ALJ Finans logo2011年、Abdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)のトヨタレクサスディーラーで金融サービスを提供することを目的に設立されたALJ Finans(ALJファイナンス)が、トルコの消費者金融部門における 急成長企業として脚光を浴びています。

同社は、RPA(ロボットによる業務自動化)、意思決定の自動化、eカスタマーケア、KredimOLモバイルアプリ、電子契約書など、トルコの消費者金融市場初となる画期的なサービスを次々に打ち出すなど、自動車金融におけるイノベーターとしても確固たる評判を確立しています。

この成功と実績を土台にALJ Finansを更なる成長へ導いているのが、同社CEOのベツグル(ベティ)・トーカー氏です。今回はトーカー氏にインタビューを敢行し、トルコの消費者金融市場の動向や、ALJ Finansの大胆な事業計画について伺いました。

質問:ALJ Finansに入社されたのはいつですか?

2021年9月にAbdul Latif Jameelファミリーの一員になりました。私は元々、リテールバンキング業務に従事していました。2000年に管理職研修生としてQNB Finansbank(QNBファイナンスバンク)に入社し、そこで8年半勤務した後、当時トルコで2位の大手銀行だったAkbank(アクバンク)に転職し、そこで更に4年研鑽を積みました。こうしたキャリアを通じて、常にリテールバンキングや消費者バンキングの決済システムに関わってきました。私がキャリアをスタートした頃は、トルコでデジタルバンキングはそれほど注目を浴びていませんでした。独立した事業部門というよりは、どちらかというと代替の決済チャンネルという位置付けでした。デジタル技術に大きな可能性を見出した私は、製品ラインの拡張、データ分析、CRM、サードパーティ企業との事業提携などに積極的に取り組むようになりました。

そのうち、地域最大の銀行グループのひとつであるBank Audi Group(バンク・アウディ・グループ)から打診を受けました。当時、Bank Audi GroupはトルコにOdeabank(オデアバンク)を設立しようとしているところで、リテールバンキング部門を統率する人材を探していたのです。リテールバンキング事業を一から立ち上げる絶好のチャンスだと思った私は、その依頼を二つ返事で引き受け、5年にわたりデジタル化に重点的に取り組みました。その後、トルコ最大の投資銀行Aktif Bankで決済システム、カード、フィンテック全般を含むデジタルバンキング事業の立ち上げに携わり、実績を積んだ後にALJ Finansに入社しました。

質問:ALJ Finansへ入社を決めた理由は何ですか?

ALJ Finansの存在は、Aktif Bankでの在職中から気になっていました。トルコの消費者金融部門において、ALJ Finansはさほど大きな存在ではありませんでしたが、Abdul Latif Jameelが世界中で多岐にわたる事業を展開する大手グループであることを知っていたからです。大胆な事業計画に沿って多額の投資を行い、事業の成長と拡大を推進しているのが見て取れました。ALJ Finansの大胆なビジョンの達成に、自分の管理職の経験とデジタルバンキングの専門知識が活かせるのではないかと考え、ALJ Finansへの入社を決めました。

質問:トルコの消費者金融市場は、今どう変化しつつあるのですか?

消費者金融とバンキングは、2つの部門に分かれています。バンキング部門は既に規制も確立されており、約4,000万人の顧客を抱えています。一方、消費者金融は比較的新しい部門ですが、急速に拡大を続けており、特にデジタル分野やフィンテック分野において大きな成長の可能性を秘めています。競争は激化しています。フィンテック企業は、まずビジネスの構築に力を入れ、事業基盤を確立した上で、消費者金融ライセンスや決済ライセンスなどの金融ライセンスの獲得を図ります。以前は逆で、まずライセンスを取得して事業を確立した後に、他のライセンスを取得するのが通常でした。

一般的に、大手銀行は一般貸付や住宅ローンなどの分野で圧倒的な地位を確立しています。消費者金融業者は、自動車金融などの一部の市場で強い存在感を示しており、融資額の約35%を占めています。ここにまだ伸びしろがあり、ALJ Finansもそこを狙っています。

質問:今後3年の消費者金融部門の見通しを教えてください。

消費者金融部門は新たな金融エリアへの進出が進み、今後も急成長が続くと予測しています。今後3年の累積成長率が50%を超えても不思議ではありません。自動車価格の上昇は、オートローンへの需要を生み出します。金利低下の可能性も、需要を押し上げる要因となるでしょう。家電製品や日用品など、自動車以外の製品のファイナンスソリューションが成長し、融資額全体に占めるファイナンス会社の割合も増加するとみています。こうした健全な成長が続くことで、特に自動車以外のファイナンス分野で市場参入する企業が増え、競争が更に激化していくのではないかと思います。

質問:トルコの消費者金融部門は、今後も自動車金融が主体になるとお考えですか?

ALJ Finans brands当面はそうだと思います。ただ、今後5年で一般貸付が伸びて、バランスが変化していくのではないかと思います。

自動車金融は単純明快です。すべての自動車のナンバープレートには価値がありますから、いざとなれば売ることができます。他のファイナンス分野は、なかなかそうは行きません。ただ、その傾向も変わりつつあります。今後は携帯電話、家具、家電などの幅広い資産に対するファイナンスが普及していくことが予想されます。ALJ Finansでも、その波に乗ることを 優先課題のひとつに据えています。

質問:トルコのフィンテック事情について教えてください。

トルコは今、フィンテックが非常に盛んです。現在は約250社のフィンテック企業があり、50社以上が電子マネーや決済サービスのライセンスを取得しています。デカコーン企業(評価額100億米ドル以上)が1社、ユニコーン企業が4社、IPOが1社、更にゲーミング企業が127社あり、総額6億8,000万米ドル以上の資金を調達しています。

フィンテック企業250社の多くは電子マネーライセンスを取得しているか、または申請中です。なぜそのような戦略を取るかというと、決済やカードの機能を果たす電子マネーは、お客様の懐(財布やスマートフォン)に入りやすいからです。電子マネーの分野で財布シェアを獲得したら、追加ライセンスを取得して他の分野の事業に幅を広げていくことで、更に投資を誘致できます。フィンテック企業は、ある時点で本格的なデジタルバンクへの移行の判断を迫られることになります。トルコ政府はデジタルバンクに対して手厚い支援を提供しています。今、この市場は飛ぶ鳥を落とす勢いです。

KredimOL App

質問:現在のフィンテック市場の動向は、ALJ Finansのような金融プロバイダーにとってどのような意味を持つのでしょうか。

当社の方針が正しいことを示していると思います。今後はデジタルを中心に、お客様に寄り添うサービスを展開していく必要があります。カスタマー・エクスペリエンスへの投資なくして、ビジネス価値の創造はありえません。

ALJ Finansでは、既にその取り組みに着手し、お客様を第一に考え、お客様のニーズを満たす技術の構築に取り組んでいます。現在はデジタルファーストのソリューションの実現に向けて、融資システムの刷新や、社内の技術部門の強化を図り、イノベーションが生まれやすい環境を整備しているところです。

質問:ALJ Finansの今後数年の計画を教えていただけますか?

2022年は、当社にとって飛躍的な成長の年になるでしょう。2021年の融資額は、前年度比64%増を記録しました。市場シェアも2019年末には3.5%だったのが、2021年末には5%まで成長しています。

今後の目標は、2022年のうちに市場シェアを更に2%伸ばすことです。2021年は顧客数の15%増を達成しましたが、今年は顧客数の25%増、ローンポートフォリオの50%増以上を目指しています。

現在、ALJ Finansの中核をなすのは自動車金融事業です。しかし、それも今後3年で変わるでしょう。「スーパーアプリ」を通じて、自動車金融をはじめとする幅広い分野のファイナンスソリューションと消費者を繋ぐデジタル消費者金融プラットフォームのローンチを予定しています。このプラットフォームを成功に導くには、多くの利用者を誘致する必要があります。今後数年は、パートナーシップの構築に力を入れる一方で、ビッグデータやAIを活用した高度なシステムの開発に取り組み、当社の金融エコシステムの利用者の拡大と維持を図りたいと考えています。

当面の目標は、トルコ最大のデジタル金融企業としての地位を確立することです。既にエンド・ツー・エンド・アプリケーションを通じて、即時承認により、対象ディーラーでクレジットを利用できる仕組みがあるのですが、このプロセスを刷新し、アプリケーションを再構築して 2022年9月に新しいアプリケーションをローンチする予定です。取引の4分の1をデジタルに移行したいと考えています。

質問:今後、大手企業は市場の変化にどのように対応していくと思いますか?

大手銀行は既にリポジショニングを図っています。単なる「銀行」のイメージから脱却し、独自のプラットフォームを構築して、より幅広い金融商品のプロバイダーとしての位置付けを確立しようとしています。それを現行ブランドの枠組みの中で行っている銀行もあれば、独自にフィンテック企業を設立している銀行もあります。こうした傾向は今後も継続するでしょう。市場は十分に成熟しており、こうした変化を受け入れる環境が整っています。

The ALJ Finans team
ALJ Finansの社員

質問:新型コロナの世界的な感染拡大が収束していくだろうという期待を踏まえ、2022年の抱負をお聞かせください。

インフレ傾向や自動車市場の活性化などから、今年はトルコの消費者金融部門が大幅に成長すると予測しています。新型コロナの変異株が未知数を生む部分はあると思いますが、2022年には大分落ち着いてくるでしょう。今年中盤からは、世界的なインフレの懸念が減少し、正常化に向けての動きが加速すると思います。

私は、事業成長をALJ Finansの優先事項に据えています。更に顧客を獲得し、カスタマー・エクスペリエンスへの投資を拡大したいと考えています。現状のままでも十分な成功を収めてはいますが、当社は壮大なビジョンを描いています。

2023年末までは、技術、データ、分析機能、AIなどへの投資を通じて、デジタルプラットフォームの強化に 重点的に取り組んでいく予定です。もうひとつの優先事項は、電子マネーライセンスの取得です。当社は現在、金融サービスに特化していますが、それだけでは事業成長の目標を達成することは困難です。電子マネーライセンスを取得することで、送金、デビットカード、決済、消費者金融などの様々なサービスの提供が可能になり、財布シェアが増えることで、戦略的目標を達成しやすくなります。