最近、Abdul Latif Jameel (アブドゥル・ラティフ・ジャミール)は中国の自動車業界参入から25周年を迎えました。その間、 Abdul Latif Jameel Motors China(アブドゥル・ラティフ・ジャミール・モータース・チャイナ)は、その品質と信頼性、カスタマーサービスを基盤とし、確固たる名声を築いてきました。

Abdul Latif Jameel Chinaのカントリーゼネラルマネージャーであるジョージ・ワン(王恒)に、ビジネスの成長、中国の自動車業界の状況と今後の展望について話を伺いました。

中国におけるAbdul Latif Jameel Motorsの略史を教えていただけますか?

近年は、中国でも外国の自動車企業は珍しくなくなりましたが、かつては違いました。25年前に中国で設立された当初、Abdul Latif Jameelはパイオニアでした。

当初の計画は、サウジアラビアなどの市場ですでに長年行ってきたのと同様に、トヨタ認定サービスステーション(TASS)を立ち上げ、中国にいるトヨタのお客様にアフターセールスサービスを提供するというものでした。中国初のAbdul Latif Jameel TASSは、1998年11月11日に成都で正式に開設され、2000年に第2号が青島に、2002年に第3号が武漢に設立されました。

2002年、トヨタ自動車(TMC)と第一汽車(FAWグループ)が北京の人民大会堂で重要な合意を交わし、長期を見据えた戦略的な提携パートナーシップを確立しました。2003年には折半合弁会社であるFAW-Toyota Marketing and Sales(一汽トヨタ自動車販売会社、FTMS)を設立し、中国でのトヨタの乗用車の流通と販売を開始しました。Abdul Latif Jameel Chinaは、トヨタの中国市場への投資の支援に好機を見出して自社オペレーションを拡大し、3拠点のTASSを、販売(sales)、サービス(service)、部品販売(spare parts)、調査(survey)の4分野を担当する「4S」のトヨタ販売店へと転換させ、中国のトヨタ車オーナー数の増加に対応してきました。

新たな車種が続々と市場に参入されるようになり、中国の自動車業界が本当の意味で飛躍し始めた時期でもありました。この25年間の驚異的な成長に乗じて、Abdul Latif Jameel Chinaは、楽山、銀川、蘭州の3ヶ所にFTMS販売店を設立し、さらには武漢にレクサスの販売店を、成都にもう1ヶ所の販売店(トヨタの別のJVパートナーであるGTMCと共同で)を開設しました。現在は、4省にわたり8拠点で事業を展開しています。

Abdul Latif Jameelの中国戦略はどのようなものですか?

販売店設立の方法はいくつかあります。現在までの戦略としては、トヨタ/レクサスにのみ特化しています。これまで、Buick (ビュイック)やVolkswagen(フォルクスワーゲン)などの他ブランドからの誘いを辞退して、Abdul Latif Jameel Motors Chinaはトヨタとの深い関係性と受賞に結実した取り組み、相互尊重を保持してきました。TMCは、ネットワーク拡大の支援者として信頼できる投資家のみを選定します。過去25年にわたる卓越した実績により、Abdul Latif Jameel Motors Chinaは、この市場で成長を続けるTMCとのパートナーシップを維持できる確固たる地位を確立しています。

あなたがAbdul Latif Jameelに参画したのはいつですか?

1995年、サウジアラビアでのマネジメント研修生としてAbdul Latif Jameelに入社しました。当時、この会社についてはほとんど知りませんでした。Abdul Latif JameelはMENAT(中東、北アフリカ、トルコ)地域ではすでに知られる存在でしたが、その他の地域ではまだそれほどではありませんでした。ただ、会長のモハメッド・ジャミール大英帝国上級勲爵士は、中国の可能性を予見し、すでに投資を計画していたのかもしれません。そのため、会社は中国から積極的にマネジメント研修生を採用していました。

私は、中国の第8次5ヶ年計画のある重要な研究開発プロジェクトを、プロジェクトリーダーとして完遂したところでした。このプロジェクトの成果が注目されたことで、1992年に米国を訪れる機会を得ました。そこで道路を走る車の多様性と数の多さに圧倒され、中国での自家用車市場の成長の多大な可能性に気がついたのです。キャリア構築の次のステップとして、すでに海外でMBAを取得する計画を立てていたため、Abdul Latif Jameelは私にとって願ってもみない機会でした。海外でビジネスマネジメントの勉強をしながら、同時に中国の自動車業界でキャリアをスタートするチャンスを得たのです。

今日の中国市場において、Abdul Latif Jameel Motorsとトヨタはどのような位置づけでしょうか?今後数年で、それはどのように発展していくでしょうか?

Abdul Latif Jameel ChinaがTASSとして1998年に事業を開始した際、それ以前にAbdul Latif Jameel Motors Saudi Arabiaで働いていた9名のタイ人技術者を採用し、品質保証の提供と初の中国人技術者向けのOJTトレーニングを実施しました。サウジアラビアのAbdul Latif Jameelから持ち込まれた価値観、すなわち品質の高さと信頼性、「ベスト・イン・タウン」の概念、長期的な戦略パートナーは、今日もAbdul Latif Jameel Chinaの名声を支える価値であり続けています。

2018年、カスタマーサービス賞の再受賞を祝うAbdul Latif Jameel Motors Chengduのトヨタの技術者たち。写真提供:© Abdul Latif Jameel

近年、中国では新エネルギー車(NEV)の成長に伴い多くのNEVメーカーが市場に参入しているため、ますます競争が激化しています。数社の新しい国産の中国NEVブランドの方が、製品開発サイクルが短い上、よりスタイリッシュでハイテクだとみなされており、これがトヨタにはさらなるプレッシャーとなっています。

Abdul Latif Jameel Motors Chinaは、長年にわたり品質、カスタマーサービスなどの面で数々の賞を受賞しています。その達成の秘訣は何でしょうか?

設立当初から、私たちはAbdul Latif Jameelの経営理念と価値観に従っています。それは、社員やお客様、ビジネスパートナー、コミュニティに敬意を払うこと、また継続的な改善(カイゼン)とイノベーション、エンパワーメントの実践です。

社員への敬意は、私たちの根幹的な価値観のひとつです。シニアマネジメントとして、自分たちにできないことを社員に求めることはありません。例えば、社員はサイトを訪れたお客様に挨拶をするよう求められています。ですから、毎週月曜日の午前8時には経営陣もどんな天気であろうがゲート前に立ち、社員たちに挨拶をしています。お客様に敬意を払うという点で、私たちはAbdul Latif Jameelの「お客様第一」の理念を誇りを持って実践しています。社員にはお客様の期待を超えることを奨励し、お客様が私たちの提供するサービスやサポートに満足するだけでなく、喜びを感じていただけるように取り組んでいます。カイゼン(改善)については、2023年末までに、Abdul Latif Jameel Motors China内で4,000人時超にかかわる1,300以上のカイゼン活動を実施しました。

この社員への敬意、「お客様第一」の理念、そして継続的な改善への取り組みが、これまでに受けてきた品質、カスタマーサービス、顧客ロイヤルティへの評価と受賞の基盤だと考えます。直近では、2024年1月に成都で開催されたFAW-Toyota Motor Sales(FTMS)の年次ディーラーカンファレンスで「卓越したディーラーグループ」賞を受賞しました。これはFTMSから与えられる最高の栄誉です。

Abdul Latif Jameel Motors China awarded Outstanding Dealer Group 2023 by Toyota 4 (2)
(左から右)Yinchuan ALJ Toyota Automobile Sales & Service Co., Ltd(銀川ALJ 豊田汽車販売服務有限公司)、ゼネラルマネージャー、付静氏、 ALJ (Wuhan) Toyota Automobile Sales & Service Co., Ltd(ALJ(武漢)豊田汽車販売服務有限公司)およびWuhan ALJ Lexus Automobile Sales & Service Co., Ltd.(武漢ALJレクサス汽車販売服務有限公司)、ゼネラルマネージャー、高晶氏、Abdul Latif Jameel Motors、中国担当オペレーションゼネラルマネージャー、周隽氏、Abdul Latif Jameel、モビリティ担当バイスプレジデント、ジャスミン・ウォン氏、Abdul Latif Jameel Motors、カントリーゼネラルマネージャー中国担当、ジョージ・ワン氏、Anlijie (Qingdao) Toyota Automobile Sales & Service Co., Ltd(安立傑(青島)豊田汽車販売服務有限公司)、ゼネラルマネージャー、朱世杰氏、Leshan ALJ Toyota Automobile Sales & Service Co., Ltd(楽山ALJ豊田汽車販売服務有限公司)、ゼネラルマネージャー、王兴桂氏

この賞は、中国全土で700を超えるFTMS提携のディーラー店舗を展開する100以上のディーラーグループから選出されます。車両、部品およびサービス販売、財務業績、顧客満足度およびロイヤルティなど、多岐にわたる基準において、Abdul Latif Jameel Motors Chinaの実績が評価されたものです。

2023年に中国のトヨタ販売店が経験した厳しい市場状況を考えると、これはとりわけ大きな喜びです。社員たちは困難に立ち向かい、お客様への取り組みを継続してきました。社員たちの勇気と賢明さ、そして熱心な業務への取り組みに心から感謝していますし、本部の皆さんからのガイダンスやサポートにも感謝したいと思います。

中国の顧客の多くは非常にロイヤルティが高いですが、お客様が何度もリピートしてくださる理由は何でしょうか?

お客様の中には、20年以上のお付き合いの方もいます。私たちから複数台の車を購入されたお客様もいます。友人や親戚に勧めてくださったり、私たちのサービスレベルをさらに向上させる取り組みを可能にする貴重なフィードバックを提供してくださるお客様もいます。

「お客様第一」の理念のおかげで、私たちはお客様方を友人のように扱いますし、お客様方も私たちのことを同様に感じていることを願っています。例えば、豪雨の後でお客様の車が浸水した際に、社員は躊躇なく水の中を進み、お客様を助け出しました。また別の時には、レクサスの販売員が車を包装してお客様の家まで届けました。おかげで、そのお客様は誕生日プレゼントとしてそれを娘さんに贈ることができました。また成都では、私たちは毎月「Abdul Latif Jameel カフェ」を開催しています。この日は夜までお店を開けておき、お客様は仕事を終えた後に車を持ち込むことができます。お客様がいる間に彼らの車にサービスを施すと同時に、お客様にはシェフが用意した温かくおいしい食事を提供します。この「カフェ」は、食事の品質の高さから地元のレストランアプリに特集もされました。

中国での成功を維持するために、優秀な人材の獲得と保持への投資はどのくらい重要だとお考えですか?

The Toyota WayAbdul Latif Jameel Chinaの成功は社員の熱意にかかっています。社員全員が敬意と友好、配慮をもった待遇を受けるだけでなく、Abdul Latif Jameel内でのキャリア開発の観点でも十分に尊重されています。体系的なトレーニングを整備し、彼らのキャリア形成を支援すると同時に、新規従業員にはAbdul Latif Jameelの哲学を知り、どのような行動が求められているかを理解するためのトレーニングを提供しています。

これには、ジャミール・プリンシプル、トヨタ・ウェイ、具体的な業務開始前およびOJTトレーニングなどがあります。

社員は、彼らのメンターとしての役割を持つ直属のマネージャーから、常にガイダンスとフィードバックを得られます。販売員、サービスアドバイザー、技術者、販売店マネジメントは、OEMと主要販売店からプロフェッショナルなトレーニングを受けられます。

欠員が出た際には、常に可能な限り内部からの移動や昇進を検討します。Abdul Latif Jameel Chinaの現在の経営陣は、全員がそのようにして成長してきました。25年の相互尊重、信頼、責任感に基づき、社員たちはまさに「家族」として扱われています。

中国市場は、中東や欧州の市場とはどのように異なりますか?

中国は世界最大の自動車市場であり、乗用車の販売台数は2023年に2,200万台に達しました。NEV市場はきわめて急速に発展しており、2023年には販売浸透率は36%、対前年度比で36%増となりました。

中国ブランド、特に新規参入ブランドはNEV分野に非常に強く、一方で従来の国際ブランドは少なくとも現在はNEVのプロポジションが弱いため、中国ブランドの市場シェアが拡大して国際ブランドを凌駕しつつあります。

中国は大きな国です。960万平方キロメートルの国土に広がる34の省と多数の都市に、14億の人口が存在します。それぞれの省や都市に独自の規制があります。例えば上海では、内燃機関(ICE)の登録数には制限がありますが、NEVにはそれがないため、上海でのNEVの市場シェアは49%まで上昇しています。

中国以外のブランドが中国で成功するのはどのくらい難しいですか?

他の中国以外のブランドと同様、トヨタ/レクサスは縮小するICE市場にネガティブな影響を受けています。現状、これらのブランドのNEVのポートフォリオがそこまで強くないからです。そのため、市場競争は激しさを増し、価格に対する下落圧力も高まっています。短期的には、販売代理店は成功を維持するためにディーラーを援助する必要があります。長期的には、非中国ブランドがNEVのプロポジションの開発を加速化させ、この市場で追いついていくでしょう。例えば、トヨタはすでに電気自動車の研究開発センターを常熟に設立しており、これは市場でのより長期的な成功を導くはずです。

中国のモビリティ市場において、変化を加速させるトレンドや開発は何でしょうか?

2023年、中国のプラグインハイブリッド車(PHEV)市場は83%、一方で電気自動車(EV)は21%拡大しました。これは、EVよりPHEVを選ぶ顧客の数の方が増えていることを示唆しています。スマートカーや自動運転車は、運転のエクスペリエンスを一新し、非常に注目されるセールスポイントとなっています。今後数年で、この市場がさらなる成長を遂げるだろうことを確信しています。

電気自動車の分野において、例えばインフラや政府支援などの観点から、市場はさらなる成長への準備ができているでしょうか?

中国政府はNEVに対し、補助金と、充電ポイントの整備などのインフラの両面で多大な支援を行っています。ただし、NEVへの補助金は2023年に終了し、自動車取得税控除は2023年から減額され、2027年には完全に停止されます。

代わりに、NEVにおける動きは政府による支援から顧客選好へとシフトしています。特にインテリジェント機能など、NEVの優れたカスタマー・エクスペリエンスが続く限り、彼らがICEに戻ってくることはないでしょう。NEVは成長を続け、またPHEVには走行距離に関する不安がないため、EVよりも早く成長すると思われます。

Abdul Latif Jameel Motorの今後の成長に関してはどんな計画がありますか?

今後の成長に向けての準備は万端です!中国での25年にわたる経験と、その間に培ったAbdul Latif Jameel Chinaの確固たる名声、27万人以上の(そしてさらに増え続けている)お客様からの信頼、プロフェッショナルで熱意と忠誠心のある中国チームとともに、私たちはトヨタおよびレクサスとのパートナーシップを継続し、新たな事業機会を模索して、次の25年間にさらなる飛躍を遂げます。

中国の自動車市場の未来には何が待ち受けていますか?

2023年、自動車の合計販売台数は3,000万台(520万台の輸出を含む)を超えました。国内、国際市場ともにさらなる成長の余地があります。近い将来に4,000万台の販売を予測する専門家もいます。

同時に、市場ではさらなる統合が予想されます。NEV市場にはおよそ90の中国ブランドが存在し、競争は熾烈です。例えば、Wima(ウィーマ)とSkyline(スカイライン)は昨年経営破綻し、Hiphi(ハイファイ)は2023年初めに製造と販売を停止しました。この傾向は続き、真に実力のあるブランドのみが長期的に生き残っていくでしょう。

Abdul Latif Jameelに関しては、中国国外での中国ブランドとのパートナーシップがすでに始まっています。MG Motor(MGモーター、SAIC傘下)の販売代理店としてJameel Motors Morocco(ジャミール・モータース・モロッコ)が、GAC Motor(GACモーター)およびトルコでのBYDの販売代理店としてJameel Motors Egypt(ジャミール・モータース・エジプト)が指名されており、見通しはきわめて良好です。