都市は、社会における愛憎関係を体現しています。都市とは、社会からの贈り物であると同時に、社会悪を生み出す場所とも言えます。

ファディ・ジャミール(アブドゥル・ラティフ・ジャミール副社長兼副会長)

都市は、私たちの経済をこれまでにない成長へと駆り立て、生活水準を新たなレベルへ引き上げる原動力となります。また、文化のるつぼや成熟したアイデアを生み出す源となり、ビジネスや芸術に変革をもたらしてきました。そして、世界への発信地、魅力的な観光地、そして何十億人もの人生が日々繰り広げられる舞台でもあるのです。

それと同時に今日、都市には深刻な問題が生じています。人口密度が許容範囲を超えたことによる人口過密や、人と人との距離が近くなり衛生状態が悪化したことによる長期的な公衆衛生の問題。産業化が進み交通量が増加したことによる大気汚染や、周期的に発生する深刻な失業率と景気後退といった問題の他、価値観やリソースをめぐるコミュニティ内の不和といった社会的機能不全、時には紛争さえ起こっています。

しかしながら、そのような状況下でも都市が常に発揮してきた力と言えば、回復力です。

現在、世界人口の半数以上(42億人)が都市に居住しています。これは、都市居住者が人口の3分の1以下(7億5,100万人)だった1950年と比べて増えています。都市居住者の割合は、次の世代では人口の3分の2にまで増加すると予測され、増加傾向は確実に続いています。[1]実際に、ルアンダ(アンゴラ)、ハイデラバード(インド)、成都(中国)など、2030年までに「巨大都市」(人口1,000万人以上)のリストにさらに10都市が加わると予想されています。[2]

Largest population urban centers worldwide 2035

こうした状況を背景に、都市に対する私たちの期待は目まぐるしく変化しています。歴史がこれほど速いペースで変化を遂げたことはありません。テクノロジーによってもたらされる機会と、環境への配慮に対するプレッシャーにより、未来が現実となる速度が飛躍的に加速しています。21世紀に入り、社会の構成要素、つまり私たちの生き方、働き方、移動の方法、そして生活力を高める方法に対する姿勢は、一連の変化を余儀なくさせられてきました。私たちが望むことはいったい何なのか。通勤時間を減らして家族と過ごす時間を増やしたい、働く日数を減らしてフレキシブルな働き方をしたい、緑の多い環境を楽しみながら、自分の家も持ちたい。そして、望むことというよりも必要なこととして、汚染を削減すること、きれいな空気を吸うこと、子供や孫の世代のニーズを考えることが挙げられます。

今日私たちが住む世界各地の都市を、より良い生活を築くための実験台として考えてみましょう。この実験は、多様な結果をもたらし、人間の介入によって私たちの理想がどのように促進されるのか、あるいは妨げられるのかを明らかにします。

すべての疑問が解決したわけではありませんが、確かなことが1つあります。

今後どのような未来が望まれるかと言えば、それはスマートであること。

よりスマート、より高速、よりクリーン、そしてより幸せに

スマートフォンはその名前が示すように、スマートシティ革命の要です。この多機能デバイスであるスマートフォンは、大手コンサルティング会社であるMcKinseyの「都市の鍵」[3]という言葉が表しているように、安全性、モビリティ、仕事、健康、余暇に関するリアルタイムの情報を何百万人もの人々に直接提供します。

新しい都市をゼロから建設できる幸運な都市設計者はほぼいません。ほとんどの都市には既存のインフラがあるからです。私たちは、過去の経験と失敗に基づいて、都市の再開発を計画します。「スマートシティ」のデータ収集能力によって、正しい意思決定が可能になります。つまり、生活様式の変化に対応し生活の質を目に見える形で向上させる、人のニーズを重視した長期的な戦略を立てることができるのです。

都市全体が完全につながったスマートシティは、3つの基盤に依存します。1つ目は、相互接続性です。街路および地区ごとにライブ情報を収集するために必要なスマートフォンの普及率と都市全体のセンサー数が必要となります。2つ目は、データをユーザーにとって意味のあるアラートに変換できる広範囲な対話型アプリケーションです。3つ目は、言うまでもなく、都市全体での普及です。一般市民、市の職員、企業が恒常的にこのサービスを利用する必要があります。

この3つをシームレスに統合することで、渋滞を避けての移動や効率的なルート選び、エネルギーや水の消費量の削減、公共システムのストレス軽減といったことが可能になります。

研究によると、これら3つを効果的に展開した場合、スマートテクノロジーには次のような可能性があることが示唆されています。

  • モビリティの合理化。スマートシティは、発展途上都市よりも通勤時間を15~20%、1日30分短縮できると推定されています。[4]デジタルサイネージ(電子看板)とモバイルアプリを使用して、公共機関の運行状況や駐車場の空き状況といった情報を送信できます。
  • 健康増進。アプリは、モビリティとライフスタイルの効率化によって、汚染の削減に貢献します。また、慢性疾患を遠隔でモニターし、人口動態による影響を分析して、より的確な健康アドバイスを送ることもできます。障害調整生存年数(DALY)は8%~15%減少すると推定されています。
  • 公共の安全を高める。リアルタイムの犯罪マッピング、データ駆動型の警察取り締まり、スマート監視、効率的な緊急車両手配により、死亡者数を8%~10%、犯罪を30%~40%削減し、市民に安心感を与えることができます。
  • 環境を救う。自動化されたビルシステム、渋滞対策アプリ、ダイナミックな電力価格により、有害排出物質を10%~15%削減できる可能性があります。大気質センサーで汚染源を特定する他、モニターでは水の消費量と無駄を監視して必要な水量を削減します。リサイクルの面では、ごみ処理の有料制度により、年間1人あたり30~130キログラムの廃棄物を削減できます。

ドライバーレスな未来に向けて都市を再考する

自動運転車によるインパクトは革命的です。独立系技術シンクタンクのRethinkXは、運転手のいない自動運転車が規制承認されたら、10年以内に、米国における走行距離の95%は自動運転EV(電気自動車)による走行距離で占められるだろうと主張しています。

自動運転車を採用する企業が米国の車両在庫の約60%を占めることになり、米国における従来の乗用車の数は、今から2030年までの間に2億4,700万台から4,400万台にまで減少する[5]と予想されています。

Transport as a Service speed of adoption

車よりも人にフォーカスした街路が誕生し、都市の風景が一新されます。

現在、多くの都市では、道路のスペースの60%~90%を車道が占め、歩行者は残りの狭いエリアを使用しています。[6]

しかし、車両の台数が減れば、駐車場も少なくて済みます。OECDの国際輸送フォーラム(International Transport Forum: ITF)によるレポートでは、車のアイドリング運転は95%から5%に減ると示唆されました。[7]

実際、自動運転車によって、2050年までに米国だけで、駐車場に必要な土地が約147.6億km² 削減される可能性があります。[8]

はたして未来の道路は、「建物から約9mにわたるスペースをアクティビティに使える屋内または屋外の公共エリアに変える」ことのできるスペースとなるでしょうか?[9] 建築家や都市設計者の中には、そう考えている人もいます。

好循環は悪循環を凌駕する

極めて重要なのは、都市の再開発が健全な財政を生み出す点です。それに、お金の話となると、意思決定者も耳を傾けてくれます。

アナリストは、スマートシティは2025年までに2.46兆米ドル相当の成長機会を生み出すと計算しています。[10]これは成長が急激に起こることを意味します。サービスのデジタル化とデータ分析を優先する都市は、スマート化のプロセスが始まると同時にテクノロジー支出が急増することに気付くでしょう。

こうした人目を惹くデータがすでに示しているように、スマートシティへと移行する現在の動きは、それほど驚くようなものにはならないはずです。とは言っても、21世紀の都市の形を最終的に決定するのは、もちろん政府です。

欧州委員会(EC)は、都市生活の向上を目標に都市、産業、中小企業、銀行、そして研究者を結びつけ、スマートシティとコミュニティのためのイノベーションパートナーシップ(EIP-SCC)をコーディネートしています。

持続可能なモビリティや建物、知識の共有、政策と計画などについて重点的に取り組んでいる他、エネルギー/情報/技術/輸送の統合インフラにも取り組んでいます。EIP-SCCが継続的に成功していること、またECが同プロジェクトに信頼を寄せていることの証として、まもなくEIP-SCCとスマートシティ情報システム(SCIS)のデータ交換が統合され、包括的なスマートシティマーケットプレイスとして再配置されます。

「スマートシティマーケットプレイスは、あらゆる規模の都市や町がより持続可能な都市エネルギーシステムを実現できるよう支援します。スマートシティプロジェクトを成功に導くための探索、形成、セットアップに必要なすべての情報をまとめて提供します」と、EC政策責任者のゲオルク・ホーベン氏は説明します。[11]

もちろん、ECだけではありません。世界各地の未来志向の政府が、将来に適した都市設計を行い、ライバルたちを凌駕しつつあります。

都市景観を変革する重要な政策

Shanghai Natural History Museum
息をのむほど美しい上海自然史博物館。写真提供:© James and Connor Steinkamp

デンマークのコペンハーゲンは、1962年、中世にはメインストリートであったストロゲット通りの車両交通を禁止するという、斬新な政策を打ち出した先駆者です。この歩行者天国プロジェクトはその後も数十年にわたり継続され、今日、コペンハーゲンには約96,000m²(33%は道路、67%は公共スペース)の車両侵入禁止スペースがあります。[12]また市当局は、駐車スペースの制限、市中心部につながる主要ルートのレーン数削減、通過交通の制限、列車/バス/自転車レーンの開発など、特別な交通管理の戦略を考案しました。現在、コペンハーゲンの全移動手段のうち、80%が徒歩、14%が自転車であると推定されています。商業的にもプロジェクトの成功は明らかで、コペンハーゲンの「ストップ&ステイ」アクティビティは現在、1960年代の約4倍に増えています。

その他の地域でも、革新的な考えが実を結んでいます。中国では、高層都市上海が地下建設という新しい方向に舵を切りました。金融街近くの公園にある上海自然史博物館は、地下に建設されています。壁はガラス張りで自然光が降り注ぎ、中庭のプールで涼をとれば、環境にも配慮できます。

ロサンゼルスでは、7,000kmを超える距離の街路に設置されたナトリウム蒸気の街灯を、環境に優しいLED街灯に変えました。LEDは効率が良いだけではありません。同時にインテリジェントでもあり、性能や故障の問題を市の本部に直接伝えます。将来的には、事故や事件に即座に対応するため明るさを調整できるようになります。

オランダでは、アイントホーフェン市の計画担当者が、長年にわたって自転車でのスムーズな移動を妨げていた交差点での渋滞を解消するために、ユニークな計画を考案しました。その結果、800万米ドルを費やし、1,000トンの鋼鉄製の高架式自転車専用レーン「ホーフェンリング」が2012年に完成しました。また、利用者がホーフェンリングに上る際の傾斜が緩やかになるように、その下の道路は低く設計されました。

一方、ロンドンでは、最近の報告によると、違法な汚染レベルにさらされた人の数は、2016年から94%減少しています。[13]報告書によると、2017年初めから2020年初めにかけて、ロンドン中心部の道路沿いで発生する二酸化窒素(NO2)は44%減少しました。

これは、ロンドン市内に進入する高排出ガス車両に対する税金、低排出バスの導入、ディーゼルタクシーを禁止する新法、自転車用レーンの保護強化などの政策が功を奏したものです。

Air Pollution London

さらに英国北部では、ヨーク市の計画担当者が、英国最大のゼロカーボン住宅プロジェクトの計画を発表しました。このプロジェクトでは、環状道路ゾーン内の8か所に600戸の住宅が建設されます。敷地には木が植えられ、住民用の菜園も設けられますが、車は入れません。各住宅には、ソーラーパネル、自転車置き場、充電ポイントが備えられ、カーゴバイク(運搬用自転車)をレンタルできます。このプランが人気を得たら、英国内のモデルケースとして用いることができます。

また、ドバイも、アラブ首長国連邦における最初のゼロ収支エネルギー開発である「持続可能な都市」によって、未来都市へのビジョンを示しています。ヴィラ500棟、アパートメント89棟からなる46ヘクタールのコミュニティには、EV充電ポイント、天然バイオドーム温室11棟、ファンとパッドを備えたパッシブ冷却方式を利用した有機栽培農場と個別の菜園農場、全家屋にソーラーパネル、家屋内の熱利得を低減する紫外線反射塗料を採用する他、パピルスをバイオフィルターとして使用したグレーウォーター(生活排水)ブラックウォーター(下水)への排水分別による排水の再利用を行っています。

このような進歩的なプロジェクトに対して技術的に対応可能かどうか、また、一般市民がどこまで関心を持っているかは、世界各地で異なります。「スマートシティ」という概念をヒントに、McKinseyは、世界の50の主要都市圏で、現在のスマートステータスを評価しました。[14]

アムステルダム、ニューヨーク、ソウル、シンガポール、ストックホルムは、センサーの設置と通信ネットワークで上位にランクされています。しかし、こうした先駆的な都市でさえ、十分に洗練された技術基盤を確立するまでに、まだ3分の1程度の道のりが残されています。ヨーロッパ、北米、中国、東アジアの都市、および中東地域の一部の都市では、強力な技術基盤が確立されていますが、インド、アフリカ、ラテンアメリカの都市は後れを取っており、特にコストのかかるセンサー設置作業が課題となっています。

スマートコンセプトに対する一般市民の認識と受容のレベルを評価すると、かなり異なる状況が見てとれます。アジアの都市では、使用と満足度が他の都市を大きく上回っている一方、ヨーロッパの都市では抵抗感が高くなっています。

「若者世代はデジタル化を受け入れやすくデジタル化に対する期待値も高いため、好意的な普及状況や認識は、その都市に若者世代がいるかどうかに関連しているようだ」[15]と、McKinseyの報告書は指摘しています。

失敗した場合のコストを考えると、都市の将来を形作る意思決定には、法レベルでの検討が必要です。

南東ヨーロッパの北マケドニアの州都スコピエは、ヨーロッパで最も汚染された首都と言われています。2018年、スコピエの汚染物質の濃度がEUの限度値を超えた回数は、合計202日を記録しました。この問題は、国内の暖房用木材への過度の依存、EUの排出基準を満たさない古い車両、限られた公共交通機関によって引き起こされるもので、スコピエでは毎年4,000人の早期死亡の原因となっていると推定されています。[16]

スコピエのスモッグの中に薄っすらと見える建築中のビル 写真提供:Getty Images

また、バングラデシュの首都ダッカでは、広い範囲で貧困と都市設計の問題が存在し、定期的な浸水や下水道の氾濫、病気の流行につながっています。1km²あたり44,500人を超える人口を擁するダッカは、世界で最も人口密度の高い都市です。[17]住民の約40%がスラム居住者と分類されており、医療資源は人口をカバーできていません。

都市農園やスカイガーデン、ドローン通勤、復元された湿地帯やソーラービルの風景など、建築家や都市設計者によるユートピアの想像が広がる一方で、それとは対照的な厳しい現実が突き付けられます。

Paris 2050
2050年のパリ – 芸術的な夢なのか、現実的な夢なのか? 画像提供: © Vincent Callebaut Architectures Paris

都市は慎重に開発、管理されなければ、社会的にも環境的にもジレンマの塊となることは明らかです。それでも都市は、近い将来も引き続き文明を生み出す原点となるに違いありません。

パンデミックが都市規模の創造的思考を促す

最近のパンデミックによって、未来の都市をより健康で公平な場所にするために私たちの生活を変える必要があることがはっきりしました。

世界経済フォーラム(WEF)は、世界では現在「社会で最も脆弱な人々が特に、医療福祉インフラの不整備、また予防医学のメカニズムが不十分であることの結果」に直面していると言います。[18]

車への過度の依存、不健康な食生活、悪い環境条件により荒廃した都市部の生活スタイルとあわせて、パンデミックの苦しみの根底にあるのは不平等だと、WEFは指摘します。しかしながら、こうした要因は目新しいものではなく、2030年までに非感染性疾患の増加が国内の疾病の70%を占める可能性があると言われるインドなど、発展途上経済でも同様に見受けられます。[19]

パンデミックが何らかの役に立っているとしたら、それは、多くの都市に影響を与える2つの問題、すなわち「不平等」と「健康」の問題に私たちが注目するきっかけとなったことです。WEFは、世界の各地域がそれぞれ直面しているプレッシャーとリソースに応じて、緩和戦略には次の点を含めるよう提案しています。[20]

  • 衛生システムの改善
  • 運動を促す歩行者ルートの増設
  • 健康的なライフスタイルを実現する一人ひとりに合わせた診断
  • 垂直農法で育てられた果物と野菜で目指す栄養価の高い、地産地消の食事
  • 移動式公衆シャワーなどの現地の自治体の介入
  • 基本的な生活水準を確保するための所得保障政策

このような対策にはコストがかかり、簡単な計画では実現できません。国や地方自治体、民間の開発業者、投資家、多国間組織の協力が必要です。

発展途上国は、アフリカ開発銀行やアジア開発銀行のような多国間開発金融機関(MDFI)などのイニシアティブに頼るかもしれません。これらの組織は、大がかりな回復計画を支える国家首脳と民間セクターのリーダーをつなぐ影響力を持っており、長期的な都市インフラ開発戦略のための資金を協力して確保します。

より良い都市でより良い生活を

都市は、そこに人が暮らしてこそ成り立ちます。私は自分が、新しい生活様式、仕事、そして未来を支えるソリューションに貢献できる立場であることを光栄に思います。生活インフラに投資する投資家として、アブドゥル・ラティフ・ジャミールではビジネス面で貢献するとともに、私の家族によるグローバル慈善活動であるコミュニティ・ジャミールでも尽力してまいりました。

私たちは皆、健康な生活を送る権利を持っています。そのため、2018年にコミュニティ・ジャミールは、医療における機械学習のためのアブドゥル・ラティフ・ジャミールクリニック(ジャミールクリニック)をMITに共同設立しました。ジャミールクリニックは、機械学習、生物学、化学、臨床科学において重要な研究を行っています。ジャミールクリニックは、同グループの他の研究所の成果を補完しています。たとえば、インペリアル・カレッジ・ロンドンにあるアブドゥル・ラティフ・ジャミール疾病および非常事態分析研究所(ジャミール研究所)ではAIデータ分析により、世界中の伝染病や公衆衛生の脅威を特定し、予防する支援を行っています。また、アブドゥル・ラティフ・ジャミール水・食料システム研究所(J-WAFS)では、世界の水と食料システムの緊急課題に取り組むために、研究、イノベーション、コラボレーションを促進し、真に持続可能な都市の核心となるべき問題に取り組んでいます。

2020年には、アブドゥル・ラティフ・ジャミール・ヘルスを創設することにより、世界の医療を改善するという当社のコミットメントを表明。世界中の発展途上市場で必要とされる医療ニーズに対応しながら、最新医療へのアクセスを促進しました。これは、CyberdyneCellspectといった日本企業など、世界中の医療技術企業と結んでいる既存のパートナーシップの上に成り立っており、医療アクセスの向上に尽力しています。

当社は、環境に優しい輸送ソリューションにも積極的に取り組んでまいりました。これからの数十年で、どのような都市規模のモビリティが登場するのか想像し楽しみにしています。

当社は、サウジアラビアの水素自動車のパイロットプロジェクトにて、トヨタの水素自動車MIRAIの試験車両を提供するという重要な役割を果たしました。米国を本拠地とするEVイノベーターのRIVIANには当初から投資を行いました。また、カリフォルニアの空飛ぶタクシーの先駆者であるJoby Aviationにも投資し、同社は世界で最も資金力を持つエアタクシーのスタートアップ会社となりました。

もちろん、最大の課題の1つは、都市に電力を供給するためのクリーンエネルギーを生み出すことです。そのため、2015年に再生可能エネルギー専門企業であるFotowatio Renewable Ventures(FRV)を買収し、現在18か国でさまざまな太陽光風力発電プロジェクトを展開しています。

同様に、当社の画期的なAlmar Water Solutionsは、人口増加による水需要に対応するため、ケニアのモンバサ、サウジアラビアのアル・シュカイク、バーレーンのムハラックにおいてプロジェクトを行っています。直近では、エジプトのRidgewood Groupを買収したことにより、エジプト全土で58の海水淡水化プラントを取得し、Almarはポートフォリオをさらに拡大しました。

変化を推進する投資

上述の投資やその他多くの同様の投資は、事業や技術への投資に対する当社のコミットメントを示しています。そして、そうした事業や技術は、環境、社会またはガバナンスのパフォーマンスだけでなく、財務実績にも基づく利益を生み出しています。また、いわゆるESG(環境、社会、ガバナンス)投資(「持続可能な投資」とも呼ばれる)に対して世界的に関心が高まっていることの表れでもあり、これにより都市の再開発に役立つ新しい技術やアイデアの開発に配当を支払える可能性があります。

PwCの調査では、ESG投資ファンドは欧州のファンドセクターのシェアを2025年までに15%から57%に増加[21]させる可能性があると予測しています。これは、企業にとって大きな影響があるかもしれません。資本を持続可能な活動に振り分けること、また環境への影響から従業員の処遇まですべてに透明性を持たせることが必須になるためです。

これは機関投資家の投資パターンを変えるだけにとどまりません。アブドゥル・ラティフ・ジャミールのような民間企業は、重要なカタリストとなり、ビジネスと政府の投資を気候変動と闘うソリューション、そして、より持続可能な経済とより成功している都市への移行を促進するソリューションに導くことができると信じています。アブドゥル・ラティフ・ジャミールもメンバーとなっている、Clean, Renewable and Environmental Opportunities Syndicate(CREO Syndicate)のような組織は、すでにグローバルなESG市場全体の態勢を変え、民間投資の機会を模索する支援をしています。

これは、私たちの都市が今後何世代にもわたって産業と文化の中心地であり続けるための、大胆なイニシアチブです。

しかし、文明として機能できなかった場合はどうなるでしょうか。

すでにパンデミック直後に、より安全で持続可能なライフスタイルを求めて、人々が都市から人の少ない地域に逃避しているという証拠があります。[22]結果として、都市を経済のカタリストとして復活させたいのであれば、想像力を広げて優先事項を変える必要があるかもしれません。

また、政策立案者が国民総幸福量指数によって物事を決定するアジアのブータンからインスピレーションを得るのも一案です。[23]あるいは、アイスランドやニュージーランドといった先見性のある国のように、ウィルビーイング・エコノミー・アライアンスの推奨事項に従うことがよいのかもしれません。[24]

何よりも、21世紀に向けて都市を再開発する際、都市は人のためにある存在で、その逆ではないということを忘れてはなりません。。

[1] https://www.weforum.org/agenda/2019/02/10-cities-are-predicted-to-gain-megacity-status-by-2030/

[2] https://www.un.org/en/development/desa/population/publications/pdf/urbanization/the_worlds_cities_in_2018_data_booklet.pdf

[3] https://www.mckinsey.com/industries/capital-projects-and-infrastructure/our-insights/smart-cities-digital-solutions-for-a-more-livable-future

[4] https://www.mckinsey.com/industries/capital-projects-and-infrastructure/our-insights/smart-cities-digital-solutions-for-a-more-livable-future

[5] https://www.rethinkx.com/press-release/2017/5/3/new-report-due-to-major-transportation-disruption-95-of-us-car-miles-will-be-traveled-in-self-driving-electric-shared-vehicles-by-2030#:~:text=95%20percent%20of%20U.S.%20passenger,as%20a%20Service%20(TaaS).&text=As%20fewer%20cars%20travel%20more,to%2044%20million%20in%202030.

[6] https://www.hok.com/ideas/research/autonomous-vehicles-urban-planning/

[7] https://www.wbcsd.org/Overview/Panorama/Articles/Should-we-try-to-make-parking-spaces-extinct

[8] https://www.mckinsey.com/industries/automotive-and-assembly/our-insights/ten-ways-autonomous-driving-could-redefine-the-automotive-world

[9] https://www.hok.com/ideas/research/autonomous-vehicles-urban-planning/

[10] https://www.smartcitiesworld.net/news/smart-cities-predicted-to-create-growth-opportunities-worth-246-trillion-by-2025-5714

[11] https://www.smartcitiesworld.net/news/news/european-commission-launches-smart-cities-marketplace-5720

[12] https://ec.europa.eu/environment/pubs/pdf/streets_people.pdf

[13] https://www.london.gov.uk/sites/default/files/air_quality_in_london_2016-2020_october2020final.pdf

[14] mckinsey.com/smartcities

[15] https://www.mckinsey.com/industries/capital-projects-and-infrastructure/our-insights/smart-cities-digital-solutions-for-a-more-livable-future

[16] https://www.bbc.com/future/article/20200701-skopje-north-macedonia-the-most-polluted-city-in-europe

[17] https://www.theguardian.com/cities/2018/mar/21/people-pouring-dhaka-bursting-sewers-overpopulation-bangladesh

[18] https://www.weforum.org/agenda/2020/08/healthy-cities-communities-post-covid19-great-reset-healthcare-disease-risk/

[19] http://www3.weforum.org/docs/WEF_Future_of_Consumption_Fast-Growth_Consumers_markets_India_report_2019.pdf

[20] http://www3.weforum.org/docs/WEF_Future_of_Consumption_Fast-Growth_Consumers_markets_India_report_2019.pdf

[21] https://www.pwc.lu/en/sustainable-finance/docs/pwc-esg-report-the-growth-opportunity-of-the-century.pdf

[22] https://www.theguardian.com/business/2020/oct/03/green-and-pleasant-beats-urban-buzz-as-families-opt-to-leave-cities?

[23] http://www.gnhcentrebhutan.org/what-is-gnh/gnh-happiness-index/

[24] https://wellbeingeconomy.org/wego