すべての人々が、質の高い教育を受け、平等な機会を得られるようにするという国連のビジョンである

UN SDG 4UN SDG 5 「質の高い教育をみんなに」(SDG 4)と「ジェンダー平等を実現しよう」(SDG 5)は、ジャミール・ファミリーの社会貢献の活動と、非常に関連性のある課題です。

何十年にもわたる活動と改革にもかかわらず、社会全体において、世界中の女性は現在でも男性より不利な状況に置かれています。

女性の権利、機会、賃金、地位は男性より低いです。この課題を克服するためには、教育が主要なツールの1つになります。教育は、すべての人にとって、より多くの機会と収入を得て、社会へ貢献するための重要な基盤となります。男性と同様に女性も、自身の潜在能力を最大限に発揮し、より公平で公正な世界を目指すことができます。

SDG 4:質の高い教育

SDG 4 education

実際、すべての人に質の高い教育を提供するという目標は、ジェンダー平等の働きかけとなるだけでなく、他の多くの国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成への糸口でもあります。ユネスコも次のように述べています。2030年の持続可能な開発目標には、知識、スキル、価値観によって人々に尊厳を持って生き、生活を築き、社会に貢献できる力を与える教育が必要です。」[1]

過去10年間で、特に女性の就学率の向上に、大きな進歩が見られました。

それにもかかわらず、2018年には約2億6,000万人の子供たちが通学できず[2]、これは世界の子供のほぼ20%に相当します。さらに、世界の若年層の半数以上が読解と算数の能力基準を満たしておらず[3]、7億5,000万人の成人が低識字率のため、貧困であり、社会的に疎外されています。[4]

2020年には、COVID-19により悪い状況が さらに悪化しました。

パンデミックが世界中に広がるにつれ、188を超える国々で学校が閉鎖され、16億人以上の若年層が影響を受けました。これは世界の91%の若年層に相当します。[5]。学校給食に頼らざる負えない3億6,900万人近くの子供たちは、学校以外で毎日の食事をとる必要があります。[6]。 

SDG4 infographic

今日、若年層の学習と能力開発の機会が失われている可能性があるのは明らかです。

世界の60%を超える国々がオンラインでの教育プラットフォームを導入していますが、新興国においては、その割合は30%にすぎません。このパンデミック以前もすでに、世界のほぼ30%の若年層へは、デジタルやITが行き届いておりませんでした。[7]

これほど多くの子供たちが、同時期に登校できない状況になったことはありません。学習の機会は奪われ、特に最も弱い立場で社会から疎外された人々の生活は一変しました。近年、世界的に向上していた就学率や識字率は、パンデミックの影響により、低下する可能性があります。

社会全体の利益

SDG 4を達成し、他の16項目の目標へ貢献することで、若年層だけでなく、成人もまた、質の高い教育を受け、学習機会を得ることで、貧困から抜け出すことができます。

国連の「成人学習および教育に関するグローバルレポート」の第三回報告書[8]は、成人の学習と教育がさまざまな政策に有益であることを示しています。各国で、健康と福祉、雇用と労働市場、社会生活、市民生活、地域社会の生活における肯定的な影響について報告されています。成人の学習と教育により、健康状態や立ち居振る舞いが改善され、平均寿命が長くなり、生活習慣病の減少したことで、医療費も削減されました。

また、国連の報告書には、成人が教育を受けることで、労働市場における個人、雇用主、そしてより一般的には経済全体にとって、いかに重要な利益になるかについても強調して述べられています。さらに、成人が学習し、教育を受けることで、どのように社会的結束を高め、社会活動、市民活動、およびコミュニティ活動への参加を促進するかを示しています。

アクセシビリティの向上と機会の拡大

ジャミール・ファミリーは、経済的自立とジェンダー平等の礎となる教育に対する、国連の情熱とビジョンに共感しています。教育には、すべての人に機会を均等に与え、可能性を広げる力があります。ジャミール・ファミリーは、1か月の教育や学習が一生の仕事につながる可能性があると考えています。働くことは、コミュニティを発展させることに繋がります。人は働くことで、社会に貢献し、人としての誇りと、家族の安定、所得の確保、そして自由と自尊心を得ることができます。

そのため、世界の教育学やテクノロジーのイノベーション、奨学金、メンターシップ、教育プログラムなどを通じて、質の高い教育を最も必要とする人々に提供すべく活動に取り組んでいます。学習の妨げとなる障壁を取り除き、教師、学生、起業家、音楽家などをサポートし、個人の成長と教育と就労の変革のためのプラットフォームを提供しています。

マサチューセッツ工科大学(MIT)とCommunity Jameel(コミュニティ・ジャミール)のイニシアチブである、MITのAbdul Latif Jameel World Education Lab(J-WEL/アブドゥル・ラティフ・ジャミール世界教育研究所)は、ジャミール・ファミリーのグローバルな社会貢献活動の1つであり、世界の教育における卓越性と変革を推進しています。この研究所には、オンラインおよび対面でのワークショップ、調査、イベントを通じて、教育者、技術者、政府関係者、市民団体、企業の経営者、従業員などが参加しています。

J-WELでは、MITの教職員と協力し、教育に変化を起こすべく、グローバルな機会に対応して、次の3つの主要分野と「共同事業」に焦点を当てています。

  • J-WEL pK-12は、教育にイノベーションをもたらすべく、計画の立案、リサーチ、実行を通じて、生徒と教師の協力を得ながら、地球の未来をより豊かにするために、幼稚園や保育園、小学校、中学校、高校の教育プログラムを新たに考案しています。
  • J-WEL高等教育は、世界中の学生がより学ぶことができるよう、高等教育を変革するグローバルリーダーのコミュニティを構築しています。
  • J-WEL就業学習は、学校、企業、政府、非営利団体と協力して、世界の終業の本質を変革しています。

J-WELは、シリアなどの難民に対応して設立された「Transforming Refugee Education towards Excellence」(TREE)プログラムの作成も行っています。Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)との共同事業であるこのイニシアチブは、教師がトラウマを克服し効果的に教育できるようになるための教師養成プログラムで構成されています。TREEは2019年、教育省、Community Jameel、Dubai Cares(ドバイ・ケア)、そしてHikma Pharmaceuticals(ヒクマ・ファーマスーティカルズ)と連携したヨルダンのパイロットプロジェクトから始まりました。生徒、保護者、教師を含め、5年間で745,000人のヨルダン人とシリア人の難民を支援することを目標としています。

Community JameelとMITのもう1つの共同事業は、Abdul Latif Jameel Poverty Action Lab(J-PAL/アブドゥル・ラティフ・ジャミール貧困アクション・ラボ)で、事業に特別な教育の要素を取り入れています。J-PALの教育部門は、教育学、教師のトレーニング、インセンティブ(子供、教師、家族向け)、学校のガバナンス、幼児期の発育、情報通信技術などの課題に関する研究を通じて、初等教育以降で質の高い学校教育を提供できるよう尽力しています。

イニシアチブには、ニーズに合わせてカスタマイズされた学習技術が学生のテストスコアに与える影響を測定ため、インド都市部の中学生向けコンピュータベースの適応学習プラットフォーム使用に関する研究や、ガーナの中等学校の奨学金制度により、教育の達成度、認知能力、成果に及ぼす効果の評価などがあります。

Community Jameelが特に力を入れていることは、通常、教育を受ける機会に恵まれていない多くの学生に、質の高い教育を提供することです。その方法の1つは、世界の意欲的な学生に奨学金制度です。

2019年にMITで開催されたジャミール・トヨタ奨学金の25周年記念式典に出席したAbdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)のファディ・ジャミール(中央左)社長代理兼副会長、とL.ラファエル・ライフ(中央右)および現役の学生と卒業生、教職員

ジャミール・トヨタ奨学金は、世界有数の学術機関の1つであるMITで、学生が能力を発揮できるよう支援するために1994年に設立されました。ジャミール・トヨタの奨学生は、アジア、中東、北アフリカの25か国以上の出身であり、MIT学士課程を学ぶために、奨学金制度を利用しています。この制度により、1994年以来27か国190名以上の学生が奨学金を受けてきました。

Andrea Bocelli, Mohammed Jameel
左から右:ベロニカ・ベルティ(アンドレア・ボチェッリ基金(ABF)副会長)、モハメッド・ジャミール(Community Jameel創設者兼会長およびABF顧問)、アンドレア・ボチェッリ(ABF創設者)、エミリー・シエラ(RCM4年生、米国出身)、ズワケル・ツァバラ(RCM修士課程1年生、南アフリカ出身)、ラウラ・ビアンカラニ(ABF理事長)、コリン・ローソン教授(RCM学長)、ステファノ・アベルサ(ABF会長)、ファディ・ジャミール(Community Jameel副会長)

同様に、アンドレア・ボチェッリ財団・コミュニティ・ジャミール奨学金は、世界有数の音楽学校の1つである 英国王立音楽大学(ロンドン)の学生を支援するために2019年に開始されました。

本奨学金制度は、才能のある学生に学びの機会の提供し、世界トップクラスのトレーニングを受ることができるよう支援しています。

FRVAbdul Latif Jameel Energy(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・エナジー)が2012年に取得したFotowatio Renewable Ventures(FRV)は、スペイン有数の国際大学であるInstituto de Empresa(IE)とパートナーシップを組み、奨学金制度を実施しています。

若手人材育成リーダーの奨学金制度により、FRVの開発現場に近いIE大学で、学生が学ぶことができます。この奨学金制度は、授業料、宿泊施設、教材、4年間の学位プログラム期間中のスペイン国内での交通費や食費を含む、すべての教育に関わる費用が対象となります。

サウジアラビアでは、孤児に有意義な人生をもたらし、未来を明るくするために、2005年にTanweerプログラムを設立しました。同プログラムは、サウジアラビア労働社会開発省とのパートナーシップにより、Community Jameel Saudi Arabia(コミュニティ・ジャミール・サウジアラビア)が運営しています。Tanweerでは、優れた学業成績である14〜18歳の孤児の学生に、文化的視野を広げ、学校で勉強を続ける意欲を保つため、海外旅行で学ぶ機会を毎年提供しています。

一方、芸術分野では、Art Jameel(アート・ジャミール)が、初等教育から大学院レベルに至るまで、教育、学習、研究を組み合わせたアプローチで芸術と教育のプログラムを提供しています。伝統芸術にフォーカスしたオンライン・ワークショップのプログラムJameel House Online(ジャミール・ハウス・オンライン)などがあります。ワークショップは、子供を含むすべてのレベルのアーティストを対象として、伝統芸術に現代的要素を組み合わせたものです。もう1つのオンラインプログラムは、ドバイのJameel Arts Centre(ジャミール・アート・センター)の毎年恒例のフェスティバルからスピンオフしたJaddaf Aloud Online(ジャダフ・アラウド・オンライン)です。UAEを拠点とするアーティストが、子供や10代、大人向けのインタラクティブなプロジェクトを設計し、活用することを特徴とするオンライン上のプログラムです。

SDG 5:ジェンダー平等の実現

SDG 4はジェンダーの視点を取り入れており、SDG 5の目的・達成に強く結びついています。ジェンダー平等 教育とジェンダーの関係は、貧困の解消を含む、女性教育と社会的および経済的発展との高い関連性を示す証拠に基づいています。女性は1年長く教育を受けると収入が10%から20%増加します。中等教育を1年長く受けるごとに、児童婚の可能性は5%以上減ります。読み書きができる母親の子供は、5歳以上まで生きる可能性が50%高くなります[9]

国連は次のように述べています。「ジェンダー平等は、基本的人権であるだけでなく、平和であり、繁栄し、持続可能な世界のために必要な基盤です。」[10]

これまでのところ、小学校で男女平等を達成している国は世界のわずか3分の2程度、また中等教育で達成している国は3分の1強程度しかありません[11]

過去数十年にかけて、状況は改善しています。学校に通う女子生徒が増え、早婚を余儀なくされることが減り、議会や管理職に就く女性が増え、ジェンダー平等を推進するために法律も改正されています[12]。 

しかし、ジェンダーの平等が進んでいるにもかかわらず、たくさんの課題が残されており、COVID-19のパンデミックの影響によって、状況は悪化しています。

COVID-19の発生は、健康や経済から、安全保障や社会的保護に至るまで、あらゆる面で女性の既存の不平等を悪化させています。

ジャミール・ファミリーは、女性の教育と教育を受ける機会を増やすべく、様々な活動をしています。ジャミール・ファミリーは、2006年にサウジアラビアの国内市場にNafisa Shams(ナフィサ・シャムス)を設立し、女性が高品質の工芸品を生産できるようにしました。サウジアラビアの女性の家庭と仕事を両立できるように、在宅勤務プログラムなどのトレーニングや生産ラインを確立しています。

Nafisa Shamsは、女性向けの企業支援としては先駆的であり、デザインと工芸品を中心としたNafisa Shams Incubator(ナフィサ・シャムス・インキュベーター)を立ち上げました。

J-PALは、ジェンダー問題にも特に重点を置いています。J-PALのジェンダー部門は、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの促進やジェンダー平等の基準が、社会的にどのように影響するかについて、包括的に研究しています。あるプロジェクトでは、健康状態と教育に関して、自身のコミュニティと交渉できるようになることを目指した、ザンビアの女児の教育について評価しました。研究者は、交渉スキルを学んだ女児は、3年間でより良い教育成果を上げたことを明らかにしました。

Nafisa Shamsの成功は、2003年に設立された、Bab Rizq Jameel(BRJ/バブ・リズク・ジャミール)、アラビア語で「美しい繁栄へのゲートウェイ」の実績により築かれたものです。BRJは、 サウジアラビア、エジプト、モロッコの若年層の就職を支援しています。経済的自立の第一歩となるよう、個々に適職を探し、雇用機会を創出しています。今日、BRJにはBRJ Recruitment(BRJリクルートメント)、BRJ Microfinance(BRJマイクロファイナンス)とBRJ Services(BRJサービス)などがあり、職業訓練プログラムと若年層向けの雇用訓練プログラムを提供しています。

Community Jameelの主要なパートナーであるMITエンタープライズ・フォーラムサウジ支部は、女性に力を与え、スキルを向上させ、成長できる機会を提供しています。

地域レベルでは、MITEF Pan Arab(MITEFパンアラブ)は、様々なポートフォリオを通じて、サウジアラビアのスタートアップ企業と起業家を支援し、アラブ地域の起業家エコシステムを促進・充実させることを目標としています。

また、サウジMITEF支部は、毎年開催されるコンテストを通じて、特にサウジアラビアで起業家エコシステムを促進することを目標として設立されました。これまでは、サウジアラビアでは、男性がビジネスを牽引してきましたが、このようなプログラムを通じて、女性起業家の数が大幅に増加しました。この成果は、MITEFサウジアラビアのコンテストへの女性の参加率の上昇に起因しています。2021年第1四半期までに、本プログラムに、8,500以上の応募があり、そのうち44%以上が女性からの応募でした。

より良い、よりフェアな明日への投資

政府が質の高い教育と女性の機会均等を確保するため政策を打ち出していますが、国連の持続可能な開発目標は普遍的で、世界共通のコミットメントです。本目標に取り組み、包括的で公平でアクセスしやすいシステムを構築するためには、政府と国際機関だけでなく、民間企業、地域のコミュニティ、個人など、グローバルな協力が必要です。

教育とジェンダー平等や、食糧システムとエネルギーなど、世界各国で生活インフラの整備を通じ、ジャミール・ファミリーはパートナーシップを組んで、より公正で、環境に優しく、誰もがさらに繁栄できる未来を構築するために、直面する最も困難な課題を解決するために力を尽くしています。

ジャミール・ファミリーの活動における持続可能な開発目標への貢献の詳細は、こちらをご覧ください:https://jameel75.com/sdgで、動画の閲覧とサマリーレポートのダウンロードができます。

 

[1] https://en.unesco.org/themes/education2030-sdg4

[2] http://uis.unesco.org/en/topic/out-school-children-and-youth

[3] https://unstats.un.org/sdgs/report/2019/goal-04/

[4] https://en.unesco.org/themes/education2030-sdg4

[5] https://unstats.un.org/sdgs/report/2019/goal-04/

[6] https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/policy_brief_on_covid_impact_on_children_16_april_2020.pdf

[7] https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/policy_brief_on_covid_impact_on_children_16_april_2020.pdf

[8] https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000372274

[9] https://www.globalpartnership.org/benefits-of-education

[10] https://www.un.org/sustainabledevelopment/gender-equality/

[11] https://www.undp.org/content/undp/en/home/sustainable-development-goals/goal-5-gender-equality/targets

[12] https://www.unwomen.org/-/media/headquarters/attachments/sections/library/publications/2020/gender-equality-womens-rights-in-review-key-facts-and-figures-en.pdf?la=en&vs=935