相互協力への道
国連の持続可能な開発目標に沿ったジャミール・ファミリーの国際連携
国連(UN)の持続可能な開発目標(SDGs)は、すべての人々にとって、より豊かで持続可能な未来を築くための指標を定めたものです。貧困・不平等、気候変動、環境劣化、平和、公正な社会など、現代社会が直面する様々な国際問題を取り上げ、地球や人類の未来を守るために社会がなすべき行動を定めています。
17の国際目標は、2015年に持続可能な開発のための2030アジェンダ[1]の一環として、満場一致で採択されました。2030アジェンダには、この国際目標の達成への道筋を描く15年計画が定められています。
様々な領域で進展が見られるものの、現在の進捗状況は目標達成に必要なスピードや規模には程遠いのが現状です。[2]アントニオ・グテーレス国連事務総長は、国連のSDGサミットで、社会の全部門に対し、持続可能な開発目標を実現するための「野心的な行動の10年」を呼びかけました。[3]
「我々は今、全力を尽くす必要があります。世界中の若者と手を取り合い、共に歩み、誰一人取り残してはなりません。このサミットの勢いに乗って、地球や人類の未来を守るための取り組みを加速し、規模を拡大していきましょう」とグテーレス氏は述べています。
貧困の削減、水や食料の確保、二酸化炭素排出量の削減といった国際目標の大半には、迅速な解決を図るための具体的な優先事項が定められています。
しかし、持続可能な開発目標・SDGsの目標17 「パートナーシップで目標を達成しよう」(以下SDG 17)は少し趣が異なります。目標達成に向けて何の行動を取るかではなく、どのように行動を取るかに焦点を当てているからです。SDGを達成するためには、グローバルパートナーシップと国際協力が不可欠であることが強調されています。
SDG 17には、具体的に次のような記述があります。「持続可能な開発目標を達成するためには、地方・国・地域・国際レベルにおいて、地球と人類の利益を最優先する原則や価値観に基づき、共通のビジョンと目標の達成を目指す包括的なパートナーシップが不可欠です。世界の国々が新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)から回復し、復興を進め、持続可能な開発目標を達成するためには、これまで以上に国際連携を強化していかなければなりません」[4]
新型コロナの世界的拡大により、国際連携の重要性が見直されるようになりました。世界経済は密接につながっています。世界中の国と地域、とりわけ新興国が、医療格差や経済・環境の危機を克服して経済回復を果たすには、国際協力が不可欠です。
ジャミール・ファミリーのパートナーシップの歴史
ジャミール・ファミリーは、75年以上にわたり、事業や社会貢献活動においてパートナーシップの精神を掲げてきました。
創業者のアブドゥル・ラティフ・ジャミールが、国連の創設年である1945年に最初のガソリンスタンドを設立して以来、ジャミール・ファミリーは、共通の価値観と相互尊重の原則に基づいて、人類社会の未来へのビジョンに向けた明確な貢献を行うべく、広範な分野で国際連携を確立してきました。この連携体制は事業の強化にとどまらず、より良い未来に向けたイノベーション開発の面でも優れた効力を発揮しています。また、ジャミール・ファミリーは、国連の持続可能な開発目標においても、パートナーシップを通じて集合的に大きく貢献しています。
食料供給システム、エネルギー、教育、医療をはじめとする世界中の「生活インフラ」への投資を通じて、環境に配慮した、よりフェアですべての人に優しい未来の実現を目指し、人類や地球が直面している様々な難問の解決に取り組んでいます。
これまでの業績は、パートナー企業のコミットメント、専門知識やノウハウ、リソースなしには実現できなかったでしょう。事業提携はもちろんのこと、クライアント、サプライヤー、非政府組織(NGO)、科学界・学会との幅広いパートナーシップと投資活動が実を結びました。
ジャミール・ファミリーはこれまで、事業や社会貢献活動を通じて、様々な国際機関、企業、研究機関、大学、地方自治体、地域団体、芸術振興財団、青少年団体とのパートナーシップを大事に育んできました。
様々な成功や、SDGの達成に向けた国際的な取り組みへの貢献も、相互利益をもたらすパートナーシップや事業提携の賜物です。
パートナーシップによる目標達成を目指して
ジャミール・ファミリーの最初の事業提携は、アブドゥル・ラティフ・ジャミールが最初の自動車ディーラーをジッダに設立した創業初期まで遡ります。当時、新進気鋭の勢いを示していたトヨタ自動車株式会社と事業提携を結び、中東地域における自動車の大量流通を実現して、サウジアラビアの経済成長に貢献しました。このパートナーシップは、後にMENAT(中東、北アフリカ、トルコ)地域でトヨタ・レクサスのハイブリッド車や水素燃料を動力とするトヨタ MIRAIなど、サステナブルな車種の認知度や人気を向上する上で大きく役に立ちました。
ジャミール・ファミリーは、サステナブルな交通へのコミットメントから、EVスタートアップ企業のRIVIAN(リビアン)や、eVTOL(電動垂直離着陸機)の航空ライドシェアサービスの開発・実用化を進めるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)にも初期投資を行っています。
また、近年は乗用車だけでなく、日野自動車株式会社のトラック、豊田自動織機のレイモンド、小松製作所の建設・鉱山機械、Manitou Group(マニトウグループ)、建設業向け発電ソリューションなどの様々な事業提携を通じて、商用車、産業機械・ロジスティクスなどの分野にも積極的に進出しています。
より持続可能な未来に向けた取り組み
Abdul Latif Jameel Energy and Environmental Services(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・エネルギー環境関連サービス部門)も、パートナーシップの精神により、水やクリーンエネルギーなどの基幹インフラの分野で大きな成功を収めています。
例えば、水関連インフラストラクチャの開発技術を専門とするAlmar Water Solutions(アルマー・ウォーター・ソリューションズ、以下Almar)は、世界中のソリューションプロバイダーや権威機関と提携し、下水処理水の再利用や持続可能な海水淡水化プラントの建設プロジェクトへの投資を通じて地球で最も貴重な資源である水へのアクセス向上に取り組んでいます。
同社はバーレーンにあるムハラクの廃水処理工場の株式の過半数を保有しているほか、2019年には、コンソーシアムの一員として、サウジアラビアの紅海沿岸に建設中の世界最大級の海水淡水化プラント、Shuqaiq 3の独立造水事業を落札しています。このプロジェクトは同年にアワードを受賞しました。
Almarは近年、チリを中心にラテンアメリカへの進出を急速に拡大しており、地元の企業との事業提携を通じて様々な水関連の開発プロジェクトを手がけています。また、730万人が安全な飲料水にアクセスできず、840万人が公衆衛生の問題を抱えるエジプトでも、HA Utilities(ハッサン・アーラム・ユーティリティーズ)と事業提携を結び、エジプト国内の下水処理プロジェクトの開発に取り組んでいます。
Almarが水関連部門で活躍する一方、Fotowatio Renewable Ventures(FRV)は、再生可能エネルギー部門で世界中の企業と提携し、数百万世帯に低価格の電力を提供しています。FRVのイノベーション機関であるFRV-Xも、業務提携を通じてクリーンエネルギーの推進に取り組んでおり、産業用蓄電池開発の先駆者として知られる英国企業Harmony Energy(ハーモニー・エネルギー)と共同で、ホールズベイとコンテゴにおける2つの蓄電池プロジェクトを開始しました。また、スペインでもモビリティ関連会社との提携を通じて、水素燃料を動力とする公共交通機関の普及を目指す2つの画期的な公共交通関連プロジェクトに取り組んでいます。
医療格差の是正を目指して
ジャミール・ファミリーは、長年にわたり医療分野への投資に力を入れてきました。この分野は、コスト、複雑性、厳格な規制の枠組みの点からパートナーシップによる連携が欠かせません。
Abdul Latif Jameel Health(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・ヘルス)は、世界中の新興国の医療ニーズに応えるべく、最新医療の迅速な普及に取り組んでいます。2020年の創設以来、Evelo Biosciences(エヴェロ・バイオサイエンシズ)やCellarity(セラリティ)をはじめ、最先端医療の開発に取り組むメロディ・インターナショナル株式会社、セルスペクト株式会社、Holoeyes株式会社と事業提携を結び、世界中の新興地域に次世代の医療技術を届けるための取り組みを進めています。
一方で、ジャミール・ファミリーのグローバルな社会貢献活動を支えるCommunity Jameel(コミュニティ・ジャミール)は、世界有数の学術機関と連携し、次世代医療技術の開発に必要な最先端の研究やイノベーションを支援しています。
さらに、Community JameelとImperial College London(インペリアル・カレッジ・ロンドン)が共同設立したJameel Institute(Abdul Latif Jameel Institute for Disease and Emergency Analytics/ジャミール・インスティテュート)では、AIと最新のデータ分析技術を活用して、予防可能な疾患のグローバルリスクを低減するための研究を進めており、近年では新型コロナウイルス感染症対策や新興国の公衆衛生システムの強化にも力を入れています。
米国では、2018年9月にMITとCommunity Jameelが共同で設立したJameel Clinic(Abdul Latif Jameel Clinic for Machine Learning in Health/ジャミール・クリニック)が、MITのAI医療研究の中心として急成長しており、AIを活用した画像・テキスト処理、ゲノミクスへのAIの応用などに取り組む一方で、機械学習、生物学、化学、臨床科学の分野における新発見にも力を入れています。
飽くなき探求 – 研究・教育の限界への挑戦
Community Jameelは、他にも2つの機関との連携を通じて、世界の発展に不可欠な分野の取り組みを進めています。Jameel Water and Food Systems Lab(J-WAFS/アブドゥル・ラティフ・ジャミール 水・食料システム研究所)は、環境への影響を最小限に抑えつつ、安全で安定した水や食料の供給を実現するための画期的な研究、イノベーション、技術開発に対する投資を行っています。また、2017年に設立されたAbdul Latif Jameel World Education Lab(アブドゥル・ラティフ・ジャミール教育研究所/J-WEL)は、世界の教育の向上を目指し、加盟機関との連携を通じて世界各地でスケーラブルな教育改革を推進しています。
Community Jameelは、J-WEL以外にも教育分野で様々なパートナーシップを築いています。その一環として、新興国の有望な学生に質の高い教育を提供する2つの奨学金制度が挙げられます。
ひとつは、2019年に設立されたアンドレア・ボチェッリ基金・コミュニティ・ジャミール奨学金で、世界最高峰の音楽学校として名高い英国王立音楽大学(ロンドン)の正規学生を対象としたプログラムです。もうひとつは、2019年に創設25周年を迎えたジャミール・トヨタ奨学金です。世界有数の教育機関であるMITの若く優秀な才能を伸ばすことを目的に、継続的な能力開発支援を行っています。
その他の取り組みには、Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)とJ-WELの共同事業であるTransforming Refugee Education towards Excellence(TREE)があり、教師がトラウマを克服して効果的な授業を行うための支援に取り組んでいます。また、Tanweer Jameel(タンウィール・ジャミール)は、サウジアラビア労働省とサウジアラビア航空の協力を得て、年に1回、学業成績が優秀な孤児を海外旅行に招待しています。
文化面でも、Art Jameel(アート・ジャミール)がパートナーシップの強みを最大限に活かして様々な文化振興プログラムを提供しています。提携機関には、ヴィクトリア&アルバート博物館、メトロポリタン美術館、デルフィナ財団、The Prince’s School of Traditional Artsなどの著名な文化芸術機関が名を連ねています。サウジアラビア国内でも様々な個人や組織と連携し、伝統と最新技術の両方を重視した画期的なプログラムを開発すると共に、起業家精神の推進や、文化ネットワークの構築にも取り組んでいます。
美しい未来に向けて…
このように、ジャミール・ファミリーは様々なパートナーシップを通じてSDG 17の目標達成に貢献しており、今後もより良い未来を目指して邁進していきたいと考えています。
持続可能な開発目標に向けたジャミール・ファミリーの活動については、こちら(https://jameel75.com/sdg)をご覧ください。動画を閲覧したり、サマリーレポートをダウンロードしてご覧いただけます。
[1] https://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/RES/70/1&Lang=E
[2] https://unstats.un.org/sdgs/report/2019/
[3] https://www.un.org/sg/en/content/sg/speeches/2019-09-24/remarks-high-level-political-sustainable-development-forum
[4] https://www.un.org/sustainabledevelopment/globalpartnerships/