再生可能エネルギーは気候変動対策となり得るか
文明が発達するとともにエネルギー需要は年々高まっており、その飽くなき欲望は簡単に満たされることはなさそうです。
最近の統計によると、世界のエネルギー消費量はこれまでにないほど加速しており、年間4%に迫る勢いとなっています。[1]しかも、エネルギー需要のピークが近付いている気配はありません。世界の電力消費量は今後3年間で前例のない3,500TWh増加することが見込まれていて、世界の年間電力料金に日本規模の国の分が加算されるのに相当します。今世紀半ばまでには、私たちの家庭や産業、輸送システムが消費するエネルギーはさらに増えて、現在の約2倍の59,000TWh~72,000TWh程度に達すると予想されています。[2]

2025年は史上最高レベルに暑い年となったことが確認されており[3]、エネルギー需要の急増という現実に持続可能な形で賢く対応することは不可欠になっています。
深刻な課題が私たちの前に立ちはだかっています。2050年までにネットゼロ排出を達成するには、今後、年間4兆米ドルほどの支出が必要となります[4]。しかし、持続可能なエネルギーへ移行することの見返りは同じくらい大きく、数百万の新規雇用の創出、世界規模での好景気、すべての人が電気を利用できる状況といったことがすべてもたらされる可能性があります。
太陽光と風力は気候変動対策を再活性化させるか
幸運にも、世界的なゼロカーボンエネルギーシステムへの移行に必要となる技術のほとんどはすでに利用可能で実用化済みです。その中心は太陽光と風力のソリューションとなります。
これらの技術が組み合わさり、私たちの生活に劇的な影響を与えています。世界の再生可能エネルギー発電容量は2019年以降あらゆる手法で急増しており、今後も増加し続けると予想されます。国際エネルギー機関(IEA)の2025年版再生可能エネルギーレポートでは、世界の再生可能エネルギー発電容量は2020年代末までに約4,600ギガワット(GW)増加して倍増すると予測されています。[5]新規追加分のうち、太陽光と風力が合計で96%を占めます。

このような状況は、世界のほぼあらゆる場所で起こっています。中国はこの再生可能エネルギーの成長の約60%を占めており、現時点では、提案されている2035年の太陽光発電および風力発電の数値目標を予定より5年早く達成する見込みとなっています。[6]持続可能性への取り組みは中国だけに留まりません。インドは、入札の増加と屋上太陽光発電パネルの販売急増を原動力として、2030年までに自国の再生可能エネルギー発電容量を2.5倍に増やす予定であり、このプロセスが進むと世界で2番目に大きな再生可能エネルギーの成長地域となります。MENA地域でも、サウジアラビアでの太陽光発電が急速に成長してグリーンエネルギー生産が加速しており、欧州では、大規模な電力購入契約(PPA)が多数発生し、実用規模の再生可能エネルギープロジェクトの増加に勢いを与えています。
そのメリットは非常に重要で、特に汚染の激しい発電手段からの代替が徐々に進んでいます。2010年以降再生可能エネルギーの導入を進めた結果、各国は合計で石炭の輸入を7億トン、天然ガスの輸入を4,000億立方メートル削減しました。[7]
2030年までに再生可能エネルギーは現在の市場シェアの2倍、世界の電力供給量の約30%に達すると見込まれています。[8]
AIの進化が続いているため、この移行はさらに加速すると見られ、機械学習がさらにこのバリューチェーン全体にメリットをもたらします。例えば、気象条件に応じてエネルギー収量を最大化するために太陽光パネルやタービンの効率を向上させる設計、電力網へのエネルギー配分の最適化とバランス調整といった技術に加え、さらに新しい太陽光発電所や風力発電所の建設や設置を迅速化するロボットの開発などが挙げられます。
そのうちの一部はまだ実用化されていません。しかし、すでに現時点で自由に使える技術だけでも、太陽光と風力の伸びは留まることを知らず、人類全体にとってクリーンな未来を形作るために不可欠であると見られます。
地球温暖化が着実に進んでいる中、それに対応しなければならないという圧力は大きなものとなっています。先行きは明るく、特にクリーンエネルギーへの移行には希望の星が輝いています。それが太陽光エネルギーです。
太陽光発電の未来は明るいのか
太陽光発電は、現在から2030年までの全グリーン電力の成長分の約80%を占めると予想されています。[9]今後5年で世界の太陽光発電(PV)容量は2倍以上に増加すると見られ、その予測は壊滅的な気候変動を報じるメディアが多い中で一筋の光となっています。[10]

こうした自信には根拠があり、多様な要素が複合的に作用して太陽光発電は急成長しています。中国における太陽光パネル製造費の低下、国や地方自治体レベルでの許可手続きの簡素化、太陽光発電所増設に対する緊急の必要性が地域社会でより広く受容されている、といった要因がその例として挙げられます。
比較的小規模な分散型太陽光発電設備(電力網とつながっていない家庭用や商業用の施設)は太陽光発電拡大全体の42%を占めると見積もられ、電気料金の上昇や、一部の新興国のが太陽光発電の拡大を後押ししています。現在はかつてないほど手軽に太陽光発電に挑戦できるようになっています。中国では、材料供給の安定化と市場での競争の激化により、2023年以降太陽光パネルの価格が約60%下落し、一般家庭の顧客だけでなく法人顧客にとっても現実的な選択肢となっています。[11]
これまでのCOP気候変動会議で同意された個々の排出量削減の公約である「国が決定する貢献」(NDC)を通じて、太陽光発電への移行の重要性を認め、法的に支援している国が増加しています。さらに最近NDCに追加された項目によって、これまでの公約に対する関与がさらに深まっています。例えば、英国では、太陽光発電容量について初めて具体的な目標(風力発電と合わせて24%増)を設定しました。また、ベトナムではこれまでの太陽光発電(PV)に関する公約を倍増させています。さらにインドでは、分散型太陽光発電システムへの投資費用の60%を助成して支援することに合意しました。[12]
太陽光発電への熱意はこれまでにないほど盛り上がりを見せており、2025年は実用規模の太陽光発電市場で超大型契約が結ばれる画期的な年となりました。
- サウジアラビアは、5つの太陽光発電所を含めて再生可能エネルギー発電容量を15GW増加させるため、83億米ドルという巨額の再生可能エネルギー投資を発表しました。[13]ACWA Power(ACWAパワー)が主導するコンソーシアムは、アシール地方のビーシャ・プロジェクトやマディーナ地方のフメイジュ・プロジェクトといった拠点の開発を予定しています。
- インドは、ピーク時の需要への対応と電力網の安定化支援を目的として、8GWの太陽光発電を含む総額25億7,000万米ドル規模の新たな複合型エネルギープロジェクトを発表しました。この計画はReNew Energy Global(リニュー・エネルギー・グローバル)によるもので、インド東部のアーンドラ・プラデーシュ州を拠点として、同国が掲げている2030年までにクリーンエネルギーを500GWまで増加させるという目標の達成に貢献すると見られています。[14]
- ブータンは、Reliance Power(リライアンス・パワー)と国営のGreen Digital(グリーン・デジタル)が提携して500MWという同国史上最大の太陽光発電プロジェクトを実施することを発表しました。この約2億4,000万米ドル相当の契約は、ブータンのエネルギー自立達成に貢献し、Reliance Powerの総合的な太陽光発電能力が約5GWに拡大します。[15]
- 米国でも、政治的な逆風に反して、エネルギー企業のEnbridge(エンブリッジ)がテキサス州での600MW規模の新規クリア・フォーク太陽光発電プロジェクトに9億米ドルを投じることを約束しました。すでにその一部は巨大IT企業のMeta(メタ)が出資しています。[16]
技術革新は2025年まで加速し続けており、太陽光発電への移行は勢いを増すと見られています。
結晶シリコン以来最大の画期的な技術革新となる可能性のあるペロブスカイト太陽電池が、ついに商業生産へと進みます。ペロブスカイト化合物はスズや鉛ハロゲン化合物をベース材料に使用して太陽光をエネルギーに変換します。効率と柔軟性が高く、軽量なため、パネルでも窓でも同じように使用することができ、また従来の硬質のシリコン系太陽光電池よりも製造費用が安価になっています。タンデム型太陽電池も評価が高まっています。これは「バンドギャップ」(エネルギー範囲)が異なる光起電性材料を積層させたもので、単一材料のものより広いスペクトル範囲の光を吸収する能力があります。英国のOxford PV(オックスフォードPV)はタンデム型ペロブスカイト太陽電池の製造を開始していて、その発電効率は24%~27%と、従来の単結晶パネルの20%~23%よりも大きく向上しています。管理条件下での試験では、ペロブスカイト・シリコン系太陽電池の発電効率はさらに高く、33%を超えています。[17]
両面(二面)発電パネルは、製造単価の低下により、太陽光発電を設置する際の標準機器として選ばれることが急速に増えています。両面システムは地面からの反射光をパネル背面で受けるような設計となっていて、構成によっては受光量を5%~30%も上げることができます。[18]
こういった進歩によって、太陽エネルギーの未来は確実に明るいと見られています。しかし、気候変動を食い止めるために必要な世界規模のエネルギー転換を1つのエネルギー源だけで賄うことはできません。
幸いなことに、風力発電も自然の持つ圧倒的な力を利用する方法として存在感を発揮しています。
風力発電はあらゆる懸念を吹き飛ばせるのか
風力発電革命はただの流行ではなく、全世界で注目を集めています。
太陽光パネルが順調に軌道に乗っているのと同じく、風力タービンも陸上型と洋上型の両方で順調です。風力発電所の新規設置は2025年に155GWほどとなり、現在から2027年までの世界の発電量増加分の約3分の1を占めると予想されています。[19]、[20]
今後10年間で世界の風力発電容量は倍増して2,000GWを超え、年間の増加量は2030年までに約200GWにまで増加すると見込まれています。

風力発電は、中国やEUのようにエネルギー需要が大きい経済圏において建設費、時間のかかる許可申請、社会的な認識といった問題にまつわる業界の長期的な課題が解決されれば、活発化していくことは疑う余地がありません。さらに、風力タービンの磁気部品に不可欠となる一部のレアアース鉱物の入手競争が激化しており、各国はサプライチェーンが機能不全を起こした場合の対策にも取り組み始めています。
たとえば、EUではネオジムとプラセオジムのほとんどを輸入に頼っています。この2種類の鉱物はタービン製造に欠かせないものであり、現在は中国がそれぞれの全埋蔵量の69%~74%を占めています。[21]これに対抗して、今後の供給の安定化を図るため、EUは英国、日本、オーストラリアといった国々と重要鉱物に関する新たな同盟を拡大しています。[22]一方で米国は新たに120億米ドルの重要鉱物備蓄計画「プロジェクト・ボールト」の概要を発表しました。このうち100億ドルは米国輸出入銀行融資が、16億7,000万ドルは民間資本が拠出し、レアアース元素の自給率向上を目指します。[23]
実用規模の風力発電プロジェクトの展開率は世界の各地域で差があるものの、この業界は追い風にのって堅調な傾向を示しています。IEAは先日、新たに策定された各種の国家戦略を原動力として、2030年の欧州の風力発電予測を10%引き上げました。[24]例えば、ドイツでは新規プロジェクトの認可を効率化するため制度を刷新し、トルコでは新たな入札容量の導入を予定しており、スペインでは、すでに電力網接続の承認を受けた後期段階の追加プロジェクトを背景に、成長がさらに加速すると予測されています。
先進国と新興国のどちらの経済圏でも、数十億ドル規模の風力発電プロジェクトが急増しています。
- スコットランド沖の新しい洋上風力発電所は、2026年1月に重要な契約が締結され、事業が大きく前進しました。これはSSEが建設するバーウィック・バンク計画で、最大307基のタービンを新たに設置し、約600万世帯分の電力を供給できる規模となります。[25]完成すれば、このプロジェクトは1GW規模となり、世界最大級の風力発電所となります。全体として、英国政府は出資金を倍増させて約300億米ドルまで増やし、8つの新規洋上風力発電所の契約を締結しました。[26]
- 欧州では、EnBWが960MW規模のヘ・ドライト洋上発電所をドイツに建設し、2025年11月から電力網への電力供給を開始しています。計画の約半数の64基のタービンがボルクム島北西部に設置されて運用が開始されており、1基あたりの発電量は15MWで、4世帯の1日分の電力を供給する能力があります。
- 中東では、サウジアラビアがリヤド州に5GW規模のダワドミ風力発電IPPプラントの契約を締結し、記録を更新しました。この風力発電所は1kWhあたり1.33803米セントというコストを実現し、風力発電としてはこれまでで最も安価な電力となる予定です。[27]乾燥気候向けの特別設計のタービンは、サウジアラビアが2020年代末までに電力の半分を再生可能エネルギー源から調達するという環境目標ビジョン2030を達成するために貢献するでしょう。
- 今後、米国ニューメキシコ州では65GW規模のサンジア風力発電プロジェクトが予定されています。これは西半球最大の再生可能エネルギープロジェクトであり、2026年の稼働開始を予定しています。[28]タービン数は916基で、300万人分の電力を供給する能力があり、フル稼働すると205億米ドルの経済効果を生み出すと予想されています。
技術開発が進み、発電量がさらに増加し、収益の確実性が高まるにつれて、風力発電への投資はますます魅力的なものとなるでしょう。
AIとデジタルツイン技術は風力発電を変革しています。2025年には稼働停止時間が60%も削減され、検査コストは22%削減されたと報告されています。[29]運用者は、故障を予測したり、それに応じて段階的にメンテナンススケジュールを設定するなどの目的で、タービンを仮想的に再現したデジタルツインの活用を進めています。これはさらにリアルタイムのセンサーデータと機械学習予測ソフトウェアで補完されます。
風力発電技術はデジタルではなく物理の面でも進化しています。2025年5月、中国のエンジニアは台風に耐える洋上型タービンのMySE 18.X-20 MWタービンで発電容量の新記録を打ち立てました。ローター直径は260~292m、風速150km/h(42m/秒)の風に耐え、年間の発電量は8,000万kWh、CO2排出量を66,000トン削減することになります。[30]プロトタイプのローターには最大310mのものがあり、今後さらに発電容量記録が塗り替えられる見込みです。
地球上でも特に風力資源が得やすい場所は、従来型の洋上風力発電所よりもさらに沖合に存在するものが少なくありません。従来型では、海底に固定するという制約があるため、通常は水深60m程度が限界となります。しかし、浮体式プラットフォームの技術が進化を続けており、風力資源が豊富な場所を利用する可能性が拡大しています。
浮体式プラットフォーム技術は、現在3種類が主流となっています。フロートを使用して直立状態を保つ半潜水式ユニット、喫水の深い円筒型構造物をおもりとするスパー型プラットフォーム、そして係留索で引っ張って安定させる張力係留型の3つです。このような画期的な技術を活用して、2025年に中国の国営企業CRRCが世界最大の浮体式洋上風力発電機を山東省に設置しました。回転軸の高さは151mで、ユニットあたりの発電容量は20MWとなっています。[31]同様に、Buchan Offshore Wind(ブーチャン洋上風力)コンソーシアムは深海での実現性を実証するため、アバディーンシャー北東部に1GW規模の浮体式風力発電所を建設する計画の承認をスコットランド政府に申請しました。プロジェクトの規模は12億3,000万米ドル程度で、タービン数は70基、電力網への供給開始は2033年を予定しています。[32]
浮体式風力発電所は大きな成長が予想されており、2030年までに約4.1GW、さらに2040年までには56.2GWまで発電容量が拡大すると見られています。[33]
風力や太陽光といったエネルギー源は天候に依存し変動が大きいため、化石燃料と比較すると発電量の制御は難しくなります。では、太陽光が得られないときや風が弱い場合にはどうすればよいでしょうか。それでも人々の生活は続きます。家庭向けや産業向けに途切れることなく確実に電力が供給されることを前提とした社会を実現するなら、自然環境から得られたエネルギーを効率的に貯蔵する必要があります。
幸運にも、この問題にはかなりよい解決策が生まれつつあります。
蓄電池によるエネルギー貯蔵システムはエネルギー豊かな未来を実現できるか
現代社会では、24時間365日体制で電力が供給されることが必須であり、グリーンエネルギーを効率的に貯蔵するには実用規模の蓄電池システムという選択肢しかありません。蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)は、経済的に合理的なソリューションです。英国だけでも、高度なネットワークが構築されると、2050年までに400億ポンドの節約になると見積もられています。[34]これは環境と経済の両方にとって朗報です。
エネルギー分野は世界の温室効果ガス全排出量の40%以上を占めていますが、電力網規模のリチウム電池は、再生可能エネルギーをこの分野に広く統合するための鍵となります。

これは時間との勝負となります。IEAの2025年版世界エネルギーレビューでは、エネルギー分野に関連する炭素排出量はCO2換算で378億トンという記録的な値に達し、その要因は中国、米国、中東、インドの天然ガス消費の増加であると指摘しています。[35]
根本的な対策が必要であることは明らかであり、BESSは卓越したソリューションとなり得ます。
リチウム電池はBESS市場で約90%のシェアを占めています。これはリチウムイオンが電極間で移動することで機能するもので、リチウム含有金属酸化物を蓄電用の正極に、炭素材料を放電用の負極に使用します。リン酸鉄リチウム(LFP)系化合物の材料は、低コスト、長寿命、高安全性(化学的・熱的・構造的安定性に優れる)という特長からシェアを伸ばしています。[36]40MWhの蓄電池1基で、400時間の送電混雑を解消し、約200万米ドルの燃料コストを削減できます[37]。最新のBESSユニットは、AI駆動型ソフトウェアを活用して送電網との間で電力の貯蔵と放出のパターンを最適化し、効率を最大化する機能を有します。
技術面の洗練と経済規模の拡大により、完全設置済みのBESSプロジェクトの価格は2010年から2024年までの間に93%も急落し、2,571米ドル/kWhから192米ドル/kWhへと変化しました。[38]この期間に、世界のBESSシステムの総貯蔵容量はゼロから169GWhという膨大な量へと成長しました。

確実に高性能を発揮し、技術の一般化が進むことにより、一部の調査によるとリチウムイオン電池業界の容量は2030年までに4.7TWhに達し、経済価値は4億米ドルを超えると見られています。
BESSの導入は世界的な動きとなっています。これは、2025年に取引が活発に行われたことからも示されています。
- 中国では12月に新たに18GWという電力網規模の容量を持つ野心的なBESSが運用を開始しました。これはこの年に全世界で運用が開始された合計容量の4分の1ほどに当たります。[39]
- インドでは、11月にAdani Group(アダニ・グループ)が、グジャラート州にある同社のカヴダ太陽光発電所の敷地内に、主力施設となる1GW規模のBESSシステムの建設を開始しました。[40]
- チリでは、独立系発電事業者のGrenergy(グレナジー)が、同国北部のオアシス・デ・アタカマ太陽光発電・蓄電プロジェクトに向けて5GW規模のBESSプロジェクトの資金調達を支援するため、2億7,000万米ドルの融資契約を締結しました。[41]
- 中東では、BYDがSaudi Electric Company(サウジ電力会社)と大規模契約を結びました。これは、5GWh規模の容量のBESSをサウジアラビア全土の5ヶ所に分散して建設するというものです。[42]
BESSの動きの大部分は欧州で起きています。もし現時点での計画が実用化されると、今から2050年までに、欧州全域で少なくとも95GWの実用規模の新規BESS施設が整備されることになります。こういった計画を前にすると、2023年時点での設置済み施設が累積5GWという数字はかすんで見えますが、その投資総額は700億ユーロを超えると試算されています。[43]
欧州の蓄電池産業は先進的な政策環境によって支えられています。EUのREPowerEU計画では、複数のBESSプロジェクトを含む8億ユーロ規模のクリーンエネルギーインフラへの投資について、概要が示されています。一方、欧州委員会のネットゼロ産業法では、蓄電池の国内製造を促進してBESSの普及拡大を狙っています。
太陽光発電、風力発電、BESSシステム技術といった脱炭素発電プロジェクトが注目を集めていることは、地球のクリーンエネルギーの未来を確実に築くために民間セクターが重要な役割を果たすことを示しています。
民間セクターは世界的な進展を活性化できるか
データによると、再生可能エネルギーは、2050年までに世界の全電力供給の61%~67%を占めるようになる可能性を秘めています。[44]これによって、空気の清浄化、農産物収穫量の増加、雇用の改善といった日常生活で実感されるような変化がもたらされると考えられます。このパーセンテージの範囲の上限値を達成するには、国家間、および公共部門と民間部門が全力で連携して取り組む必要があります。

その道のりは困難が伴うでしょう。米国では、連邦政府所有地での風力発電および太陽光発電の新規契約が規制されたため(グリーンエネルギープロジェクト向け税控除の段階的な廃止と併せて)、同国内での再生可能エネルギーの成長予想は下方修正されています。同様に、中国が新規再生可能エネルギープロジェクトを固定額制から入札制に移行したことも、同国のグリーンエネルギーの成長にとって脅威となります。サプライチェーンの圧力、電力網統合の複雑性、資金調達競争なども絡み、ネットゼロエネルギーへの移行は必然であろうと考えるのは誤りであるかもしれません。
業界リーダーは、高額になりがちなグリーンエネルギープロジェクトの資金調達において、独自の工夫が必要となります。この分野全体において、様々な資金調達戦略が生まれています。
最も直接的なオプションとしては政府の補助金や助成金があり、英国の差額決済契約(CfD)制度のような取り組みは予測可能な収益基盤の確保に役立ち、EUのグリーンディールは持続可能性プロジェクトへの資金投入を促進しています。プライベートエクイティ(PE)やベンチャーキャピタル(VC)は、特に投資の倫理性や環境・社会・ガバナンス(ESG)という考え方が世界的に議題に上がるようになっている現在、初期段階のプロジェクトを急速に拡大させるうえで推進力となり得ます。NGO、多国間開発銀行(MDB)、開発金融機関(DFI)は、新興国においてグリーンエネルギー計画に資金を呼び込むのに役立ちます。中でも、International Finance Corporation(国際金融公社、IFC)とEuropean Investment Bank(欧州投資銀行、EIB)は、グローバルサウス地域への融資や信用保証に積極的です。グリーンボンドは、実用規模のインフラ事業にとって有力な資金調達手段となります。また、世界銀行などの機関が発行する低リスクのオプションは、資産運用会社や年金基金に好まれています。中規模プロジェクトであっても、Thrive Renewables(スライブ・リニューアブルズ)やEcoligo(エコリゴ)のようなクラウドファンディングやコミュニティ投資といった手段を通じて、個人投資家からの資金調達が増えつつあります。
電力販売契約(PPA)は資金調達手段として特に強力であることが示されています。PPAはエネルギー生産者と電力会社との間で結ばれる契約で、事前に定めた期間にわたって電力会社が一定価格で電力を購入することに同意するものです。長期的に安定した収益が確保されるため、投資家が利用しやすくなっています。
Jameel Energyはエネルギー転換をどのように支えているか
PPAはJameel Energy(ジャミール・エネルギー)が支えるクリーンエネルギープロジェクトの多くの基盤となっています。Jameel Energyは、Abdul Latif Jameel(アブドゥル・ラティフ・ジャミール)が2015年にFRVを買収し、さらに投資と拡大を続けた結果、世界の持続可能エネルギー市場で活躍する主要企業へと成長しました。

現在、FRVは業界大手のひとつであり、Abdul Latif Jameelの再生可能エネルギー事業の筆頭となっています。FRVは、現時点において、4大陸で3GWを超えるグリーンエネルギーの運用を管理しています(現在開発・建設中のプロジェクトを含むと4GW超)。
FRVはさらに新しいエネルギープロジェクトを全世界へと拡大しています。2026年2月には、スペインのメリダに新たに28億ユーロのデータセンターを建設する計画を発表しました。ルシタヌス・データセンターへの投資のうち、7億ユーロはエネルギーインフラへの直接投資となり、電力の80%以上は再生可能エネルギーによる自家発電で賄う計画で、欧州で最も大規模かつ技術的に進んだ産業プロジェクトのひとつとなるでしょう。
2025年夏、アルメニア最大規模となるFRVのMasrik-1 55 MW PVプラントの運用が開始されました Electrical Networks of Armenia CJSC(アルメニア電力網株式会社)とのPPAを通じて国の電力網に供給される電力は20,000世帯分以上の電力に相当し、年間CO2排出削減量は54,000トンに及びます。
FRVは特にオーストラリアで活発に事業展開しており、これまででFRV Australia(FRVオーストラリア)最大のプロジェクトとなるワラワラ発電所は2025年10月に運用を開始しました。
ニューサウスウェールズ州(NSW)に建設された605ヘクタール、300MW規模の太陽光発電所は、FRVがMicrosoft(マイクロソフト)と結んだ15年間のPPAの対象となっています。

同月、FRV Australiaはニュージーランド北島に450ヘクタールのランギティケイ太陽光発電所を建設することを発表しました。このプロジェクトは年間発電量350,000MWhを予定しています。これは45,000世帯に電力を供給できる量で、建設時には250名の新規雇用を生み出します。
FRVはBESS容量を拡大させるためどのような取り組みを行っているか
FRVは常に技術革新と投資を続けており、定期的に蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)の新規プロジェクトの発表や進捗報告を行っています。英国の拠点としては、ドーセット州ホールズベイ、ウェスト・サセックス州コンテゴ、エセックス州クレイタイなどがあります。一方、同社はスペインのマドリッドにBESSセンターオブエクセレンスを設立し、欧州、オーストラリア、ラテンアメリカで広くBESS発電所建設を推進するため、民間セクターの活動を拡大しています。FRV Australiaは、ビクトリア州テラングでBESS発電所を、またクイーンズランド州ダルビーでハイブリッド発電所をそれぞれ運営しています。
現在チリで建設中のタラパカハイブリッド発電所は、過去最大の規模で、太陽光発電と蓄電池貯蔵を組み合わせたピーク出力は504MWとなります。461ヘクタールの設備で250,000世帯分の電力を供給することが可能で、2027年の運用開始を予定しています。
スペインでは、FRVがさらに1,200MWのグリーンエネルギー供給能力を増強する予定で、太陽光発電と蓄電池貯蔵を組み合わせ、独立型BESS設備を開発しています。エクストレマデゥーラ、アンダルシア、カタリューニャ、カンタブリアの自治体の協力により、蓄電プロジェクトは遅くとも2027年に建設準備が完了すると見られています。エクストレマデゥーラでは、FRVはカルモニータ太陽光発電クラスターに蓄電池を追加することを予定しています。その規模は、カルモニータ・ミニステリオでは320MW、カルモニータ・ノルテでは91MW、カルモニータ・スールでは80MW、カルモニータIVでは40MWとなります。
FRV AustraliaはさらにBESSポートフォリオを大きく拡大しています。2026年2月、ニューサウスウェールズ州の電力インフラプログラムの下で長期エネルギーサービス契約(LTESA)に署名し、同州の蓄電容量を長期的に増加させていくこととなっています。アーミデール・イーストBESSプロジェクトは総容量が315MWとなっていて、その半分は8時間継続型システムに充てられる予定です。これは、同国内でも特に大規模な蓄電プロジェクトとなります。
前年の2025年8月、FRV Australiaはビクトリア州の250MW規模のグナーウォーBESS蓄電プロジェクトについて融資を受けることが決定しました。グナーウォーはFRV Australiaにおける過去最大のBESSプロジェクトで、同国のグリーンエネルギー転換における重要な要素となります。完成すると、FRVがオーストラリアに設置した施設の発電容量は1.4GWとなります。
同じビクトリア州のベンディゴ東部では、2025年3月にFRV Australiaが太陽光発電とBESSを組み合わせた190MW規模のアクセデール・プロジェクトを買収しました。このプロジェクトは、太陽光発電容量が140MW、BESSシステムは50MWを2時間供給できるものとなります。ビクトリア州全体で80,000世帯分ほどのクリーンエネルギーを供給する能力を持つことになります。
一方、FRVは欧州のBESS事業で堅調に成長を続けています。2025年10月、FRVはフィンランドで進める100MW規模のシモBESSプロジェクトへの融資が決定したことを発表しました。これは同国で承認されたプロジェクトの中で最大級のものです。このプロジェクトは、ラップランド地方のFingrid(フィングリッド)が所有するシモヨキ変電所付近で実施され、2段階で構成されます。第1段階(30MW)は既に卸売市場で稼働しており、第2段階(70MW)は2026年8月の試運転を予定しています。

既に許可を得ているFRVの他のプロジェクトも、接続に向けて着々と進んでいます。2025年11月、FRVは1.8GW規模の再生可能エネルギーおよびBESSプロジェクトのポートフォリオを英国政府のコネクション・リフォーム・プロセスのゲート2枠に申請しました。ビッカー・フェン(400MW)、ストッキング・ペラム(400MW)、ストウ・マナー(400MW)、アンスティ(200MW)、マエス・メリン(200MW)の各施設を含む全プロジェクトが2030年までの接続に向けて動いています。
FRVの専門分野は太陽光発電とBESSだけに留まりません。2025年夏、再生可能エネルギー大手企業のEnvision(エンビジョン)と、ブラジルで実施するH2クンブコ・プロジェクトについて戦略的パートナーシップを結んだことを発表しました。これはペセム港を再生可能水素ハブの拠点とするグリーンアンモニアプロジェクトで、南米、アジア、欧州の市場に向けた大規模なグリーン水素およびアンモニアの生産を確立することを目指しています。AIを活用したこの事業は、最大500MWの電気分解設備と統合型アンモニアプラントで構成され、2030年までに電力網への供給開始を予定しています。
グリーンエネルギーの世界的リーダーとしての地位を発揮するため、FRVのプロジェクトはすべて自然最優先という理念に基づいています。例えば、オーストラリアの太陽光発電プロジェクトでは、必ず野生動物の権利を最優先に考えています。建設スケジュールは野生生物の移動や渡りに配慮して決められ、取り組みのあらゆる段階で環境専門家に意見を求め、インフラは自然の回廊や生息地の保全を考慮して慎重に統合されています。こうした原則を徹底しているため、生物多様性は設計の制約とはならず、逆にチャンスとなります。FRV Australiaのワラワラ施設は、Microsoftが再生可能エネルギー目標を達成するための6つの主要プロジェクトの1つとして挙げています。
また、FRVは2019年に設立されたイノベーション部門のFRV-Xを通じて、新技術の育成にも力を入れていることで知られています。FRV-Xは、技術、サービス、ビジネスモデルの分野で新たなコンセプトを探求し、拡張性の高いグリーンエネルギーソリューションを市場に提供して、世界的に広がっている持続可能エネルギーへの転換の動きを加速させています。現在進行中のプロジェクトには、革新的なデータセンターソリューション、供給・流通における集約型ビジネスモデル、グリーン水素経済の発展、ならびに新技術におけるエネルギー利用や効率化などがあります。チームは、再生可能エネルギー発電所と直接接続または併設された蓄電池ベースのシステム、および再生可能エネルギー施設の運用性を向上させるための革新的なグリッド管理サービスを重視しています。

「環境の均衡を回復させ、将来の世代の安全をより確かなものにしたいと思うなら、私たちはエネルギー効率の向上に最優先で取り組まなければなりません」とAbdul Latif Jameelの国際事業担当副会長ファディ・ジャミールは語ります。
「風力と太陽光という、急速に成長している輝かしい事例は、FRVが開発しているような最先端の蓄電池ソリューションと組み合わせることで、人類全体にとって持続可能性の高い未来を切り拓くために役立ちます」
「私たちはだれでも、照明のスイッチを入れたり車を充電したりといった日常的な行為が貴重な生態系にとってカーボンインパクトの実質ゼロ化につながるという確信を持って、安心して過ごせる日が来ることを心待ちにしています」
エネルギー:5つのクイックファクト
質問:世界のエネルギー消費量は現在も増えているのか
回答:エネルギー消費量は年間で約4%増加しており、今世紀中頃までには、社会を維持するために必要なエネルギー量は年間72,000TWhに達すると見られています。
質問:グリーンエネルギーへの関心が高まっていることを示す証拠はあるか
回答:世界の再生可能エネルギー発電容量は2020年代末までに4,600GWほど増加すると見込まれており、新規追加分の96%を太陽光発電と風力発電が占めています。
質問:再生可能エネルギー転換の動きが特に活発な地域は?
回答:今後数年間は、中国が再生可能エネルギーの成長の約60%を占めると予想されています。
質問:再生可能エネルギーの成長は化石燃料の消費に直接的な影響を与えるか
回答:2010年より、各国の石炭輸入の合計量は7億トン減少し、天然ガスの輸入量は4,000億立方メートル減少しています。
質問:再生可能エネルギー市場を支配する見込みが最も高い技術は
回答:太陽光発電は、現在から2030年までの全グリーン電力の成長分の約80%を占めると予想されています。
[1] https://www.iea.org/reports/electricity-2025/executive-summary
[2] https://www.mckinsey.com/featured-insights/week-in-charts/future-fuels-and-forces
[3] https://wmo.int/news/media-centre/wmo-confirms-2025-was-one-of-warmest-years-record
[4] https://www.iea.org/reports/net-zero-by-2050
[5] https://iea.blob.core.windows.net/assets/76ad6eac-2aa6-4c55-9a55-b8dc0dba9f9e/Renewables2025.pdf
[6] https://iea.blob.core.windows.net/assets/76ad6eac-2aa6-4c55-9a55-b8dc0dba9f9e/Renewables2025.pdf
[7] https://iea.blob.core.windows.net/assets/76ad6eac-2aa6-4c55-9a55-b8dc0dba9f9e/Renewables2025.pdf
[8] https://iea.blob.core.windows.net/assets/76ad6eac-2aa6-4c55-9a55-b8dc0dba9f9e/Renewables2025.pdf
[9] https://iea.blob.core.windows.net/assets/76ad6eac-2aa6-4c55-9a55-b8dc0dba9f9e/Renewables2025.pdf
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[13] https://www.arabnews.com/node/2607947/business-economy
[14] https://www.reuters.com/sustainability/climate-energy/renew-energy-set-up-257-billion-solar-wind-project-india-2025-05-16/
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[17] https://spectrumenergysystems.co.uk/articles/new-solar-panel-technology-trends-for-2026/
[18] https://spectrumenergysystems.co.uk/articles/new-solar-panel-technology-trends-for-2026/
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[21] https://www.theguardian.com/world/2026/feb/02/damning-eu-report-lays-bare-blocs-dangerous-dependence-on-critical-mineral-imports
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[25] https://www.bbc.co.uk/news/articles/c0lx4xrjz8go
[26] https://www.theguardian.com/environment/2026/jan/14/offshore-windfarm-contracts-to-fuel-homes-great-britain-record-auction
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[29] https://axis-intelligence.com/offshore-wind-technology-2026/
[30] https://www.offshorewind.biz/2024/08/29/mingyangs-20-mw-offshore-wind-turbine-stands-complete/
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[34] https://www.nationalgrid.com/stories/energy-explained/what-is-battery-storage
[35] https://www.iea.org/reports/global-energy-review-2025/co2-emissions
[36] https://www.irena.org/News/articles/2025/Aug/Battery-energy-storage-systems-key-to-renewable-power-supply-demand-gaps
[37] https://www.irena.org/-/media/Files/IRENA/Agency/Publication/2019/Sep/IRENA_Utility-scale-batteries_2019.pdf
[38] https://www.irena.org/News/articles/2025/Aug/Battery-energy-storage-systems-key-to-renewable-power-supply-demand-gaps
[39] https://www.energy-storage.news/china-deploys-65gwh-of-bess-in-december-25-of-2025-global-total/
[40] https://www.energy-storage.news/india-adani-makes-strategic-entry-into-battery-storage-with-3-5gwh-project/
[41] https://www.energy-storage.news/grenergy-secures-us270-million-financing-for-3-5gwh-bess-in-oasis-de-atacama-phase-6/
[42] https://www.energy-storage.news/byd-lands-massive-12-5gwh-deal-with-saudi-electricity-company/
[43] https://auroraer.com/media/european-battery-markets-on-track-to-attract-over-70bn-e-investment-by-2050/
[44] https://www.mckinsey.com/featured-insights/week-in-charts/future-fuels-and-forces
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