており、このパートナーシップは成功すると確信しています。

アクラム氏:本提携は、今までにない極めて重要な医療ニーズに応え、人々に価値あるサービスを提供するための非常に重要な連携であると考えています。

メロディ社のデバイスは、医療インフラに関係なく、いつでもどこでも高精度の周産期ケアを提供できるという点で、現在利用可能な最も優れたデバイスです。中東とアフリカの一部の地域では、必要な医療体制が整っておらず、胎児と妊産婦の死亡率が依然として高くなっています。これらの地域に、iCTG遠隔モバイル胎児モニターを普及させることで、誰もが医療にアクセスできるようになり、死亡率も大幅に低下させることができると考えています。

当社は、画期的なイノベーションの実績を持つメロディ社と協力し、知識や専門性、リソースを活用し、何百万もの人々に医療を届けることができることを嬉しく思います。

今回の提携は、御社の目的達成にどのように役に立つのでしょうか。

尾形氏:COVID-19のパンデミックの間、特にリスクが高くなる医療現場では、人と人との密な接触を避けることによって感染リスクが減少することが示されています。iCTG遠隔モバイル胎児モニターは、遠隔モニタリング機能を備えているため、医療専門家の方と妊婦さんに密な接触をさせることなく、高品質の医療を提供できます。当社の遠隔モバイル胎児モニタリングは、実績のある技術と正確なデータに基づいて構築されており、信頼性の高い製品として認識されています。このパンデミックはいまだ終息せず、ウイルスもこの先何年も存在し続けるため、命を救い医療を改善するために、できる限り早く製品を届けたいと考えています。

Abdul Latif Jameel Healthは、中東・アフリカでこれらを実現するための支援をしてくれるでしょう。

アクラム氏:当社は、たとえば、出生数が女性1人あたり最大7人に及ぶサヘル地域のニジェールなど、出生率が非常に高い国で事業を行っています。欧米諸国に比べて、はるかに高い出産数であり、この製品の必要性と影響力を示す有効な指標となっています。製品を提供するだけでなく、現地の医療従事者を育成することによって、現地の医療システムの改善にも貢献することになります。

また、POCT(持ち運びが可能で、その場で検査できる装置)を開発した革新的な日本企業Cellspect社(セルスペクト)などのヘルスケア製品やサービスも当社のポートフォリオに適合します。このようなイノベーションにより、最も必要とされている市場に、長期的な影響を与えることができます。

予想される最大の課題は何ですか?

アクラム氏:当社が取り組む必要のある普遍的な課題は、明確に特定できる「ひとつ」のものではありません。国や地域、住民や医療インフラの環境にも、枠組みや新しい技術を活用する医療システムの能力など、それぞれに特有の課題があります。しかし、それは予期するところであり、当社は可能な限り最大の利益を実現するために、さまざまな市場のニーズに合わせてアプローチを適応させる準備ができています。

Abdul Latif Jameel Healthの次の展開はどのようなものになりますか。

アクラム氏:当社のミッションは、引き続き、メロディ社とのような強力なパートナーシップを構築し、相互に連携したツールや技術のポートフォリオを形成すること、そしてそれが長期的に、現在サービスが行き届いていない人々に提供される医療の質の向上に貢献することにあります。

パンデミックで、グローバルな医療システムに直面する深刻な課題が浮かび上がりました。これらの課題の多くは、新興国ではさらに深刻になると予想しています。しかし、当社がパートナーと共に、これらの課題に取り組んでいきます。

iCTG遠隔モバイル胎児モニターは、いつ頃までにターゲット市場に導入したいとお考えですか?

アクラム氏:すでに、今後数か月でiCTG遠隔モバイル胎児モニターを市場に流通させることを目指し、日本法人ジャミール商事やメロディ社と話し合いをしています。準備は整っており、使用実績もあります。次に必要となるのは、医療機関に流通させるため、最も効果的なチャネルの構築であり、現在取り組んでいるところです。