法的イノベーションは水への投資を拡大させる鍵なのか?
水インフラは新たな発展段階に入っています。プロジェクトの資金調達、管理、長期間にわたる維持の仕組みが複雑化しているのがその特徴です。気候の不確実性が高まり、水道システムとエネルギー、金融、デジタル技術との結びつきが強まるにつれて、これらを支える法的枠組みは急速に進化しています。
そうした流れの中心にあるのが、結果を形作るうえで決定的な役割を果たすのは契約そのものであるという認識の高まりです。契約によって、リスクを配分する方法、価値を創出する方法、複数のステークホルダーが関与する長期プロジェクトで説明責任を維持する方法が決まります。様々な規制や経済環境の中で事業を運営するグローバルな水道会社にとって、法的枠組みは強靭で持続可能かつ投資に適したインフラを提供するための重要な要素となりつつあります。
Jameel Environmental Services(ジャミール環境サービス部門)の傘下にあるALMAR Water Solutions(アルマー・ウォーター・ソリューションズ)は、この変化する環境の最前線に立っています。ALMARは、世界の水の安全保障、特に世界で最も脆弱なコミュニティにおける水の安全保障を向上させるというミッションのもと、2016年に設立されました。この10年間で、海水淡水化、廃水処理、再利用とリサイクルプログラムのポートフォリオを拡大させてきました。欧州、中東、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア太平洋地域でプロジェクトを展開しているALMARは、海水淡水化と浄水から廃水処理、再利用、供給ネットワーク、長期的な運用と保守管理まで、水の全サイクルにわたってシステムの設計、融資の構造化、運用を行っています。

Almar Water Solutions
最高経営責任者
ALMAR Water SolutionsのCEOであるCarlos Cosín(カルロス・コシン)に、法的イノベーションが水セクターをどのように再構築しているか、また水の未来が技術的な専門知識だけでなく法的能力の影響も受ける理由について話を伺いました。
質問:水インフラの未来において法的イノベーションが重要な要素であるのはなぜでしょうか?
世界における次の水インフラの波は、技術者のみによって作られるわけではありません。リスク、価値、説明責任の流れを決定する契約を通じて、弁護士によって形作られます。すべての海水淡水化プラントや廃水再利用ネットワーク、水域レベルのパートナーシップを支えているのは、公的機関、金融業者、民間事業者間の連携を機能させるオペレーティングシステムである様々な契約です。
グローバルな水道会社を先導する私たちにとって、法的能力は卓越した技術力と同じく不可欠なものとなっています。このオペレーティングシステムは、それを管理する私たち全員の能力を上回る速さで複雑化しており、法的設計はインフラの長期的な運用のあり方を定めるのに欠かせない要素となっています。
水の安全保障を求める顧客の長期的なニーズと、数十年にわたって供給を保証できる事業者を結びつけるうえで、こうした契約が以前にも増して中心的な役割を果たしています。顧客が20年または25年にわたって水資源を確保するために専門的なパートナーを活用し始めると、関係性が変化します。契約は長期的なパートナーシップの基盤となり、継続性、信頼性、責任の共有を支えることになります。
質問:現代の水プロジェクトが複雑化している要因は何でしょうか?
現代の水プロジェクトは、インフラ、環境、金融、デジタル技術という複数の領域が交差するプロジェクトであり、この各領域について、契約に関する高度な知識が必要となります。例えば、一つの廃水再利用施設で、設計・建設・運用契約、長期オフテイク契約、多国間保証、水質やエネルギー使用を紐付けたパフォーマンスベースの指標、リアルタイム監視やAIによる最適化を網羅したデジタルデータに関する条項を組み合わせることがあります。
こうした動的要素を調整するために必要な法的エコシステムは、直線的な鎖ではなく星座のような集合体に似ています。しかし多くの法域が、依然として従来のインフラ向けに設計されたテンプレートに依存しています。こうした不一致が課題と同時に市場も生み出しています。つまり、物理的な水の流れを、数十年にわたる技術や規制の変化の中でも存続できる契約構造に変換する必要性です。
質問:「リスクの地理的分布」は水への投資やプロジェクト設計にどのような影響を与えますか?
水は地域が限定されていますが、金融は全世界を対象としています。運営事業者と弁護士の間に緊張関係を生み出す最初の原因がこの相違です。国際的な水道会社の場合、水文学的変動や規制の変更から通貨変動リスク、料金の調整、ソーシャルライセンスの条件まで、単一のプロジェクトに15から20の異なるリスク領域が含まれます。これらは抽象的なものではなく、長期的な運営権が安定したリターンをもたらすのか、それとも政治的圧力で崩壊するのかを決定づけます。
このような市場での法律実務では、地域的な予測不能性と国際的な執行可能性の両方を考慮しなければなりません。下流の契約チェーンにリスクを移転する従来のモデルはもはや機能しません。特に資産が地域社会内で運用され、リスクが可視化された政治的かつ本質的なものである場合にはなおさらです。過度のリスク移転は持続可能性を損ないます。
必要性が高まっているのは、リスクを共有する枠組みです。つまり、公共部門と民間部門の間でインセンティブを調整し、干ばつ、エネルギーショック、規制改革に対応する透明性のある調整メカニズムによって支えられる適応性のある契約です。これには、私が呼ぶところの「トラストエンジニアリング」に加えて、法的文書の創造的な草案が必要です。開示、調停、共同パフォーマンスレビューの仕組みを法的枠組みに組み込み、長期的に連携を持続させるのです。
質問:水供給契約を標準的な契約のように固定したままにせず、時間とともに変更することが重要なのはなぜでしょうか?
水セクターでは時間がリスクです。30年間の運用を前提に設計されたインフラは、資産が成熟する前に規制内容や気候の状況が何回も変化する中で稼働することを余儀なくなくされます。水道会社と協働する弁護士は、当初想定した状況が変化したことを受けて、契約の再交渉を行うことが多くあります。気候変動、新しい環境基準、さらには技術の飛躍的な進歩(エネルギーニュートラルな海水淡水化やリアルタイムデジタルツインなど)といった要因によって、当初の合意で想定した経済状況は様変わりします。
静的な法的手段では動的なエコシステムに対応できません。今後本当に開拓すべき手段は、介入権やパフォーマンスの許容範囲のほか、政治的交渉ではなく客観的な指標に基づく定期的な審査条項を組み込んだ進化する契約です。これは前例を破ることを意味します。契約を固定均衡として捉える考え方から、ガバナンスプロセスとしての契約へと移行するのです。水セクターはその進化を試す実験場となるでしょう。
質問:多くの水プロジェクトが「バンカブル(融資適格)ではない」と見なされるのはなぜでしょうか? また、これに対処するにはどうすればよいでしょうか?
すべての水道経営者が同じ矛盾に直面しています。投資が最も必要とされるプロジェクトの資金調達が最も難しいことが多いという矛盾です。水プロジェクトは分散型で地域が限定されており、バンカブルではないと見なされることがしばしばあります。
法的イノベーションはこのギャップを埋めることができます。ブレンデッドファイナンス商品、エスクローの取り決め、成果に基づく契約の構築には、多くの専門分野にまたがる法務チームにしか提供できないレベルの正確さが求められます。しかし、このようなサービスの市場規模は今も頭打ちの状態が続いています。
主要な緊張関係は標準化とカスタマイズの間にあります。貸し手は予測可能な条件を求め、現地当局は状況に応じた保護措置を要求します。標準化し過ぎると正当性が損なわれ、カスタマイズが多すぎるとバンカビリティ(融資適格性)が低下します。この解決策はモジュール型設計にあります。調整可能なパラメータを備えた法務テンプレートを使い、金融業者の事前承認を受けつつ、地域ごとに適応できるようにするのです。一部の開発銀行はすでにこのような枠組みに取り組んでいます。
こうした取り組みを拡大するためには、法律事務所の役割を契約の履行に限定せず、法律事務所が取引の構想段階で早期に関与する必要があります。私たちの業界では、弁護士の早期関与はもはやコストではありません。リスク保険の一形態です。最終的に、長期的に安定した水供給の運用への信頼性が契約に反映されることで、バンカビリティが強化されます。
質問:水プロジェクトにおける「パフォーマンス」の定義はどのように進化していますか?
パフォーマンスとは、以前は供給量や達成した処理レベルを指していました。現在では、二酸化炭素排出量、エネルギー使用量、循環型経済指標、社会的包摂も含まれています。こうした様々な次元の成果を契約に組み込むことは、科学であり芸術でもあります。弁護士にとっての課題は、持続可能性を強制力のある言葉に変換することにあります。企業にとっての課題は、イノベーションを妨げることなく測定可能な成果を約束することにあります。
こうした関係が進化するにつれて、それを支える重要業績評価指標も進化します。信頼性、レジリエンス、供給の継続性という観点で測定される水の価値が、意思決定の重要な基準となります。この変化により、顧客と事業者間の対話レベルが高まり、水が事業における戦略的資産に位置付けられるようになっています。
あまりにも柔軟性のない重要業績評価指標は裏目に出ることがあることが分かっています。明確な最低基準、野心的な目標値、基準を上回る成果に対するインセンティブのように、パフォーマンス指標を段階的に設定するのが効果的です。ここで必要となる契約の役割は、時間の経過とともに状況が変化した場合に両当事者が協調し続けることができるように、バランスの取れた長期的なパートナーシップ契約を支えることです。
質問:水ガバナンスにおいて、データとデジタル化は現在どのような役割を果たしていますか?
水道システムのデジタル化が進むにつれて、契約分野はデータ所有権、プライバシー、サイバーセキュリティ、AIガバナンスへと拡大しています。データは、水道会社にとって資産であると同時に負債でもあります。問題の焦点は、インフラの建設業者からインフラが生成する情報の管理者へと移っています。
私たちには法律の専門知識が必要です。データを運営事業者、公的機関、消費者にどのように割り当てるか、予測アルゴリズムのバイアスや正確性はどのように監査されるのか、またサイバーセキュリティの義務を請負業者間でどのように分担するのかについて定義できるだけの知識が必要なのです。
今では、データに関する条項は料金に関する条項と同じくらい重要です。プロジェクトの透明性やレジリエンス、さらには倫理性も、データに関する条項によって決まります。その意味では、弁護士が水セクターにおけるデジタルインテグリティの管理者となりつつあります。
質問:紛争防止が紛争解決よりも重要になってきているのはなぜでしょうか?
水供給契約は複雑なため、紛争回避は仲裁と同じくらい重要です。多くのプロジェクトは、法的枠組みが明確であっても、ステークホルダー間の信頼が損なわれることで失敗します。
先駆的な法務チームは、常任委員会、中立的な技術専門家、早期警戒手順など、協働型のガバナンスの仕組みを契約に組み込んでいます。こうした仕組みが、意見の相違が悪化する前に軌道修正する経路をもたらします。
遅延が何百万ドルもの損失につながり、評判が一夜にして損なわれる可能性があるセクターでは、「予防法務」が次に開拓すべき分野です。目標は対立をなくすことではなく、対話を制度化することです。
質問:水供給契約にはどのような倫理的考慮事項が反映されるべきでしょうか?
構造やパフォーマンス以外に、もっと大きな問いがあります。法的設計から利益を得るのは誰なのかということです。水道会社は公的機関の監視のもとで運営されています。私たちの正当性は公平性に左右されます。つまり、価値を反映しつつも低価格な料金、競争力がありながらもインクルーシブな調達、そしてマイナス要素を外部の地域社会に押し付けないリスク配分によって決まります。
このセクターで活動する法律事務所では、この倫理的な側面が中心的な要素となりつつあります。透明性、公平性、長期的なスチュワードシップを維持した契約を作成する能力は戦略的な考慮事項となっています。規制当局や投資家は、私たちが何を建設し、その契約が責任をどのように具体化しているかを評価し始めています。
質問:水セクターにおける協働の未来はどのようなものになるでしょうか?
水業界と法律専門家が共通して直面しているのが時間という問題です。どちらも数十年先を見据えなければなりません。今日計画された海水淡水化プラントや廃水システムは、一世代にわたって規制、気候、金融状況の変化に耐えなければなりません。
そのために必要なのは将来を見通す共同の文化です。つまり、技術者、金融業者、弁護士の間で継続的な対話を重ね、プロジェクトがどのように進化するかを協力して予測する文化です。法律事務所にとっては、単なる取引業務から戦略的アドバイザリー業務へと移行することを意味します。ALMAR Water Solutionsのような企業にとっては、初期のシナリオ計画や紛争解決に法務パートナーを関与させることを意味します。
最終的な成功指標は、訴訟がないことではなく、サービスの継続です。これこそが、最終的に私たち各専門家を団結させるものなのです。私たちはリスクを管理しているだけではなく、レジリエンスを設計しているのです。
強靭な水インフラの新たな青写真
水道システムの複雑化が進み、水道システムが経済と社会の安定にとってますます必要不可欠な存在となっていく中で、水道システムを管理する枠組みも同時に進化していく必要があります。契約は、インフラがどのように機能し、適応し、長期間持続するかを形作る動的なシステムへと進化しています。
こうした動向は、セクター全体でリスク共有、適応型ガバナンス、そして顧客と事業者のより深い長期的パートナーシップへと移行する、より大きな流れを反映しています。水の安全保障が産業活動や経済活動にとってますます重要になる中で、利用者のニーズと数十年にわたって供給を保証できる運営事業者を結びつけるという契約の役割は一層高まります。
この進化はプロジェクトの構築方法、パフォーマンスの測定方法、セクター全体における価値の把握方法をすでに変えつつあります。最終的に、将来の水インフラの成功は、建設されたものによってのみ判断されるのではなく、いかに効果的に不確実性に耐えられるように構築されているかによって測定されるようになるでしょう。深刻な水不足を抱える世界では、進化を続け、インセンティブを調整し、信頼を維持する契約を設計する能力は、インフラそのものと同等に重要となる可能性があります。
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