水は山火事を防ぐ最も強力な手段になり得るのか
毎夏、山火事によってより多くの土地が焼失し、より多くの家屋が破壊され、地域社会や生態系、公的財政への負担が増しています。気温の上昇、長期間にわたる干ばつ、何十年にもわたる不適切な土地管理により、世界の多くの地域で、急速に燃え広がる火災に対する脆弱性が高まっています。
南ヨーロッパや北米からオーストラリア、カナダに至るまで、山火事のシーズンは長期化し、被害はより深刻になり、必要な費用も増大しています。
各国政府は緊急対応に引き続き多額の投資を行っていますが、火災が発生する前に防ぐことには、はるかに少ない注意しか払われていません。

最高経営責任者
ALMAR Water Solutions(アルマー・ウォーター・ソリューションズ)
Jameel Environmental Services(ジャミール・エンバイロメンタル・サービス)傘下のALMAR Water Solutions(アルマー・ウォーター・ソリューションズ)の最高経営責任者、カルロス・コシンは、そこに今、最も大きな機会があると考えています。カルロスは、世界各地の水不足に悩む地域で水インフラの開発に携わる中で、水を適切に管理することが、危機を未然に防ぎ、地域のレジリエンスを高めるうえで重要であることを目の当たりにしてきました。山火事においても、水は単なる消火手段ではなく、予防の要として捉えるべきだとカルロスは考えています。土地・植生管理の改善、健全な生態系の維持、地域の備えの強化を通じて、火災の発生可能性を下げ、火勢を弱め、延焼を抑えることができるためです。
Jameel Environmental Services傘下のALMAR Water Solutionsは、この変化する環境の最前線に立っています。ALMARは、世界の水の安全保障、特に世界で最も脆弱なコミュニティにおける水の安全保障を向上させるというミッションのもと、2016年に設立されました。設立から10年を経て、海水淡水化、廃水処理、再利用、リサイクルプログラムのポートフォリオを確立しています。欧州、中東、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア太平洋地域で手がけるプロジェクトが増える中、海水淡水化と浄水から、廃水処理、再利用、供給ネットワーク、長期的な運用・保守管理まで、水の全サイクルにわたってシステムの設計、融資の構造化、運用を行っています。
このQ&Aでは、山火事への備えが最初の火の手が上がるはるか前から始まる理由、水が最も効果的な予防手段の1つになり得る仕組み、今後の火災対策において緊急対応と同じくらい土地・植生や水システムにも注意を払う必要がある理由について、カルロスが説明します。
Q. 世界各地で山火事の被害が深刻化しているのはなぜでしょうか?
毎年、山火事は勢いを増して再び猛威を振るっています。気温の上昇、頻発する干ばつ、不適切な土地管理により、地球上の多くの地域が燃えやすい状態になっています。南ヨーロッパの松林から、カリフォルニアのチャパラル、オーストラリアの低木林、カナダの北方林地帯に至るまで、山火事は激しさ、広がる速さ、発生頻度、被害額のいずれにおいても増大しています。
気温の上昇、頻発する干ばつ、不適切な土地管理により、地球上の多くの地域が燃えやすい状態になっています。
2025年の山火事シーズンには、すでに深刻な兆候が表れています。
- スペインでは数千人が避難し、37万5,000ヘクタール以上が火災で焼失しました。
- ギリシャのロードス島では、1万9,000人以上が避難を余儀なくされました。
- カリフォルニアでは、森林地域と都市部が接する地域で数十年にわたり人口が増加した結果、火災リスクが常態化した地域が生まれ、消火活動にかかる費用は年間数十億ドルを超えています。
- さらに北のカナダでは、炭素を豊富に含む泥炭地を含め、数百万エーカーの森林が山火事で焼失し、かつてない量の温室効果ガスが排出されています。
この傾向は世界中で見られ、その原因は相互に関連しています。夏の暑さの深刻化、長期化する干ばつ、生態系の弱体化、そしてその根底にある水の不足や不適切な管理です。

Q. なぜ予防を主な戦略にすべきだと考えているのですか?
世界各地の先駆的な取り組みにより、事前に計画を立て、水を予防の中心に据えることで、火災リスクを低減できることが示されています。
スペインのバレンシア地方では、Guardianシステムによって、再生水を噴霧するタワーが設置されています。これにより「湿った回廊」を作り、火災が町に到達する前に、その進行を遅らせたり食い止めたりすることができます。ガリシア地方では、地方部の貯水池を戦略的に配置するとともに、野生馬やヤギによる伝統的な放牧を活用することで、燃えやすい下草を自然に除去しています。
カリフォルニア州のFire Safe Council(防火安全協議会)は、地域社会、土地所有者、関係当局を結び付け、火災シーズンが始まる前に、可燃物量の削減、防御空間の確保、水源へのアクセスポイントの整備に取り組んでいます。
一方、オーストラリアでは、燃料となる植物の蓄積を抑えながら生態系のバランスを維持する計画的な火入れを通じて、先住民の火災管理の価値を示しています。インドネシアでも同様に、Fire Free Alliance(ファイアー・フリー・アライアンス)が貯水や代替灌漑手段によって、火を使わない農業を実現できるよう村々を支援しています。
これらの例は、火災の予防がすでに可能であることを示しています。課題は、地域で成功している取り組みを、連携の取れた長期政策へと広げていくことです。
主な事実:水と山火事
- スペインでは、2025年の山火事シーズンに37万5,000ヘクタール以上が焼失。
- ロードス島の山火事では、1万9,000人以上が避難。
- ドイツの森林面積はスペインの約半分であるにもかかわらず、木材生産量はスペインの3倍。
- 乾燥した植生は火がつきやすく、より高温で燃え、延焼も速くなるため、山火事を防ぐうえで、土地全体の水分を保つことが重要な要素となります。
- 2024年の最適化研究によると、貯水池を戦略的に配置することで、消防チームが5分以内に水源にアクセスできるようになります。
- 山火事によって河川や貯水池の堆積物、灰、汚染物質の濃度が高まり、飲料水の供給源が数か月、場合によっては数年にわたって汚染される可能性があります。
- 再生水はすでに、飲料水の供給を圧迫することなく山火事の延焼を遅らせる「緑の防火帯」を作るために利用されています。
Q. 山火事のリスクを低下させるうえで、森林管理はどのような役割を果たしますか?
見過ごされがちな大きな課題の1つは、広大な森林が管理されないままになっていることです。たとえばスペインでは、森林管理計画がある森林地帯はわずか11%に過ぎません。こうした管理不足が、森林を時限爆弾のような状態にしているのです。
逆説的ですが、森林は密度が高くなるほど脆弱になります。スペインの森林は今、過去10万年間で最も密度が高くなっています。積極的な森林管理を行わなければ、次の大災害の燃料を積み上げていることになります。
ドイツやスウェーデンなどの国は、別の道を示しています。ドイツの森林面積はスペインの約半分ですが、積極的で持続可能な林業により、スペインの3倍の木材を産出しています。スウェーデンもまた、持続可能な木材生産を軸に、活力あるバイオエコノミーを構築しています。一方、スペインでは森林関連の雇用が過去10年間で47%減少しており、何も対策を講じないことによる環境面と経済面のコストが浮き彫りになっています。
Q. 山火事への備えにおいて、水が重要な役割を果たすのはなぜでしょうか?
一般的に、水は火災が発生した後の消火手段と考えられています。しかし私は、水の最大の可能性は、火災が発生する前にこそ発揮されると考えています。
水を活用したレジリエンスは、まず植生や土壌の水分を保つことから始まります。さらに、消防チームがすばやく水にアクセスできるようにし、水によって維持される自然・人工の防火帯を土地環境に組み込むことも重要です。
水を活用したレジリエンスは、まず植生や土壌の水分を保つことから始まります。さらに、消防チームがすばやく水にアクセスできるようにすることも重要です。
乾燥した植生は火がつきやすく、より高温で燃え、さらに遠くまで延焼します。土地に十分な水分が保たれていれば、火災を封じ込めるための貴重な時間を稼ぐことができます。土壌や植生に十分な水分を保つことで、深刻な干ばつ期であっても、山火事の広がる速さや勢いを大幅に抑えることができます。
カリフォルニアでは、再生水を活用することで、記録的な熱波の中でも緑の緩衝地帯を維持し、飲料水の供給を圧迫することなく、延焼を遅らせる生きた防火帯を作れることが示されています。スペインとポルトガルでは、戦略的に配置された灌漑システムと保水性のある防火帯が、物理的な障壁と水文学的な障壁の両方として機能し、火の勢いを弱めています。
Q. 水インフラは、どのように緊急対応を強化できるのでしょうか?
水へのアクセスも同じくらい重要です。農村部の貯水池、地下貯水タンク、ヘリ・ハイドラントを、火災の通り道となることが分かっている区域に沿って配置することで、対応にかかる時間を数時間から数分へと短縮できます。
こうしたインフラを湿地、河川、河畔林と組み合わせることで、複数の防護層を作ることができます。水分を豊富に含む土地環境は、着火しにくいだけでなく、地域社会や野生生物にとってより安全な環境にもなります。
水管理を土地利用計画や緊急時の備えに組み込むことで、水は先回りの防護策となります。火災を速やかに封じ込められるか、それとも国家規模の災害へと発展してしまうかを左右する要素になるのです。
水管理を土地利用計画や緊急時の備えに組み込むことで、水は先回りの防護策となります。
Q. 長期的なレジリエンスを高めるには、水だけで十分ですか?
水だけでは十分ではありません。持続可能な森林管理は、環境面、社会面、経済面で早期に成果をもたらしますが、林業は依然として資金不足であり、広く誤解されています。
ヨーロッパでは、農業予算のほぼ半分が家畜飼料の生産に割り当てられており、その多くは生物多様性に乏しい単作畑で行われています。一方で、森林管理は依然として戦略的投資ではなく、コストとして扱われています。大規模なインフラプロジェクトには多額の公的支援が注がれ続ける一方で、森林は燃えるに任されているのが現状です。
森林の間伐、持続可能な木材生産、土地所有者の積極的な関与はいずれも、気候レジリエンスに不可欠な手段として認識されるべきです。
Q. 今すぐ実行できる実用的なソリューションには、どのようなものがありますか?
必要な技術はすでに存在しています。戦略的に配置された農村部の貯水池、再生水ネットワーク、ヘリ・ハイドラント、湿地や河岸の再生、自動スプリンクラー式の防火帯、より強力な規制上のインセンティブは、いずれも重要な役割を果たします。
こうしたアイデアはすでに実行に移されていますが、連携の取れた長期的な火災予防戦略の一部としてではなく、個別の実証プロジェクトとして実施されることがあまりにも多いのが現状です。
事後対応型の消火活動から予防的なインフラ構築へと公的資金を振り向け、水のレジリエンスを戦略的投資として扱う必要があります。こうしたモデルを拡大するには、政治的な意思、セクターを超えた連携、そして水を適切に管理することが山火事への備えそのものであるという認識が必要です。
Q. 政策立案者が受け止めるべき最も重要な教訓は何でしょうか?
スペイン、カリフォルニア、ロードス島、そしてオーストラリア奥地の事例から得られる教訓は明らかです。水管理は、火災管理でもあるということです。
戦略的な水の計画、貯水、配水、ガバナンスがなければ、山火事の消火にかかるコストは上昇し続け、地域社会、生態系、経済への影響はさらに深刻化します。火災予防は、環境計画と都市計画の中心的な柱となるべきです。水を決定的な要素として捉え、年間を通じて、また土地全体を視野に入れて、火災への備え方を見直す必要があります。気温が上昇し、風向きが変わっても、どこにおいても変わらない真実があります。水がなければ、何も始まりません。
スペイン、カリフォルニア、ロードス島、そしてオーストラリア奥地の事例から得られる教訓は明らかです。水管理は、火災管理でもあるということです。
災予防を政策に組み込む
山火事の規模と激しさが増す中、緊急対応だけにとどまらない、より広範なアプローチが求められています。カルロスが上で述べているように、再生水ネットワークや戦略的な貯水池、統合的な土地・植生管理、積極的な林業など、多くの手段はすでに存在しています。次の課題は、それを実行に移すことです。こうした対策を国の政策や長期的な投資戦略に組み込むことで、レジリエンスを強化し、地域社会を守り、山火事対策を災害への対応から災害の予防へと移行させることができます。
水と山火事:5つのクイックファクト
- 山火事の予防に水が非常に重要なのはなぜですか?
植生や土壌の水分を保つことで、火災が本格化する前に、その発生可能性、広がる速さ、勢いを抑えることができるからです。 - 水によって山火事への対応はどのように改善できますか?
戦略的な貯水池、再生水ネットワーク、ヘリ・ハイドラントによって対応時間が短縮され、消防隊がより迅速に消火活動にあたれるようになります。 - なぜ森林管理が重要なのでしょうか?
積極的な林業、計画的な放牧、持続可能な木材生産により、可燃物量を減らし、山火事に対する森林のレジリエンスを高めることができます。 - 効果的な山火事予防戦略はすでに存在していますか?
はい。スペインのGuardianシステムやカリフォルニア州のFire Safe Council、オーストラリアの先住民による火災管理など、成功しているアプローチはすでに世界各地で活用されています。 - 現在最大の課題は何ですか?
新たな技術を開発することではなく、長期的な投資、連携の取れた政策、そして水管理を山火事予防により深く組み込むことを通じて、実証済みのソリューションを拡大することです。
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