「空飛ぶタクシー」を手がけるスタートアップ企業のJoby Aviationは、革新的なリーダーや新興企業と組む「大規模ベンチャーキャピタル」の手法を取るSPAC(特別買収目的会社)のReinvent Technology Partnersとの合併に伴い、NYSEに上場することを発表しました。 この取引の完了に伴い、合併後の企業はJoby Aviationの名を引き継いで株式公開が行われ、NYSEに普通株式を上場する予定です。

2020年2月、ジャミール一族の国際投資子会社であるJameel Investment Management Company(ジャミール・インベストメント・マネジメント・カンパニー、JIMCO)は、Joby Aviationへの資金調達ラウンドシリーズCへの参加を発表し、6億2,000万米ドルの追加投資を行いました。この投資は、Abdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)の戦略であるモビリティの未来に対する大型投資の一環となるものです。 

過去10年間で1,000回を超える試験飛行を実施してきたJoby Aviationは、空飛ぶタクシー業界において圧倒的な先発優位性を有しています。2020年、同社は米国連邦航空局(FAA)の電動垂直離着陸(eVTOL)機向け型式証明基準に、初めて合意しました。また同年、eVTOL機として初の米国空軍の耐空性承認を取得しました。

同社は、ガス排出のない4人乗り操縦機の可能性を切り開くことで、人々の移動手段に変革をもたらそうとしています。実現すれば、交通渋滞を眼下に眺めながらの、最大距離240㎞、最大時速320㎞の持続的飛行による移動が可能となります。

今回の合併により調達された資金は、型式証明取得や生産設備開発など、商業稼働を開始するにあたり必要な事業に充てられる予定です。

Joby Aviationの創設者でありCEOのジョーベン・ベバート氏は、以下のように述べています。

「この10年間、私たちはただ1つの課題に全力を注いできました。この市場のために実現しうる最高の技術の開発です。一方で、私たちの長期的なビジョンは常に、世界規模の乗客サービス事業を構築することにあります。何十億の人々が毎日1時間早く移動でき、かつこの大切な地球を守ることにも貢献できるやり方でです。今回の合併は、私たちが次の10年間へ目を向ける契機であり、また私たちが描くビジョンの実現のために必要なリソースをもたらすものでもあります。初めて顔を合わせた時から、Reinvent社とは有益で長期的なインパクトを世界にもたらすという根源的な望みを共有していることがわかりました。彼らを迎えることは、私たちにとってこの上ない喜びです。」

JIMCOが参加した資金調達ラウンドのシリーズCは、トヨタ自動車の主導で実施され、戦略的パートナーシップが形成されています。現在、トヨタの技術者がJobyに協力し、工場設計や製造工程開発などのプロジェクトに携わっています。

また、Joby Aviationは最近、Uber Technologies, Inc.(ウーバー・テクノロジーズ)との関係強化に関する条件を確定させ、実用化に向けた優位性をさらに高めています。この合意のもと、Jobyは両者のサービスを互いのアプリで統合させるとし、これにより将来的に顧客は陸と空のシームレスな複合輸送を利用した移動ができるようになります。またJobyは、Uberの空飛ぶタクシー市場向け部門であるUber Elevate(ウーバー・エレベート)の買収も行いました。この買収には、主要な人材に加え、Uberのデータを活用した複合輸送業務マネジメントや需要シミュレーションを扱う一連のソフトウェアツールが含まれます。

2020年12月、米空軍は、電動航空機の実用化促進のために立ち上げたAgility Prime(アジリティプライム)プログラムの一環として、Joby AviationにeVTOL機として初の耐空性承認を許可しました。

今月初め、Jobyは自社の航空機が米国連邦航空局のG-1認証基準に合意済みであることを発表しました。2020年に締結されたこの合意では、Jobyの機材が商業稼働の認証を受けるために満たすべき基準を定めています。Jobyはこのマイルストーンに到達した最初のeVTOL機であり、これは業界に重要な転機をもたらすと同時に、Joby社の機材認証に向けた明確な道筋を示しています。

トヨタと協力して設計が進められてきた45万平方フィートの機体製造施設は、今年後半からの建設開始が予定されています。