Abdul Latif Jameelが主要株主を務めるインド電気自動車(EV)市場のパイオニア、Greaves Electric Mobilityは、インド最大級の国際モーターショー「オートエキスポ」で、電動モビリティの未来を示した。電動二輪・三輪車のコンセプトモデル6台を発表し、最新デザインのインスピレーションやAmpereの新たなブランドアイデンティティに触れながら、野心的な事業成長計画を明らかにした。

Abdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)が主要な少数株主であるインドの電気自動車(EV)メーカー、Greaves Electric Mobility(グリーブス・エレクトリック・モビリティ)は、今月インドで開催された国際モーターショー「オートエキスポ2023」で、電動二輪・三輪車の最新ラインアップを発表し、出展者の中でも一際大きな注目を集めました。

オートエキスポは、インド最大のモーターショーで、ヨーロッパの「ジュネーブモーターショー」の南アジア版に相当するものです。最先端のプロダクトや技術、コンセプトモデルを通じて自動車業界の発展や動向を知ることができます。オートエキスポは2023年1月13日~18日にウッタル・プラデーシュ州グレーター・ノイダにあるインドエキスポマートで開催され、国内外から48社の自動車メーカーが集結しました。

新型コロナウイルス感染症が発生する直前の2020年2月に開催された前回のオートエキスポには、約60万8,000人が来場しました。今回のオートエキスポ2023の来場数は63万6,000人超で過去最高を記録し、新型モデル計82台がインドデビューやグローバルデビューを飾りました。

今年のオートエキスポでは、世界の大手自動車メーカーの最新モデルだけでなく、サステナブルなモビリティが大きなテーマのひとつになりました。Greaves Cotton(グリーブス・コットン)傘下にあるGreaves Electric Mobilityは、この分野におけるインドのパイオニア的存在です。Greaves Cottonの163年以上にわたる揺るぎない歴史と伝統に基づいて設立されたGreaves Electric Mobilityは、インドの電動モビリティ化を加速的に推進し、サステナビリティの未来を切り拓くことを企業理念として掲げています。

すでに電動二輪・三輪車分野で国内有数の電動モビリティ企業としての地位を確立しており、EVへの関心が高い国内の層に向けて、よりクリーンで燃費の良いラインアップを低価格で提供しています。同社は、2022年度12月時点(丸1年)で年初来の小売販売台数が70,390台(前年同期比398%)に達するなど、国内で急成長中のEVブランドのひとつです。Ampere(アンペア)ブランド下で販売されている電動二輪車は、2022年度12月時点(丸1年)で年初来の市場占有率が13%に達しています。

成長市場

S&P Global Mobility(S&Pグローバル・モビリティ)の統計によると、インドは2022年に乗用車を含む軽自動車の市場規模が日本を抜いて世界第3位になり、業界全体の販売台数は推定23%増の440万台に達しました。これには、全自動車の販売台数の80%以上を占める、世界最大の二輪車・三輪車の販売台数も含まれます[1]

二輪車は個人での使用が一般的ですが、いわゆる「ラストワンマイル」配送業者にも広く利用されています。一方、三輪車はほとんど商業用に購入され、都市圏でのヒトやモノの移動に利用されています。

業界データによると、電動二輪車は、2022/23年度の最初の9か月間におけるEV販売台数の62%を占めており、インドのEV売上チャートを牽引しています。アナリストの予想では、2023年3月末までに電動スクーターがインドのスクーター/バイクの販売総数の5%超を占めると言われています[2]。同様に、電動三輪車市場も力強い成長を見せています。2021年における電動三輪車の世界市場評価額は7億7,000万米ドルでした。約7%の年平均成長率で、2031年には15億米ドルに達することが予測されています[3]。一方、2022年11月に発行された世界経済フォーラムの報告書には「インドではラストワンマイル配送と都市圏の配送目的で電動二輪・三輪車の導入化が進んでおり、完全電動化を果たす最初の市場セグメントになるだろう」と記述されています[4]

2022年5月、インドでは電動リキシャを中心に、電動三輪車の販売台数が初めて内燃エンジン(ICE)搭載車を超えました。電動二輪車・三輪車市場は、今後3~5年でインド政府の目標に沿ってさらに拡大していくことが予測されています。

電動化を推進するインド政府

自動車市場の統合の流れとは裏腹に、インド国内には現在、電動二輪・三輪車の認定メーカーが約45社存在しており、累計販売台数100万台という驚異的な数字を叩き出しています[5]。しかし、インドの二輪・三輪車の合計台数が2億5,000万台であることを考えると、まだ持続的成長の余地は大いに残されていると言えるでしょう。

「電動二輪・三輪車は、インドの都市圏において、ヒトやモノを運ぶ低価格なゼロエミッションモビリティを実現します。インド政府は、電動モビリティ市場を拡大させるために画期的な政策や旗艦戦略を打ち出しています」とインド政府の公共政策シンクタンク、NITI Aayog(ニティ・アーヨグ)でアドバイザーを務めるサデンデュ・J・シンハ氏は述べています[6]

電動二輪・三輪車の人気の背景には、インド政府がEV生産早期普及策第2フェーズとして打ち出している「FAME II」助成金プログラムがあります。このプログラムは、ICE搭載車に対する価格競争力を高め、ネットゼロ目標(二酸化炭素排出量実質ゼロ)の公約を果たし、世界最悪レベルの都市公害を軽減する目的で設けられました。

Ampereの躍進

こうした巨大な市場潜在性を背景に、Greaves Electric MobilityはAbdul Latif Jameelのリソースや支援を活用しつつ、長年の経験と最先端の技術ノウハウを駆使して次世代の「インド製」電動二輪・三輪車の開発を進めました。インドのオートエキスポでは「Har Gully Electric Anthem – Take Charge with Ampere」という最新ブランド戦略と共にそのコンセプトモデルを披露しています。

Greaves Electric Mobility at Auto Expo show
(左から右)ミレニアル世代をターゲットにした一般消費者向け高速電動スクーター「Ampere Primus」を前にポーズを取るGreaves Electric Mobility Pvt. Ltd(GEMPL)CEO兼エグゼクティブディレクターのサンジャイ・ベール氏、Greaves Cotton Ltd代表取締役副会長のナゲシュ・バサヴァンハリ氏とマネージングディレクターのアラップ・バス博士

ラインアップの目玉は、高性能、安全性、エレガンスを兼ね備えた「Ampere Primus」です。GEMPLが高速電動スクーター市場に参入するのは、これが初めてとなります。

ミレニアル世代の通勤者や若い家族をターゲットにしたPrimusは、よりスピード感に優れ、人目を惹くスタイリッシュなデザインや最先端技術を求める顧客のニーズに応えることを目指しています。Primusは最大時速が77kmで、停止状態から5秒未満で時速40kmに達し、フル充電での航続距離は100km以上を誇ります。また、「エコ」「シティ」「パワー」「リバース」の4つの走行モードを運転環境に合わせて切り替えて、燃費を効率化しながら快適な乗り心地を楽しめます。さらに、Primusは長寿命の3kWhリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池とスマートバッテリーマネージメントシステムを搭載しています。Primusは、ライダーのニーズを第一に考えて開発されています。カラーバリエーションは、スタイリッシュなメタリックマットカラー(Himalayan White、Royal Orange、Havelock Blue、Buck Black)の4色展開で、ツートンカラーのボディパネルを備えています。また、Bluetooth接続とナビゲーション機能を搭載しており、広々とした足元スペースとゆったりめのシートで快適な乗り心地や走行を極限まで追求しています。

Greaves Electric MobilityはPrimusの他に、さまざまな市場セグメントや価格帯に合わせてAmpereの5つのコンセプトモデルを発表しました。一般消費者向けに開発された「Ampere NXG」は、IoTコネクティビティを組み込んだスタイリッシュな高性能電動スクーターです。

また、利便性、快適性、信頼性を追求した「Ampere NXU」は、ギグエコノミー(インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態)におけるさまざまな商業用途の他、一般家庭での使用にも適した頑丈な造りとなっています。

最新モデルについて、Greaves Cottonの代表取締役副会長を務めるナゲシュ・バサヴァンハリ氏は次のように述べています。

Greaves Cottonは、金属系製造エンジニアリング会社から、21世紀の課題である『クリーンで低価格なラストワンマイルモビリティ』を実現する電気・電子・メカトロニクス中心のモビリティ技術企業への移行を遂げようとしています。

本日の製品・技術発表会では、インドで最も包括的なEVエコシステムの確立を目指す当社の方向性をはっきりと示せたと思います。

今回の製品ラインアップのインスピレーションとなった鳥のキョクアジサシは、当社のサステナブルな精神、空力効率の高いモビリティ、高度なデザインを象徴しています。当社は現在、EV分野の規模、成熟度、多様性の基準を押し広げ、インドの電動モビリティ化を推進することに力を注いでいます。2023年を新たな成長時期と捉え、人々の生活を豊かにする総合的なエンドツーエンドのソリューションを提供していきたいと考えています」

電動三輪車のイノベーション

Ampere電動二輪スクーターの最新ラインアップに加え、Greaves Electric Mobilityは、電動三輪車分野における存在感をさらに高める最先端の乗用/貨物輸送用モデルのラインアップを発表しました。三輪車は、短距離から中距離に適した低価格な公共交通手段としてインドの大衆に人気があることから、とりわけ成長が期待されている分野です。

(左から右)電動三輪車「Aero Vision」の傍らでポーズを取るGreaves Cotton Ltdマネージングディレクターのアラップ・バス博士、Greaves Electric Mobility Pvt. Ltd(GEMPL)CEO兼エグゼクティブディレクターのサンジャイ・ベール氏、Greaves Cotton Ltd代表取締役副会長のナゲシュ・バサヴァンハリ氏

Greavesはオートエキスポで、電動三輪車の最新モデル3台を発表しました。

  • Greaves ELP:ドライバーの大幅なコスト削減を実現する電動三輪車
  • Greaves ELC:低コストの貨物輸送の需要急増に応える電動三輪車
  • Greaves Aero Vision:急成長中の物流モビリティ向けに開発された、高効率性・高性能を誇る次世代の電動三輪車

サンジャイ・ベール氏
Greaves Electric Mobility
CEO兼エグゼクティブディレクター

どの製品も、同社が企業理念に掲げる「インド製」へのこだわりを体現しており、国産部品を調達して高度なローカライズ製造を実現しています。新しいプロダクトロードマップについて、Greaves Electric MobilityのCEO兼エグゼクティブディレクターを務めるサンジャイ・ベール氏は次のように述べています。「今回、ワンランク上のデザイン性と最先端の技術を融合した高性能な電動二輪・三輪車のコンセプトモデル6台を発表し、GEMPLの製品ポートフォリオの全容を明らかにできたことを嬉しく思います。

Ampere Primusについては、ミレニアル世代の通勤者をターゲットに高性能、快適性、エレガンスを追求し、新境地を拓けたと思います。また、電動三輪車の最新モデルについても、ヒトやモノを運ぶラストワンマイルモビリティ市場における当社の競争力を一層強化できると確信しています」

自社ノウハウを活かしたパワートレイン産業への挑戦

Greaves Cottonは、オートエキスポでのコンセプトモデルの発表と同時に、Greaves Cotton同社の数十年にわたる技術ノウハウを活用して電動パワートレイン市場に参入する意向を明らかにしました。モーターコントローラや統合ソフトウェアなども含めた包括的なEV技術のエコシステムを構築し、ヒトやモノを運ぶラストワンマイルモビリティ分野を牽引する企業としての地位を確立することを目指します。技術力の高さを武器に差別化を図り、最先端の設計・エンジニアリング、材料化学、重量(軽量化)、美学を融合してOEMメーカーのニーズに応える製品スイートを提供する予定です。

Greaves Cottonのマネージングディレクターを務めるアラップ・バス博士は、電動パワートレイン事業への参入計画について次のように述べています。「当社がこれまで培ってきた高度なエンジニアリング技術を考えれば、電気パワートレイン事業への参入は自然な流れです。過去数十年にわたりインド国内で製造を行い、顧客のニーズに応えてきました。車両のデューティーサイクル(使用サイクル)に精通している当社なら、最先端の技術力を駆使して、絶えず変化するモビリティ分野のニーズに応えられる電動パワートレインを提供できると思います。この分野で当社のEV技術を活かせるのが楽しみです」

Abdul Latif Jameelの支援

オートエキスポでこの野心的な事業成長計画が発表されたのは、Abdul Latif JameelがGreaves Electric Mobilityに対する最高2億2,000万米ドルの投資を発表し、同社第2位の主要株主になってから約6か月後にあたります。この投資の目的は、同社の専門知識と実績を活かし、急速に拡大するインドの二輪・三輪車分野におけるEVエコシステムの構築を加速させ、グローバル・サウスに低価格のEV製品を供給するというAbdul Latif Jameelの目標を推進することでした。

Greaves Electric Mobilityへの出資は、Abdul Latif Jameelが68年以上にわたりトヨタ自動車製品(トヨタ、レクサス、ダイハツなど)の独立系大手販売代理店として培ってきた、グローバルモビリティ分野に関する幅広い経験に基づいて行われました。ジャミール・ファミリーは、米国を拠点とする電気自動車メーカーRivian(リビアン)にも設立当初から投資を行っており、同社第3位の主要株主となっています。また、投資事業部門のJameel Investment Management Company(JIMCO/ジャミール・インベストメント・マネジメント・カンパニー)を通じて、米国の航空ベンチャー企業であるJoby Aviation(ジョビー航空)をはじめ、最先端技術の開発に取り組むイノベーション企業にも積極的に投資を行っています。

Abdul Latif Jameelはまた、パートナーシップを通じてネットゼロ目標(二酸化炭素排出量実質ゼロ)や脱炭素化を中心とするサステナビリティ全般における長期的な取り組みを続けています。その主たる例がAbdul Latif Jameelの主要な再生可能エネルギー事業部門である

Fotowatio Renewable Ventures(FRV)と、グローバルに水インフラ開発・サービス事業を展開するAlmar Water Solutions(アルマー・ウォーター・ソリューションズ)です。

Hassan Jameel and Nagesh Basavanhalli
2022年6月の投資調印式で握手を交わすAbdul Latif Jameel社長代理兼副会長のハッサン・ジャミールとGreaves Cotton Ltd代表取締役副会長のナゲシュ・バサヴァンハリ氏

Abdul Latif Jameelの社長代理兼副会長を務めるハッサン・ジャミールは、次のように述べています。

Abdul Latif Jameelは、インドのEV市場の大事な過渡期に、Greaves Electric Mobilityとパートナーシップ契約を締結することを誇りに思います。先見の明のあるGreavesの経営陣は、電動二輪・三輪車市場にいち早くチャンスを見出し、高品質・高性能な製品を打ち出すことで、B2B、B2Cの両分野を牽引するリーダー企業としての定評を得ました。

そのイノベーションとサステナビリティに対するコミットメントは、当社の姿勢に通じるところがあります。Greavesの次のステージを共に歩み、インドを中心とするさまざまな地域に、クリーンで持続可能な交通手段を低価格で提供できることを心から楽しみにしています」

[1] https://www.weforum.org/whitepapers/financing-india-s-electric-two-and-three-wheeler-fleets

[2] https://www.reuters.com/business/autos-transportation/indias-auto-show-set-feature-electric-cars-scooters-2023-01-11/

[3] https://reports.valuates.com/reports/QYRE-Auto-17T4516/global-electric-three-wheeler-sales

[4] https://www.weforum.org/whitepapers/financing-india-s-electric-two-and-three-wheeler-fleets

[5] https://dash.heavyindustries.gov.in/

[6] https://www.weforum.org/whitepapers/financing-india-s-electric-two-and-three-wheeler-fleets